地獄タクシー Ⅱ

コノミナ

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7章 鏡鬼

ホテル

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「わかりました、おととい池袋のラブホテル
『ラセゾン』で女性が殺されています」
「やっぱりな」
「井上幸子32歳の人妻で相手は25歳の会社員です」
「うん、不倫か」
「ええ、頭を鏡に叩き付けられて死んでいます」
「そんなもんで死ぬか?」

「それが割れた鏡で首の動脈を切って」
「なるほど、その血が地縛霊にかかったわけだな」
「では鬼はホテルにいるわけですね」
「そうなるはずだがまだ不安だな、池袋へ行って見る」

「ええっ?」
「大丈夫だよ、目黒で降ろしたら向こうへ流してみる」
「はい、えっ目黒ですか?」
「後は電車で行ってくれ」
「はいわかりました」
浜田はホッとした

礼司はタクシーを流しながら
池袋へ着き
ホテルラ・セゾンの前に立って
根付をかざした

根付は光らず
鏡鬼の居る気配が無かった
「いないなあ」
ラブホテル街をうろうろ歩く
礼司をうさんくさく見る行きかう
カップル達はそれを避けながら
歩いていった

「夜野さん、今何処?」
由美から礼司の元に電話があった
「池袋のラブホテル街だ」
「一人で?」
「ああ」
「大丈夫?」

「何が?」
「みんな、変な顔をして行かない」
礼司は周りを見渡すと
「なるほど、そう言えばそうだな」
「今から行くから待っていてください」
「ん?」
「今池袋の東口だから」
「そうか、じゃあ北口で待っている」
「はい」

由美は10分ほどで池袋駅北口に来た
「お待たせいたしました。行きましょ」
「ん?どこへ?」
「ホテル街です」
「おお、そうか」

二人は線路沿いに西池袋のラブホテル街へ向かうと
「池袋で何をしていたんだ?」
「飲んでいました」
「そうか、それで?」
「浜田さんから連絡があって
夜野さんが池袋の捜査へ行ったって」

「なるほど、浜田。気にかけてくれたんだ」
「そうですね、うふふ」
「何笑っているんだよ」
「すみません、夜野さんかわいいなあと思って」
「そうか?」
礼司は照れて言った

「ところで、誰と飲んでいたんだ?」
「うふふ、内緒」

2人がラ・セゾンの前に着くと
「さあ、入りましょう」
「えっ?」
由美は礼司の手を引いた
「ま、まずいよ」
「何へんな事考えているんですか」
由美は受付を会釈して通ると部屋番を教えてくれた

「301号室です」
「うん」
301号室の前に着いて
由美がノックをすると
ドアが開いた

「おお、浜田」
「お疲れ様です」
「何で居るんだよ」
「だって、隊長がここへ来るって言ったじゃないですか」
「そりゃそうだが、直接俺に連絡をすればいいだろう」
「でも、タクシーを流しなが池袋に来るとおっしゃたので先に
調べておこうと思っていたんです」

「あはは、なるほど」
「とりあえず、現場を見てください」
「ああ」

礼司が浴室の前の洗面所の前に立つと
目の前の鏡全体にひびが入り
てっぺんの角の部分が
無くなっていた
「浜田、そこの部分が首に刺さったわけか」
「はい」
「犯人はいつ捕まった?」

「犯人の土田隆はおとといの20時30分に井上幸子を殺害して
翌朝上野駅で逮捕されたんです」
「なるほどそれで、昨日の昼に塚田道子、夜に東幹夫
そして今日の夕方に小西栄一が喰われたわけだ」
「はい」

礼司はひびの入った鏡に手を当てて目を
閉じたそして目を開いて言った
「犯人はどこにいる?」
「まだ、上野警察署から池袋警察署に移送されているはずですが」
「ぜったい犯人に鏡を見せないようにしなくてはいけないぞ」
「えっ?」

「次は絶対犯人が喰われるぞ」
「わ、わかりました、池袋警察に行って見ます」
「頼む」
三人はホテルを出ると
浜田は池袋警察へ向かった

「俺達は足取りをたどる」
「はい」
「川島」
「はい」
「何か変わった事がないか?」
「えっ、実は最近何か感じるんです」

「やはりな」
礼司はラブホテル街の駐車場の影に入って
由美の額に手を当てた
「額がピリピリとします」
「心を開け」
「はい」
由美は何も考えず
心を大きく広げた
すると色々な声が頭の中に入ってきた

「夜野さん、感じました」
「うん・何がだ?」
「何か来ました」
二人が再びラ・セゾンの前に立つと
「土田が井上さんを殺して死んだ三人と
接触したと考えられないか?」
「ええ、たとえばホテルの中とか
この辺りの道路とかで
すれ違ったんじゃ」

「ああ、たとえば塚田道子が彼氏と歩いていて
小西栄一は浮気相手歩いていたとか」
「じゃあ、東幹夫は?」
「土井は上野で捕まったのでおそらく
ここから川越街道へ出たんだろう
そこで何らかの接触があったんじゃないか」
礼司はホテル街から東口へ渡る陸橋を指差した

「そうですね、人を殺して駅に向うやつはいませんね」
そこに二人の前を猫が横切ると
「あら、猫ちゃん」
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