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第二部
黒い魔法陣の術者②
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「そして黒い転移の魔法陣、ここには外から瘴気石が送られてくる。それを術者が受け取り、瘴気を黒い魔法陣に取り込む。黒い魔法陣は力を増し、強大な力に圧迫され白い魔法陣の構造が破損する。その結果、黒い魔法陣から瘴気が白い魔法陣に流れ込み、転移の機能で地下へ行き、女神を瘴気で汚染する。それを繰り返し繰り返し行い、徐々に女神から力を奪っていったのだろう。遅効性の毒を獲物に注ぎ弱っていく様を見て、命を狩るその時を指折り数えて待っているのさ」
なんとも背筋の寒くなるやり口だ。いくら女神とはいえは恐ろしい思いをしているのではないだろうか。
「嗜虐性ね、確かに性根が歪んでいる。魔法陣の術者は誰だ、女薬師か、それとも男神官か?…」
ここでわたしはひとつ引っかかった。黒い魔法陣には瘴気が利用されているようだけれど、今まで邪神信仰者で瘴気を魔法に使っていた者はいなかったな…
瘴気を使うのはいつも自分や他者を魔物化するときだった。魔法にも転用できたのか。
「女神アールストゥ様と繋がりがある王女殿下は事情はご存知ないでしょうか?」
「そうだな、シャルロッテは女神から何か聞いているかもしれない。起きているなら会えないか使いを出そう」
妹とはいえ事前に訪問を知らせる必要があるため従者が一人使いとして退出した。
「王女殿下はあれから容体はどうでしょうか?」
「熱が下がり落ち着いているとリュフト侯爵邸から帰った際に聞いているから大丈夫だ。気を遣わせたがリンカ嬢のおかげで妹はもう心配ないさ。ありがとう」
「あ、いえ、元気になってよかったです。王女殿下とはあれから会話はされましたか?」
「いや、眠っていたからまだだ。そろそろ起きてるだろうから隠し事をきっちりこの兄に根掘り葉掘りつまびらかにしてもらわなければな、ふふふ」
どうも長年あれこれ秘密にされたためご立腹のようで目が座っている。
「あの、病み上がりですからお手柔らかにしてあげてくださいね…?」
「仕方ない、恩人のお願いとあらば聞かないと。ぎっちり問い詰めるのは明日からにしよう」
ごめんなさいシャルロッテ王女。猶予は今日の分しかないようです。それでも秘密にしていたのは事情があったからだと思うから、なるべく粘って王女の猶予期間をもぎ取るべくがんばることにした。
「ま、まあまずはちゃんとお食事をとってもらって体力を回復させてからで」
「ああ、そうさな、あいつの好きな苺のケーキでも用意するか! ずっと薬膳食だったから大好きな甘いものが恋しいだろうからな」
「いえ、病み上がりにケーキはちょっとーー」
バターをふんだんに使うケーキは胃がついていかないだろうからもっと胃腸に優しい物から、と止めようとすると大きな音を立てて足音が近づいてくる。
「殿下!!」
使いに出した従者が血相を変えて扉を開けたままだった部屋に飛び込んできた。ただごとではない雰囲気に場の空気が引き締まる。
「何ごとだ?」
「お部屋に向かったところ、シャルロッテ王女殿下がおられません! 部屋の中では侍女が、部屋の前では騎士が倒れています!」
「シャル!?」
異常事態に王子が部屋を飛び出し、わたしたちも後を追った。
なんとも背筋の寒くなるやり口だ。いくら女神とはいえは恐ろしい思いをしているのではないだろうか。
「嗜虐性ね、確かに性根が歪んでいる。魔法陣の術者は誰だ、女薬師か、それとも男神官か?…」
ここでわたしはひとつ引っかかった。黒い魔法陣には瘴気が利用されているようだけれど、今まで邪神信仰者で瘴気を魔法に使っていた者はいなかったな…
瘴気を使うのはいつも自分や他者を魔物化するときだった。魔法にも転用できたのか。
「女神アールストゥ様と繋がりがある王女殿下は事情はご存知ないでしょうか?」
「そうだな、シャルロッテは女神から何か聞いているかもしれない。起きているなら会えないか使いを出そう」
妹とはいえ事前に訪問を知らせる必要があるため従者が一人使いとして退出した。
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「あ、いえ、元気になってよかったです。王女殿下とはあれから会話はされましたか?」
「いや、眠っていたからまだだ。そろそろ起きてるだろうから隠し事をきっちりこの兄に根掘り葉掘りつまびらかにしてもらわなければな、ふふふ」
どうも長年あれこれ秘密にされたためご立腹のようで目が座っている。
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「仕方ない、恩人のお願いとあらば聞かないと。ぎっちり問い詰めるのは明日からにしよう」
ごめんなさいシャルロッテ王女。猶予は今日の分しかないようです。それでも秘密にしていたのは事情があったからだと思うから、なるべく粘って王女の猶予期間をもぎ取るべくがんばることにした。
「ま、まあまずはちゃんとお食事をとってもらって体力を回復させてからで」
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「いえ、病み上がりにケーキはちょっとーー」
バターをふんだんに使うケーキは胃がついていかないだろうからもっと胃腸に優しい物から、と止めようとすると大きな音を立てて足音が近づいてくる。
「殿下!!」
使いに出した従者が血相を変えて扉を開けたままだった部屋に飛び込んできた。ただごとではない雰囲気に場の空気が引き締まる。
「何ごとだ?」
「お部屋に向かったところ、シャルロッテ王女殿下がおられません! 部屋の中では侍女が、部屋の前では騎士が倒れています!」
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