2 / 3
第2話:魔王の正体
しおりを挟む
「魔王!その人を返してよ!」
泣きながら叫ぶ女勇者。
「ハハハ!いくら勇者が強かろうと、この身体には手を出せまい。お前の愛しい男の魂もこの身体の中にあるのだからな!」
魔王の高笑いが響き渡る。
「どういうことだ?」
「おそらくあれが勇者様の恋人で、今は魔王に身体を乗っ取られているのでしょう」
聖女の言葉にしばらく考える。
「なるほど、それはやっかいだな」
「ええ、死なせるわけにはまいりませんものね」
どうにかしてあの身体から魔王を追い出す必要があるわけだが。
「何かいい方法はないものかな?」
「そうですわね…勇者様の恋人の魂と魔王との力関係に変化が生じれば勝機はあるかもしれません」
「なるほど、魂を揺さぶってやればいいわけか」
ふと思い立って女勇者の隣に立ち、小声で聞いてみる。
「おい、お前はあの男とどこまでいってるんだ?」
「どこまで、とは?」
「身体の関係までいってるのかって聞いてんだよ」
一瞬で顔が真っ赤になる女勇者。
「そ、そんなこと、結婚前なのにあるわけでしょうが!」
こいつはおそらくいいとこのお嬢さんなんだろうなぁ。
「そうか、でもキスくらいはしてんだろ?」
女勇者は赤い顔のままだが、否定の言葉は返ってこなかった。
俺は女勇者の肩を抱いて魔王に向かって叫んだ。
「おい、魔王じゃなくてこいつの恋人さんよ。その玉座からよ~く見ておきな!」
女勇者を抱き寄せて、小さな声で話しかける。
「悪いがこれも作戦の1つだから許してくれよな。幸いファーストキスじゃねぇようだしさ」
いきなり女勇者の唇をむさぼる。
「んん~っ!」
片手で女勇者の細い腰を抱き寄せ、もう片方の手は彼女の後頭部にまわして逃げられないようにする。
舌を絡ませていくうちに女勇者の抵抗がなくなってくる。
キスは経験済だったようだが、こういう深いキスは未経験だったのかもしれない。
まぁ、これくらいいいよな、うん。
「ううっ!」
突然、魔王が苦しみ出した。
すぐに唇を離して叫ぶ。
「聖女殿、そっちは任せたぞ!」
「わかりましたわ!」
聖女がまるで歌のように聞こえる呪文を唱え出すと、魔王の苦しみはいっそう増したようで、その場でのたうちまわる。
やがてその身体から黒いもやのようなものが見えてきた。
「勇者よ、しっかりしろ!魔王の本体があの身体を離れたら、すぐさま聖剣でぶった切れ!」
「は、はい!」
女勇者はキスの後しばらく呆然としていたが、聖剣を抜いて魔王に駆け寄る。
魔王の装束を身につけた身体から大きな黒いカラスのような鳥が出てきたところで、女勇者は聖剣を振るった。
「魔王、覚悟しろ!」
聖剣で切られた黒い鳥は奇声を発した後に砂になり、風に飛ばされていった。
女勇者は横たわっている男に泣きながら抱きつく。
「ああ、また君に会えてうれしいよ」
さっきまで真っ赤に光っていた男の眼は澄んだ青に変わっていた。
「私がどれだけ心配したと思ってるのよ?もう絶対離さないんだからね!」
あ~あ、見てらんねぇわ。
しばらくしてようやく落ち着いてきた頃、ようやく話を聞くことが出来た。
魔王に身体を乗っ取られていた女勇者の恋人は、我が国の第三王子殿下であることが判明。
魔法マニアである彼は興味本位で禁忌の実験を行って失敗し、魔王に取り付かれてしまったらしい。
そりゃあ魔王討伐が国の極秘任務になるわけだ。
そして女勇者は王宮騎士団長の娘だった。かつて騎士団にいた俺は団長とも面識があるのだが、俺を魔王討伐の一員として推薦したのは団長だったらしい。それにしても顔が親父さんに似なくてよかったなぁ。
ちなみに荷物持ちの男は騎士団長の家に勤めている者で、女勇者のお目付け役とのこと。だからちょっかいを出すとにらまれてたのか。
泣きながら叫ぶ女勇者。
「ハハハ!いくら勇者が強かろうと、この身体には手を出せまい。お前の愛しい男の魂もこの身体の中にあるのだからな!」
魔王の高笑いが響き渡る。
「どういうことだ?」
「おそらくあれが勇者様の恋人で、今は魔王に身体を乗っ取られているのでしょう」
聖女の言葉にしばらく考える。
「なるほど、それはやっかいだな」
「ええ、死なせるわけにはまいりませんものね」
どうにかしてあの身体から魔王を追い出す必要があるわけだが。
「何かいい方法はないものかな?」
「そうですわね…勇者様の恋人の魂と魔王との力関係に変化が生じれば勝機はあるかもしれません」
「なるほど、魂を揺さぶってやればいいわけか」
ふと思い立って女勇者の隣に立ち、小声で聞いてみる。
「おい、お前はあの男とどこまでいってるんだ?」
「どこまで、とは?」
「身体の関係までいってるのかって聞いてんだよ」
一瞬で顔が真っ赤になる女勇者。
「そ、そんなこと、結婚前なのにあるわけでしょうが!」
こいつはおそらくいいとこのお嬢さんなんだろうなぁ。
「そうか、でもキスくらいはしてんだろ?」
女勇者は赤い顔のままだが、否定の言葉は返ってこなかった。
俺は女勇者の肩を抱いて魔王に向かって叫んだ。
「おい、魔王じゃなくてこいつの恋人さんよ。その玉座からよ~く見ておきな!」
女勇者を抱き寄せて、小さな声で話しかける。
「悪いがこれも作戦の1つだから許してくれよな。幸いファーストキスじゃねぇようだしさ」
いきなり女勇者の唇をむさぼる。
「んん~っ!」
片手で女勇者の細い腰を抱き寄せ、もう片方の手は彼女の後頭部にまわして逃げられないようにする。
舌を絡ませていくうちに女勇者の抵抗がなくなってくる。
キスは経験済だったようだが、こういう深いキスは未経験だったのかもしれない。
まぁ、これくらいいいよな、うん。
「ううっ!」
突然、魔王が苦しみ出した。
すぐに唇を離して叫ぶ。
「聖女殿、そっちは任せたぞ!」
「わかりましたわ!」
聖女がまるで歌のように聞こえる呪文を唱え出すと、魔王の苦しみはいっそう増したようで、その場でのたうちまわる。
やがてその身体から黒いもやのようなものが見えてきた。
「勇者よ、しっかりしろ!魔王の本体があの身体を離れたら、すぐさま聖剣でぶった切れ!」
「は、はい!」
女勇者はキスの後しばらく呆然としていたが、聖剣を抜いて魔王に駆け寄る。
魔王の装束を身につけた身体から大きな黒いカラスのような鳥が出てきたところで、女勇者は聖剣を振るった。
「魔王、覚悟しろ!」
聖剣で切られた黒い鳥は奇声を発した後に砂になり、風に飛ばされていった。
女勇者は横たわっている男に泣きながら抱きつく。
「ああ、また君に会えてうれしいよ」
さっきまで真っ赤に光っていた男の眼は澄んだ青に変わっていた。
「私がどれだけ心配したと思ってるのよ?もう絶対離さないんだからね!」
あ~あ、見てらんねぇわ。
しばらくしてようやく落ち着いてきた頃、ようやく話を聞くことが出来た。
魔王に身体を乗っ取られていた女勇者の恋人は、我が国の第三王子殿下であることが判明。
魔法マニアである彼は興味本位で禁忌の実験を行って失敗し、魔王に取り付かれてしまったらしい。
そりゃあ魔王討伐が国の極秘任務になるわけだ。
そして女勇者は王宮騎士団長の娘だった。かつて騎士団にいた俺は団長とも面識があるのだが、俺を魔王討伐の一員として推薦したのは団長だったらしい。それにしても顔が親父さんに似なくてよかったなぁ。
ちなみに荷物持ちの男は騎士団長の家に勤めている者で、女勇者のお目付け役とのこと。だからちょっかいを出すとにらまれてたのか。
6
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
傷物の大聖女は盲目の皇子に見染められ祖国を捨てる~失ったことで滅びに瀕する祖国。今更求められても遅すぎです~
たらふくごん
恋愛
聖女の力に目覚めたフィアリーナ。
彼女には人に言えない過去があった。
淑女としてのデビューを祝うデビュタントの日、そこはまさに断罪の場へと様相を変えてしまう。
実父がいきなり暴露するフィアリーナの過去。
彼女いきなり不幸のどん底へと落とされる。
やがて絶望し命を自ら断つ彼女。
しかし運命の出会いにより彼女は命を取り留めた。
そして出会う盲目の皇子アレリッド。
心を通わせ二人は恋に落ちていく。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
聖女の力に目覚めた私の、八年越しのただいま
藤 ゆみ子
恋愛
ある日、聖女の力に目覚めたローズは、勇者パーティーの一員として魔王討伐に行くことが決まる。
婚約者のエリオットからお守りにとペンダントを貰い、待っているからと言われるが、出発の前日に婚約を破棄するという書簡が届く。
エリオットへの想いに蓋をして魔王討伐へ行くが、ペンダントには秘密があった。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる