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第一部
嘘つき魔王と異世界救います③
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彼はわたしを追い越し謁見の間を「ついて来い」と先導して進みはじめ、わたしはその後ろをついて行く。
謁見の間を突き進み以前魔王討伐で対峙した時よりも玉座に近づいていく。
この部屋自体もこの城で一番濃密な瘴気で満たされていたけれど、近づいて行くほどにさらに濃く重苦しくなっていく。
そうして近づいて玉座の後方に魔法による隔離された空間があることに気がついた。
濃い瘴気が覆い隠していてしかも薄暗いのもあり気づかなかったようだ。
その空間まで辿り着き覗き込むと一人の人物が横たわり目を瞑っていた。
その容貌は、ここまで案内した男に瓜二つだった。
「これが俺の本体で、その中には邪神が封印されている。今動いているこの俺は魔法で作り出した仮初の体だ。そして本体のいるこの空間を隔離しているのが『女神エールヒルデ』の結界だ」
「これが…ずいぶん小さいね」
女神が張ったという結界は畳2つ分、大人の男性が3人も横になればいっぱいという程度の広さしかない。それが円形のドーム型に男を中心に広がっている。
わたしが使う聖女の結界よりも小さい。
「1000年前はこの城全体に広がる大きさだったが、崩壊が進みここまで縮んだ」
城ひとつ分からここまで小さく…あきらかな変化に危機を感じる。
よく見るとこの空間も少し歪で不安定そうだ。
「お前、元の世界に帰る手段は見つかったのか?」
「…まだ」
唐突な質問だけど正直に答えた。
「なら帰る手段が見つかるまでここに住め」
「は!?」
住め? 魔王城に??
「衣食住は提供する。望みがあればできる限り叶えよう。そして邪神の信者もここまで手は伸ばせない。身の危険もなく安全だ」
あ、いいなそれ。
安全な環境はとても欲しい。
「だから俺に協力しろ。お前のその聖女の力を使って俺を助けろ」
驚いてまじまじと相手の顔を見た。
真顔で冗談を言ってる顔ではない。
真剣だ。
「俺はむざむざ邪神に復活されて滅びるなどごめんだ。足掻いてやる。だからやれることは試したい。今まで色々手を打ったがうまくいかなかった。だが聖女であるお前の協力があれば起死回生になるかもしれん」
この人は諦めていない。
世界が彼を魔王として裏切っても、封印がぼろぼろで刻一刻とタイムリミットが迫っていても、意地でもきっと最後まで。
この気持ちは感動とか絆されたとか色々あるんだろうけれど、ただ彼の力になりたいと思った。
本当はきっと教皇の話を聞いてから心は決まっていたんだろう。
わたしは彼に体ごと向き合った。
かつて魔王討伐のためにきた魔王城の謁見の間という場。
ここでするのがちょっとおかしく思いながらわたしは右手を差し出した。
「よろしく、魔王。お世話になります」
「ああ、よろしく頼む、聖女様」
わたしたちは笑顔で握手をした。
こうしてわたしの魔王城での生活が始まった。
謁見の間を突き進み以前魔王討伐で対峙した時よりも玉座に近づいていく。
この部屋自体もこの城で一番濃密な瘴気で満たされていたけれど、近づいて行くほどにさらに濃く重苦しくなっていく。
そうして近づいて玉座の後方に魔法による隔離された空間があることに気がついた。
濃い瘴気が覆い隠していてしかも薄暗いのもあり気づかなかったようだ。
その空間まで辿り着き覗き込むと一人の人物が横たわり目を瞑っていた。
その容貌は、ここまで案内した男に瓜二つだった。
「これが俺の本体で、その中には邪神が封印されている。今動いているこの俺は魔法で作り出した仮初の体だ。そして本体のいるこの空間を隔離しているのが『女神エールヒルデ』の結界だ」
「これが…ずいぶん小さいね」
女神が張ったという結界は畳2つ分、大人の男性が3人も横になればいっぱいという程度の広さしかない。それが円形のドーム型に男を中心に広がっている。
わたしが使う聖女の結界よりも小さい。
「1000年前はこの城全体に広がる大きさだったが、崩壊が進みここまで縮んだ」
城ひとつ分からここまで小さく…あきらかな変化に危機を感じる。
よく見るとこの空間も少し歪で不安定そうだ。
「お前、元の世界に帰る手段は見つかったのか?」
「…まだ」
唐突な質問だけど正直に答えた。
「なら帰る手段が見つかるまでここに住め」
「は!?」
住め? 魔王城に??
「衣食住は提供する。望みがあればできる限り叶えよう。そして邪神の信者もここまで手は伸ばせない。身の危険もなく安全だ」
あ、いいなそれ。
安全な環境はとても欲しい。
「だから俺に協力しろ。お前のその聖女の力を使って俺を助けろ」
驚いてまじまじと相手の顔を見た。
真顔で冗談を言ってる顔ではない。
真剣だ。
「俺はむざむざ邪神に復活されて滅びるなどごめんだ。足掻いてやる。だからやれることは試したい。今まで色々手を打ったがうまくいかなかった。だが聖女であるお前の協力があれば起死回生になるかもしれん」
この人は諦めていない。
世界が彼を魔王として裏切っても、封印がぼろぼろで刻一刻とタイムリミットが迫っていても、意地でもきっと最後まで。
この気持ちは感動とか絆されたとか色々あるんだろうけれど、ただ彼の力になりたいと思った。
本当はきっと教皇の話を聞いてから心は決まっていたんだろう。
わたしは彼に体ごと向き合った。
かつて魔王討伐のためにきた魔王城の謁見の間という場。
ここでするのがちょっとおかしく思いながらわたしは右手を差し出した。
「よろしく、魔王。お世話になります」
「ああ、よろしく頼む、聖女様」
わたしたちは笑顔で握手をした。
こうしてわたしの魔王城での生活が始まった。
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