結ばれたい想いを剣に乗せて

杉の木ノキ

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第六章 王立学院サフラン・ブレイバード編

第97話 予兆

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 久しぶりの精神世界。
 真っ白な世界にも慣れたものだ。
 天使の姿は以前よりはっきりと見え、身に付けているマントや戦闘服、腰には剣を差しているのが分かる。
 彼女は不機嫌そうに頬を膨らませていた。

 「いーよねーキミは。人生楽しそうで」

 「めっちゃたのすぅいです」

 「ぶん殴りてー!」

 今日は機嫌がすこぶる悪そうだ。
 顔が笑ってないもの。
 次、冗談を言えば彼女は本気で殴りかかってくる。
 その前に本題に入ってもらう。

 「早速だけど、今日呼ばれた理由は?」

 「キミのせいで、ボクは気分を害されました。よってヒントのみ教えます」

 ガキみたいな事を言う。
 反論するだけ無駄だし気にしない気にしない。

 「嵐が来るよ。飛びっきりでっかいのがね」

 天使は真剣な顔で言い放った。

 「あのさ。あんた前に言ったこと覚えてる?ミラが精神干渉されてるって言って、結局違ったじゃん。今回もそうなんじゃないの?」

 「は?殴んぞお前。せっかく助言してやったのによ。その態度続けんならこっちにも考えがあるぞ」

 恐ろしい形相で俺を睨む天使。
 口調の荒さは過去一だ。

 「嵐って具体的に何を指すんだ?」

 「……」

 天使が答えてくれなくなった。
 完全に怒らせてしまった。
 無言で近付いて来る彼女に、思い切り殴られた。

 「ガハッ…!」

 頬がジーンと熱くなり、顎が割れたかと思った。
 痛みはこの世界にもあるのかよ…。

 「これが何発も打ち込まれる感じ。覚えとくといいよ」

 天使はスッキリした顔で言った。
 俺は恐怖で足が竦んだ。
 初めてエルンと対峙した時と一緒だ。

 「痛ッ…ご忠告どうも」

 「どういたしまして。さあ、夢を解くよ」
 
 俺は現れた魔法陣に乗った。

---

 現実世界に戻ると、俺の体に何かがへばりついていた。
 金色の長い髪を持つ、少しだけ耳の長い少女。ミラ。
 可愛い顔で寝ている。

 「ライネル…しゅき…」

 寝言も可愛い。
 頭を撫でるとスリスリしてくる。
 子猫かな。

 ミラを起こして、一緒に学校へ向かった。
 手を繋いでの登校となる。
 待ちゆく人々がミラを見て可愛い可愛いと指をさし、途中まで着いてくる者までいた。
 エルフには人を魅了する何かがあるらしい。

 学校へ着いた途端ミラが駆け出した。
 校舎とは反対側に。
 急にどうしたと思ったが、理由はすぐに分かった。

 「待ってぇー!ミーラー!」

 「いやー!来ないでぇー!」

 ミラは涙目で、吸血鬼の女の子に追い掛けられていた。
 なんとまぁ運の悪い。
 待ち伏せされていたんだな。

 教室には、もうリードとルリアが居た。
 二人でトランプをして遊んでいる。
 苦い顔をするリードと、余裕の笑みを浮かべるルリア。
 果たしてどちらが勝つのだろうか。

 両者。場にカードを置いた。

 「スリーカード!」

 「フラッシュ」

 リードは瞬殺された。
 運が絡むとはいえ、かなりの駆け引きはあったはずだが、ルリアが一枚上手だったようだ。
 リードは負けこんでいたようで、悔しそうに机の上に溶けた。

 「強すぎでしょ…」

 「才色兼備のわたしに勝とうだなんて百年早いよ!」

 「今度姉貴とも勝負してくれよ。姉貴もバケモンだから」

 「いいよ!ポッコポコにしてあげる!」

 和やかな空気に思わず頬が緩む。
 ルリア特有のあざとさがとてもいい。
 ずっと見てられる。

 ---

 お昼休みに図書館へ来た。
 すると真面目な顔して本を読むミラの姿が。
 クリクリお目目を右へ左へと動かして、頷いたり首を傾げたりしつつページをめくり、眠そうに目を擦った。
 そんなミラの横に座り、本を読む女子生徒が一名。
 我が愛しの妻リーズである。
 ドレスにも似た豪華なワンピースを好んで着ていたのに、ここ最近の彼女の服装は体のラインが強調されたボタンシャツと、ピチッとしたロング丈のズボン。
 上着を羽織れば教師に見える。
 趣向を変えた理由は分からないけど、その格好も中々さまになっている。
 カッコ可愛い。
 
 二人の真正面の席を選んで座ったところ、突然ミラが席を立ち、近づいてきたかと思えば俺の膝の上に座った。

 「なしてさ」

 「ギュってしたいでしょ?ほら早く」

 ミラが顔を覗き込んでくる。
 俺は視線を逸らしました。
 図書館は本を読むところであり、年頃の男女が暖を取る場所ではありません。
 そう言えたらどんなに楽か。
 ミラが膝に乗っているから、前は暖かいけど背中は寒い。
 
 ん、なぜ寒い。
 背筋が凍るようだ。
 瞳に映るのは、額に血管が浮き出たリーズ。
 持っている本はミシと音を立て、今にも破けそう。

 「あんのさ…人の旦那に手を出さないでくれるかな…?」

 リーズは恐ろしい形相でミラを睨んだ。

 「あら。じゃあ私は愛人ポジションなのかしら?ふーん…ま、結婚するまではそれでもいいわ」

 「そんなポジション要らないし、結婚もさせないよ」

 「残念。ライネルが記憶を取り戻したら、きっと私しか見えなくなるわ。だってそうでしょ?貴方は自分からライネルに告白したけど、私はライネルに告白された側だもの。毎日のように、好きって言われてたっけなぁ」

 「年増の人ってみんなそう。過去の栄光にいつまでもしがみついてる。そんなだから、簡単に忘れられるんだよ」

 「なッ…!誰が年増よ!」

 「エルフっていいよね。38になっても、その貧相な体を維持できて」

 とうとう口論に発展してしまった。
 戦犯はミラだけど、リーズの追い討ちは目に余る。
 俺は慌てて仲裁に入った。

 「落ち着いて!ここ図書館だから!」

 俺がそう言うと、二人から冷たい視線を浴びた。

 「ライネルに言われたくない」

 「この――・―・――!」

 リーズからは真っ当なご意見を。
 ミラからは酷い罵声を浴びせられた気がする。
 よく聞き取れなかったな。
 二人共仲良く図書館を出て行ったし、一応は解決したっぽい。
 嵐ってこれ?
 絶対違うよね。んなわけあるか。

 ---

 放課後。俺は一人教室に残っていた。
 図書館で興味深い本を借りたからだ。
 題名は[一枚の絆創膏]。ジャンルは恋愛小説。
 著書はメルナ・ティッカードである。
 そう、伝説の魔術師メルナが書いている。
 今まさにエルンと俺が探している人物が、恋愛小説を書いていたのだ。
 
 鮮やかな赤い髪を持った若い女性が主人公。
 物語の主軸は彼女が担っている。

 さて、読んでみるとしよう。
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