かわいいは無敵だ

中田カナ

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第7話 殿下と私

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 夏季休暇の帰省は第三王子殿下のドラゴンであっという間だった。

 おおらかすぎる実家の家族は殿下を歓迎し、職業体験という名目でちゃっかり働かせたりもしていたが、第三王子殿下は動物達との触れ合いに大満足のようだった。
 殿下のパートナーであるドラゴンと父や兄のパートナーである龍達もすっかり仲良くなった。

「素敵すぎるな、ここは」
 草原に寝転がって青空を見上げてつぶやく殿下。
 いろんな仕事をしたり、家畜の死などもあったりして楽しいことばかりではなかったはずだけど、殿下はそこも含めてここの暮らしを理解してくださったようだった。


 第三王子殿下の牧場行きは長期休暇の恒例行事となり、殿下が卒業して私が進級する春季休暇に交際を申し込まれた。
「最初は聖獣しか目に入らなかった。だが、いつも笑顔の貴女も素敵だと思うようになっていた。それに聖獣と一緒に楽しそうにお菓子を頬張る貴女はとてもかわいい」

 もしかして私はモフモフと同列なのか?とも思ったが、細かいことは気にしない性格なので素直に受け入れた。もはや一緒にいるのが当たり前になってしまっていたしね。
 殿下は王族なのに偉そうにしないし気配り上手だ。そして何より聖獣様が触られることを認めたのなら悪い人のわけないもんね。


 私が魔法学院の最高学年になった頃、魔法学院の教授と第三王子殿下の共同研究という形で驚きの論文が発表された。
 モフモフ系の聖獣は人間の怒りや悪意・害意を軽減させる能力があり、その能力は微量ながら常に発動していて、パートナーである人間の危機に特に強く発動する、というのである。
 うちの実家の家族がおおらかで、ほとんどケンカもしたことがないのは聖獣様のおかげだったのかなぁ?

「あの研究は貴女の聖獣がきっかけだったんだ。ほら、あのかわいい威嚇のポーズをした時にみんな脱力しただろう?それに嫌なことがあっても聖獣に会うと心が落ち着くことは何度もあった」
 そういえばモフモフ系の聖獣のパートナーとなっている同級生は何人かいるけれど、みんな穏やかだったりほんわりとしてたっけ。


 なんだかんだで私は学院を卒業してすぐに殿下と結婚した。
 第三王子殿下は結婚と同時に王家を離れて公爵位を賜った。
 平民の牧場主の娘が公爵夫人になっちゃっていいのか?とも思ったけど、この国はそのあたりはわりとおおらかであるらしい。

 そして実家の牧場での経験から、動物は幼いうちからドラゴンのそばで育てれば問題ないということに気づいた夫は、新居で犬と猫を飼い始めた。外では夫のドラゴンが、家の中では私の聖獣様がにらみを効かせているので、ケンカが起きることはほぼない。


 穏やかな春の夜。
 ソファーに座る夫の膝の上では私の聖獣様がおとなしくなでられていて、両脇には犬と猫がぺったりとくっついて眠っている。
「かわいい子達に囲まれて本当に嬉しそうですね」
 いつもの光景を見ながらつぶやくと、夫は極上の笑顔を浮かべながら素敵な声で私に告げる。

「ああ。でも、この世で一番かわいいのは貴女だよ」
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