かわいいは無敵だ

中田カナ

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第3話 交渉

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「貴女の聖獣はなぜか逃げ出すもことなく平然としている。その独特な姿も気になったが、私がそばにいても平気な理由が知りたかったのだ」
 確かに昨日も今日も聖獣様はが第三王子殿下におびえたりする様子はまったくない。

『それにはちゃんと理由がある』
 ずっと黙っていた聖獣様が会話に入ってきた。

『はるか東方の地には龍というドラゴンに近い種の幻獣がおる。この娘の血筋には東方から来た者がおってな、父と兄のパートナーは龍なのだ。我は龍の気配に慣れておるので、そこの王子にドラゴンの気配があろうが気にはならぬ』
 父は緑の、兄は黄色の龍がパートナーとなっている。母以外はこの国ではめずらしい黒髪であるのも東方の血筋の名残なのだ。
「なるほど」
 殿下が感心しながら手帳にメモを取っている。王宮の図書室で調べるのだろう。

「話を戻すが、今までドラゴンの気配のために出来ずにいたが、モフモフな生物をなでることにずっと憧れていたのだ。どうか貴女の聖獣に触らせてはもらえないだろうか?」
 真剣なまなざしの第三王子殿下。

「えっと、私はかまわないんですけど、あとは本人の意思次第ですかね」
 そう言って聖獣様を見る。
『嫌とは言わんが、タダというわけにはいかぬな』
 偉そうな物言いをする聖獣様に、ずいっと身を乗り出してくる殿下。

「条件があるのなら可能な限り実現しよう。だから遠慮せずに言ってほしい」
『それは我のパートナーであるこの娘の願いを叶えることだ』
「えっ、私?!」
 ちょっと!なんでこっちに振るのよ?!

『我の幸せはこの娘の幸せだからな。ほら、何でもねだるがよい』
「ああ、私の私財の範囲であれば可能な限り対応しよう」
 殿下の熱いまなざしがこちらに向く。

 そう言われてしばし考える。
 実家の牧場の修繕とかをつい考えちゃうけど、さすがにそこまでお金がかかることを言うわけにもいかないし…あ、ひらめいた。
「えっと、聖獣様は実は甘いものが大変お好きなので、何かお菓子をあげたいです」

 普通の聖獣はパートナーの微量な魔力があれば生きていける。だが、人間の食事が食べられないわけではない。私の聖獣様は特に甘いお菓子が大好きなのだ。
 第三王子殿下にパッと笑顔が浮かぶ。
「わかった!王宮の菓子職人に最高のものを用意させよう。せっかくだから、いろんなものを作らせるとしようか」
 殿下の言葉を聞いて聖獣様が声を上げる。

『待て待て!それは我のためではないか。そなた自身の望みを言うべきであろう?』
 え~、私は聖獣様が喜んでくれればそれで十分なのになぁ。なでられるのは私じゃなくて聖獣様なんだし。

 再び考えて、今までの会話から1つ思いつく。
「じゃあドラゴンを見てみたいです!」
「え、そんなことでいいのか?」
 殿下が不思議そうな顔をする。

「はい。龍は実家におりますが、ドラゴンは見たことがありませんでしたので」
 こうして交渉は成立した。

 条件は決まったのだから、今すぐ聖獣様に触れてもいいのに、
「やはり条件をきちんと実現してからでないと」
 と第三王子殿下に言われ、私は次の休みに聖獣様とともに王宮へ伺うことになってしまった。

 殿下が律儀なのは好感が持てるけど、平民である田舎の牧場の娘がいきなり王宮へ行くっておかしくない?!
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