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最終話:帰還
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魔王に取りつかれていた第三王子殿下は体力がかなり落ちていて、旅はまだ無理だろうということで、辺境の町でしばらく療養してから王都に戻ることになった。女勇者も彼に付き添って残ることにした。
荷物持ちの男も残ることになったが、予備のマジックバッグを俺達に貸してくれた。黒い王冠とマントと杖を魔王討伐の証拠品として王宮へ持ち帰るためだ。
出立前、宿のベッドで横になっている第三王子殿下に呼ばれた。
「貴方には大変感謝している。だが、彼女の唇を奪ったことだけは許しがたい」
感謝していると言いながら、にらまれるのは少々むかつく。
「だいたいアンタが馬鹿なことをしでかさなきゃ、そんなことにはならなかったはずだろ?まずはしっかり養生して反省するんだな」
不敬と言われようが知ったことじゃねぇや。
「俺達はもう行くからな。文句があるなら続きは王都で聞いてやる」
「ああ。それから…本当にありがとう」
女勇者からも出立直前に話しかけられて感謝の言葉を告げられた。
キスに関してはふれたくない話題だったのか何も言われなかったが、やっぱりにらまれた。
気持ちはわからんでもないが、事前に言えば拒まれるのは確実だったしなぁ。
「でもまぁ、魔王に打ち勝つほど愛されててよかったな。幸せになれよ」
頭をくしゃくしゃとなでてやると、その顔は少し赤くなった。
「ん、ありがとう」
勇ましい女勇者もよかったが、今みたいな乙女なところもかわいいと思う。
だが、きれいさっぱりあきらめるとするか。
聖女と2人で王都へ向かう。荷物持ちの男は馬車を手配してくれていた。
「剣聖様は、これからどうなさいますの?」
「王宮で報告したら、しばらくはゆっくり休みたいね。あと、面倒ごとは避けたいから、あの第三王子が戻ってくる前に王都を離れたいかな」
聖女は何か思いついたようにポンと手をたたく。
「それでしたら西の魔の森で魔獣の大量発生の兆候があるそうですわ」
「そうか。じゃあ西へ行こうかな。聖女殿はどうするんだ?」
「そうですわね、私も西へ行こうかと考えておりますの」
やがてのどかな農村地帯を馬車は進む。
「それにしても、また振られましたわね」
「また、とは失礼な奴だな」
御者台の隣に座ってくすくす笑う聖女をにらむ。
「だって剣聖様はいつも恋人がいる女性を好きになるんですもの」
聖女には冒険者になってからのことをいろいろと知られているので反論できない。
「あ~、なんでだろうなぁ?恋をしている女はきれいに見えるからなのかね?」
聖女はため息をついた。
「そういう女性は目ざとく見つけるくせに、どうしてご自分に寄せられる好意にはとことん鈍いのかしら?」
俺に好意?ありえんだろう。
「見た目もいまいちで図体がやたらとでかい。おまけに剣しか使えない粗野な俺を好きになる女なんているわけが」
「残念ながらここにおりますわ。全然気付いておられなかったようですけれど、初めて一緒に仕事した時から好きでしたのよ」
聖女に言葉をさえぎられるも、どう答えていいか思いつかない。
「お、俺なんかのどこがいいんだよ?」
なんとか言葉を絞り出す。
「裏表がなく、いつでも真っ直ぐで、弱者には迷わず手を差し伸べる。いつでも恐れることなく敵に立ち向かい、仲間を労わることも忘れない。ほら、こんなにいいところがあるではございませんか」
そう言って微笑む聖女の顔は、今までのどんな女よりも美しく見えた。
「王都に戻るまで、まだたっぷりと時間はありますわ。しっかりと考えてくださいませね?」
そんなの考えるまでもないだろう?
俺は人通りのない木立の中で馬車を停めた。
「いくら作戦とはいえ、勇者様とキスされた時はとても悲しかったんですのよ?」
上目遣いで俺を見る聖女。
「そ、それは申し訳なかった」
「そう思われるのなら、どうか態度で示してくださいませ」
女勇者とした時よりも濃厚なキスを交わす。
馬車が再び動き出すまでしばらく時間を要したのは致し方ないことである、うん。
荷物持ちの男も残ることになったが、予備のマジックバッグを俺達に貸してくれた。黒い王冠とマントと杖を魔王討伐の証拠品として王宮へ持ち帰るためだ。
出立前、宿のベッドで横になっている第三王子殿下に呼ばれた。
「貴方には大変感謝している。だが、彼女の唇を奪ったことだけは許しがたい」
感謝していると言いながら、にらまれるのは少々むかつく。
「だいたいアンタが馬鹿なことをしでかさなきゃ、そんなことにはならなかったはずだろ?まずはしっかり養生して反省するんだな」
不敬と言われようが知ったことじゃねぇや。
「俺達はもう行くからな。文句があるなら続きは王都で聞いてやる」
「ああ。それから…本当にありがとう」
女勇者からも出立直前に話しかけられて感謝の言葉を告げられた。
キスに関してはふれたくない話題だったのか何も言われなかったが、やっぱりにらまれた。
気持ちはわからんでもないが、事前に言えば拒まれるのは確実だったしなぁ。
「でもまぁ、魔王に打ち勝つほど愛されててよかったな。幸せになれよ」
頭をくしゃくしゃとなでてやると、その顔は少し赤くなった。
「ん、ありがとう」
勇ましい女勇者もよかったが、今みたいな乙女なところもかわいいと思う。
だが、きれいさっぱりあきらめるとするか。
聖女と2人で王都へ向かう。荷物持ちの男は馬車を手配してくれていた。
「剣聖様は、これからどうなさいますの?」
「王宮で報告したら、しばらくはゆっくり休みたいね。あと、面倒ごとは避けたいから、あの第三王子が戻ってくる前に王都を離れたいかな」
聖女は何か思いついたようにポンと手をたたく。
「それでしたら西の魔の森で魔獣の大量発生の兆候があるそうですわ」
「そうか。じゃあ西へ行こうかな。聖女殿はどうするんだ?」
「そうですわね、私も西へ行こうかと考えておりますの」
やがてのどかな農村地帯を馬車は進む。
「それにしても、また振られましたわね」
「また、とは失礼な奴だな」
御者台の隣に座ってくすくす笑う聖女をにらむ。
「だって剣聖様はいつも恋人がいる女性を好きになるんですもの」
聖女には冒険者になってからのことをいろいろと知られているので反論できない。
「あ~、なんでだろうなぁ?恋をしている女はきれいに見えるからなのかね?」
聖女はため息をついた。
「そういう女性は目ざとく見つけるくせに、どうしてご自分に寄せられる好意にはとことん鈍いのかしら?」
俺に好意?ありえんだろう。
「見た目もいまいちで図体がやたらとでかい。おまけに剣しか使えない粗野な俺を好きになる女なんているわけが」
「残念ながらここにおりますわ。全然気付いておられなかったようですけれど、初めて一緒に仕事した時から好きでしたのよ」
聖女に言葉をさえぎられるも、どう答えていいか思いつかない。
「お、俺なんかのどこがいいんだよ?」
なんとか言葉を絞り出す。
「裏表がなく、いつでも真っ直ぐで、弱者には迷わず手を差し伸べる。いつでも恐れることなく敵に立ち向かい、仲間を労わることも忘れない。ほら、こんなにいいところがあるではございませんか」
そう言って微笑む聖女の顔は、今までのどんな女よりも美しく見えた。
「王都に戻るまで、まだたっぷりと時間はありますわ。しっかりと考えてくださいませね?」
そんなの考えるまでもないだろう?
俺は人通りのない木立の中で馬車を停めた。
「いくら作戦とはいえ、勇者様とキスされた時はとても悲しかったんですのよ?」
上目遣いで俺を見る聖女。
「そ、それは申し訳なかった」
「そう思われるのなら、どうか態度で示してくださいませ」
女勇者とした時よりも濃厚なキスを交わす。
馬車が再び動き出すまでしばらく時間を要したのは致し方ないことである、うん。
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