魔王城での聖女生活~異世界に聖女として呼ばれましたが実は世界を守ってた魔王を聖女の力で助けます~

四乃

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第二部

オーランド共同戦線①

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「とある人物によって、オーランド王国は乗っ取られようとしている」


そう切り出したテオドール王子はオーランド王国の内情を語り出した。


「俺の父であり、オーランド王国の国王は病に臥せっている。咳が始まりだった。働き過ぎによる過労で体調を崩したのだろうと思われた。実際朝から晩まで執務をしていたからさもありなんとな。しかし咳が発熱になり、寝込みがちになり、床から離れるのが難しくなった。最初の咳からもう五年程になる。最近ではその症状は妹にも…」


妹の王女も最近体調が悪いと聞いた。
父親に続いて妹までとなれば心痛、心配はいかばかりか。


 「…その父に代わり、政務を務めるようになったのはメトセラール公爵だ」
「人づてに耳にしましたが宰相閣下だとか」
「そうだ。建国時からある貴族家で国に尽くして功績を積み上げ、子爵家から陞爵を繰り返し、現在は公爵家。現公爵は厳格な人柄で法や規律を遵守する男だ」
「宰相らしい人物像ですね。人によって好き嫌いが分かれそうですが」
「それは同感だ。ちなみに俺は個人的には好かん。仕事ぶりは見事だが。しかしだ、あの男が政務を行い出してから城内に異変が起きている」
「異変とは?」
「まずは父の容態が悪くなっていった。次に公爵が父の治療のためと医者や神官を連れてくるようになった。素性はしっかりしていると言っていたが聖教会に探りを入れると神官など派遣していないそうだ。ならば他の宗教なのだろうが、何を信仰しているのやら、な」


なるほど、邪神信仰者の心当たりがあると言っていたけれどその人たちのことか。


「怪しい点は他にもある」
「根拠はあるのですか?」
「ああ、あんたらも知っている40年前の旧道の行方不明事件。あれは騎士団が盗賊団を壊滅させて幕を引かれていた。あの事件の陣頭指揮をとったのは先代のメトセラール公爵だ。現公爵の父に当たる御仁で、当時の騎士団長の妹を妻に娶っている義兄弟の関係だ。色々と融通をきかせてもらえる立場があるということさ」
「事件のもみ消しに手を組んだ、と?」
「その可能性は高い。現場に向かった騎士団員の中には、確かに盗賊団を討伐したが、連中は何も知らなそうだったと知人にもらしていた者がいたようだ。真実が判明し、偽装だとばれたら一家断絶の上、公爵家取り潰しになる大罪だ。なぜ、そんな危ない橋を渡る必要があったのか、俺には動機がわからなかった。しかしだ、あんたらの言うとおり邪神信仰者との繋がりがあるのならば、連中のためにもみ消した可能性が出てきた」


先代のメトセラール公爵が邪神信仰者と繋がりがあり、現公爵もまた繋がっている可能性がある。
わたしたちが探るべき人物が見つかったようだ。公爵か、あるいはその周辺に邪神信仰者、あるいは『ミコ様』がいる。


「俺は、この国を、かつてのような活気ある国を取り戻したい。父が国王として務めを果たし、妹が…はにかむ笑顔を浮かべ、その2人と共に国民と顔を合わせて時に怒号をとばしながら、時に和やかに語らう、そんな国を。…だから、国内に、城に巣食う毒虫がいるならば、排除したい」


彼は強い眼光でこちらを見据えた。


「あんたらを城に招き入れる。俺の最上級の客人として。あんたらの目的遂行のため全面的に協力する。だから俺にも協力してくれ。メトセラール公爵を捕縛したい」
「捕縛ですか。抹殺ではなく?」
「そうだ。捕縛し、罪をつまびらかにし世間に知らしめる。奴の本性を暴き真実をみなに共有したいのだ。王家と民が近いのがこの国の在り方だ。それがオーランド流だ」


オーランドは王国だけれど、民主主義に近い国の在り方なのではないだろうか。
魔王を頂点とした専制君主制の魔王一派とは真逆のような国で新鮮な気持ちだ。


「なるほど、お国柄ですか。そういう国もあるのですねぇ。では、交渉成立ですね」


テオドール王子とヴラドが右手をがっしりと握り、わたしたちは共同戦線を張ることになった。
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