結ばれたい想いを剣に乗せて

杉の木ノキ

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第七章 天穹守護編

第129話 地上から地下まで

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 地上50階から40階まで降りるのに、約半日を費やした。
 途方も無い距離だ。
 道中危険な魔物に襲われた挙句、必ず反対側に階段が設置されている。
 この先ずっとこの調子なら、かなりしんどいぞ。

 「もうこれ、ライネルのせいじゃないかしら」

 「否定はしない。なにせ、ところ構わず技ぶっぱなしてるからな」

 反撃の判定は連星極以上であると仮定。
 よって星極級までは使用可能。
 至近距離戦では水最上、中距離戦なら狂恋・羅刹昏冥を撃ちまくる。
 今回は少し離れているが、黎明ノ桃金穣なら届くだろう。
 そう思っていたが、敵の外皮に魔術反転の術式が組み込まれていたため、これを断念。
 あえなく逃げることに。

 「どっちみち、魔力切れになればおしまいだ」

 「それもそうね」

 休むこと無く走り続けて次の階へ。

---

 40階から30階までの広い階段は吹き抜けである。
 さて、この吹き抜けをどう降りるか。
 知恵が試される。

 「私に掴まって」

 ミラが両手から黒い糸を出した。
 俺は彼女を抱き締めるように掴まった。

 「…あ、する?」

 下半身の異変を察知された。

 「気にせず降下して。どうぞ」

 「はいはい」

 30階に到達するまで非常にスムーズだった。

---

 30階から20階まで。
 この間は地獄だった。
 まず、1分毎に気候変動がある。
 灼熱の温帯から、急に寒冷地に早変わり。
 かと思えば、次は土砂降りの雨。
 身体が追いつかない。

 それに加え、魔物の強さも段違いに上がった。
 ミラと二人がかりでようやく倒せるレベルになってきた。
 幸い俺には一撃必殺の技が多数ある。
 しかし、それも星極級まで。
 それ以上の出力は出せない。

 「ッ…」

 20を超える魔物に囲まれた。
 どれも小粒では無い。

 「武装を強化しましょう。ライネル、剣を構えて」

 「お…おう」

 ミラの指示通り、俺は剣を上段に構えた。
 すると、漆黒の剣が現れた。
 闇属系魔力を纏わせたんだ。

 「すごっ…」

 「これで斬れるわね」

 ミラがニコッと笑った。
 少しだけドキドキした。

 「青白の星!」

 身体強化を図り、前に出た。
 襲いかかる魔物を斬って斬って斬りまくった。
 いける。
 倒せる。
 速度は、俺が遥かに上回っている。
 太刀筋を回転に繋げて、斜めに両断。
 階層を突破した。

---

 20階から10階までの道のりは、驚く程平和だった。
 魔物は一匹も居らず、動植物も地上と同じ。
 まあ、ここも地上なのだが。
 正確には外と同じ印象を受けた。

 「ほのぼのするな」

 「長居はできないけど、そうね」

 ミラにぐいっと引っ張られ、唇が重なった。

 「ちょっとくらい、いいわよね…?」

 何故だろうか。
 とても懐かしく、愛おしく感じた。

 「それは男である俺が言うべきセリフだよ。だからさ…ミラ。もう少し頂戴…」

 二度目の接吻は俺から迎えた。
 多少のイチャつきは許して欲しい。

---

 20階から10階に降りるまでに約三時間。
 ここで一日半が経過。
 どうやら古代迷宮は下の階層ほど、階段までの距離が短いらしい。
 どんな構造だ。

 「綺麗ね…」

 ミラが周囲を見渡した。
 周囲は一面宝石の国。
 赤、青、緑、紫、金。
 都合数種類の原石が壁に埋まっている。

 「なんて言うか…一個ぐらいくすねてもバレないよな?」

 「そうね。でも反撃を喰らうかもしれないわ」

 「やめとくか」

 少しだけ残念かも。
 なんて馬鹿げたことを考えつつ、先へ進んだ。

---

 10階から地上1階までは螺旋階段で降りる。
 他の階をパスしていける。
 楽だ。

 「ねぇライネル…この先、ちょっとだけ怖い」

 「と言いますと?」

 「変な魔力を感じるの。ドス黒いけど…澄み渡っているような…」

 ミラが不安を口にして、手を繋いできた。
 顔色が優れない様子。

 「もしかしたら、ハルかもな…」

 断言はできない。
 でも、そんな気がした。

---

 地上1階から地下3階までは何も無く、4階と5階が花畑で、中層6階と7階は真っ白な世界だった。
 そんなこんなで深層手前の8階に到達。
 ここから先は光属系魔術が使用できない。
 試しにやってみたが不発に終わった。
 情報は正しかったようだ。

 「…?」

 突然ミラが立ち止まり、首を傾げた。

 「どうした?」

 「二人居る…」

 指の先に示す、鉄扉の向こう側。
 俺は扉をゆっくりと開け、中を見た。
 確かに二人いた。
 ハルともう一人、ピンク色の短い髪を持つ美少女がいた。
 冒険者っぽい服に、大きなマントを羽織っている。
 見覚えのある少女だ。

 「お、やっと来たね」

 少女が語りかけてきた。
 ハルは視線をくれなかった。

 「どうして貴方がここに?」

 「どうしてって、ここ私の家だから。それに今は夜だし」

 「…夜?」

 「あーっと、それは気にしないで。うん」

 気づけば、彼女は剣を持っていた。
 美しい波紋を持つロングブレードだ。
 俺の剣と似てるような気がする。

 「ねぇ誰。誰なの?」

 ミラ様からの追及がえげつない。
 揺らすな揺らすな。

 「今は敵。それ以上でもそれ以下でもない」

 「あらそう。ならいいわ」

 俺の言葉に少女が笑った気がした。

 「ところでハル、お前なんでこんなところに居んだよ。テオネスに飽きたのか?」

 「……違います」

 「じゃあなんで?」

 「お兄さんにはわからないですよ…」

 「あ…?殺すぞ」

 弁明を口にすることなく有耶無耶にするハルに苛立ちが募る。

 「始まりの最後で捨てるなら、端から掴むな壊れ人」

 俺は剣を縦に振り、黎明ノ桃金穣を最大出力で放った。
 辺り一面を食い尽くす雷鳴は、桃色髪の少女に防がれた。
 魔力が一瞬で霧散した。
 中々やるな、邪魔だけど。

 「なんのつもりで?」

 「気まぐれだよ」

 少女はケロッとしてる。
 面倒くさいし、こいつも斬るか。
 どうせ敵なんだ。

 「勝機は逸したわ。帰るわよ、ライネル」

 ミラが腕を引っ張ってきた。
 凄い汗だ。
 一体どうして…。

 「うんうん。そこの彼女はわかったみたいだね」

 少女がコツコツと足音を立てて迫り来る。
 近くになってわかった。
 この人、俺より遥かに格上だ。
 変質した闇属系魔力が全身から溢れ出ている。

 「…ああそういうこと」

 武者震いがする。
 そうか、この人が。
 師匠の想い人だった人。

 「冥土の土産に自己紹介しとこうか?」

 刹那、俺は外壁に叩きつけられた。
 蹴り飛ばされたんだ。
 思った程の痛みは無いけど、素でこれか。
 純粋な身体能力及び筋力がトチ狂っている。

 「私は元天穹守護第4席、スピカ・ソールライト。ハル君と同じ天壊人さ」

 少女は狂気の笑みを浮かべ、ケタケタと高い声で笑った。
 狂人の笑い方だ。
 そこに可憐さは微塵も無く、心も無く。
 [追憶の大天使]の面影は、もはや欠片も無かった。
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