地獄タクシー Ⅱ

コノミナ

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6章 写鬼

攻撃

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「はい」
「順子が高校時代にボランティアで老人介護をして
ある日泣きながら帰ってきて、しばらく考え込んでいました」
「そして看護師になったんですね」
「ええ」

「順子さんの高校時代に周りで
誰かが亡くなりませんでしたか?」
「実は順子の学校の不良どもが五人死んだ事があります」
「その時は?」
「3人がうちで葬儀をあげています」
「死因は分かりませんよね」
「凍死です、全員が全裸で川原で死んでいました、
私はその事件覚えていますよ」

「えっ?」
みんなが沢村を見た
「そうです」
富田がうなずいていた
「かなり変わった死に方だな」
礼司はこの不良グループが順子に関わった事件を起こした
に違いないと思った

「この連中はかなりの悪で万引き、
ゆすり、暴行、レイプの常習犯でした」
「なるほど、さすが地元ですね。沢村さん」
魔美は沢村の肩をたたいた
「ところで住職、山向こうの社を知っていますか」
礼司は住職に聞くとうなずいた。

「知っています」
「あれは何を祀っているか知っていますか?」
「山の神でしょ、この辺りは自然信仰が多いですからね」
「なるほど」
礼司は富田があの社の下に洞窟があることを
知って居る様子は無かった

大体の話を聞いて
事情が分かってきた礼司は
「ありがとうございました」
礼司はと見た夫妻に礼を言うと
立ち上がった

「夜野さん」
富田龍雲は礼司の側に立って
「順子はあの時・・・・・」
「分かっています。ところでペットボトル
に水をいただけますか?」
「はい」

順子の母親は水を汲んできた
それを受け取った礼司は
みんなに合図を送り
タクシーに乗り込むと
礼司が

「事情が分かったな」
「私は分かりません」
沢村は不思議そうな顔をした
「まず、順子が子供の頃、
行方不明になって鬼に遭遇した
たぶんあの社の洞穴に入ったんだろう」

「ええ」
「その時に鬼となんらかに約束をした」
「はい」

「順子がうらんだ人を呪鬼の餌にする約束だ」
「ばるほど、順子は鬼の手先になったんですね」
浜田はうなずいていた
「それで、父親をいじめるヤクザを呪いにかけて餌にした
、その後は不良グループ、ホスト、苦しんでいる老人や病人」
「ええ」

「最後は税金の無駄使いの役人」
「あら、花田大介は?」
魔美が聞くと
「花田大介と言えば最近女性問題を起こして
相手が自殺したと週刊誌書いてあったわ」

由美が自信を持って言った
「由美さん良く知っていますね、週刊誌ネタ」
浜田がからかうと

「美容院で見たのよ、あはは」
由美は照れていた
「なるほど、つまり順子さんが呪っていた
相手はみんな悪者だったんですよね」
「ん?警備員は悪者か?」
「まさか、違うわよね」

「じゃあどうして順子さんは
警備員の写真を送ったのかしら?」
魔美が頭をかしげると
「間違いじゃないか?」
礼司が言った

「えっ?間違い?」
「ああ、その富田順子の携帯はT社の最新型だ、
その赤の携帯はC社の旧型だ」
「ええ」
「送信のボタンの位置が逆だ」
「なるほど」
「たぶん、その警備員は富田順子に無礼な態度を
取られて相当頭に来たんじゃないか」

「じゃあ殺す気は?」
「無かったが写真を撮った、
それを間違って送信したんだろう」
「なるほど」
「まあ、そうだったと思ってあげよう」
「はい」

「さて、鬼退治の準備だ」
「今回の武器は?」
魔美が礼司に聞いた
「まず、あの火を消す事だが呪鬼の実態が分かっていない」

その時突然礼司の体が熱くなって
体から汗が吹き出た
「おお」
「ああ」
魔美と沢村がしゃがみこんだ
「どうしたんですか?隊長」
浜田が駆け寄った

「呪鬼だ」
「だって写真は送られていないでしょ」
由美は魔美の額の汗を拭いて横にした
「俺達は護摩壇の前に立った」
「でも、祈祷師は居ませんよ」
「だからこうして生きていられるんだ」
礼司は苦しみながら
富田婦人にもらったペットボトルの水を
自分と魔美と沢松にかけた
すると3人の体から蒸気が吹き上がった

「しばらくは大丈夫だな、みんなタクシーに乗ってくれ」
ふらふらした沢村と魔美が乗ると
礼司は目を閉じエンジンキーをまわして念じた
すると金色に光ったタクシーが消えた

「ああ、ぎりぎりだー」
魔美が言うと
タクシーは木の間に挟まっていた
「ああ、この狭さに入れる大変なんだ」
「ドアが開きませんが」
「ああ、窓から出てくれ」
窓から外に出た五人は社の前にたった
「行くぞ」
礼司が社の中にある戸を開けると
五人は洞窟の中にころげ落ちた

「みんな大丈夫か?」
4人は礼司の方を向いてうなずくと
目の前の護摩壇の火は相変わらず
強い光を放っていた
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