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第7章 ひとときの日常休暇編
【雇用№106】リュウとチルのデート4
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「リュウさん見ててね。きっとこうするんだよっと」
チルはオールで水を漕ぎ出した。僕の時は水面の水をバタ使せるだけで、前に全く進んでいなかったのに、ましろ少し陸に近づいているのではと思ったくらいだ。
が、前にゆっくりと前に進む。あたりの景色が少しずつ変わる。うん、僕が作ったボートなのに、僕は前に進まず、チルは前に進む。なんだろうこのモヤモヤ感は一体。作った本人が構造をよく理解しているから、上手く動かせるはずなのに。
構造を理解していることと上手に扱うことは別の次元の話なのだろうか。
「チ、チ、チルさん。お上手ですね。実は漕いだ経験がおありだとか?」
「ふふっ、リュウさん。さっきも言いましたけど、私はこれを見るのも、乗るのも、そして動かすのも初めてなんですよ。それにしても、このボートですか、いいですね。時間がゆっくりと流れているようです。
魔法の絨毯は、、、、早くて景色が目隠しされて見えなかったので、あれですけど、これはやったり流れてるから、二人で何かするにはいいものですね。」
「ええっ、私の世界では、このボートは中仲の良い、男女が愛を育む一役をかってたんです。このゆったりとした世界で二人きりの世界でお話する事でより一層二人の距離が縮まるんですよ。」
「リュウさんは、私との距離を詰めて、愛を育むためにこれを用意してくださったんだすね。とっても嬉しいです」
えっ、ちょっと待って、愛を育む?チルと?家族愛だよね?あくまで将来に向けての練習だよね?あれっ?ボートの説明
の仕方を間違えたかな。そういう意味で使われていることもあるって言いたかっただけなんだけど。
まー、チルが嬉しそうに喜んでいるから、訂正はしないでおこうか。チルのことを妹分としてもっとよく知りたいっていうのは、その通り出し。
「ええ、チルさんに喜んで頂けるように準備しましたよ。町中では外野が煩くて、静かにお話出来ませんからね。さっ、オールを渡して下さい。力を使うので、腕が疲れてきたでしょう?本来、ボートを漕ぐのは、男の役割ですから、僕に任せてください。」
「ありがとうございますわ。でも、大丈夫ですよ。いつも鍛えられていますから、このくらいのことはなんでもありませんわ。それにもっとこの状況を楽しみたいので、もう少し私にさせて下さい。ねっ。」
片目を瞑り、ウインクを、しながらお願いしてくる。
その口調と、今の容姿でそれをするのは反則ですよ。普段なら可愛いなーで済ませられるのに、今の状況だと、感情をコントロールしないと、暴走しちゃいそうだから。
「いい景色ですよね。普段の日常から切り離され、非日常の空気になってます。」
動揺しているのが悟られないように話題を変え、視線を思いっきり目の前のチルからあたりの景色へと移す。
「私もたまにここには来るんですけど、湖の中から見る景色は違いますね。」
「そうだ。チルさんに聞いてみたかったことが。ずっとこの町に住まわれてるんですよね?」
「ええ。多分。」
「多分?どういうことですか?」
「私って、幼い頃の記憶があまりないんですよね。ほら、前に宿屋の女将さんに住み込みで仕事させてもらってたって話しましたよね。」
「はい」
「その前の話になるんですが、私が記憶のあるのって、実は、宿屋で働く少し前からなんですよ。私は、両親の顔とか全く覚えて無いんです。魔族の襲来も度々あるので、親がいない子とかは沢山いるんで、そう珍しい話でも無いんですが。
女将さんに聞いは話だと、私って、薬樹の森で一人でいたようなんですね。で、それを薬草採取に来ていた狩人の人が、不信に思って声をかけて、街に連れてきてくれたようなんです。」
なんか、ちょっと気になったから、軽く聞いてみたんだけど思ったより思い話になってしまったな。しまったデートの日に聞くようなものではなかったよ。でも、こういう時ってどうすればいいんだっけ?
あんまりそういう経緯のある友達はいなかったから、そういう時にどういう対応をしていいか分からんな。
「狩人の人が役所や町の人に声をかけてくれて、親を探してくれたみたいなんですけど、結局見つからず、かと言って、狩人の人も男手一つでは育てられないので、人手を探してた宿屋の女将さんのとこに預けたらしいです。」
「ええと何と言っていいか分からないけど、狩人の人って今はどうしているの?」
チルは首を振る。
「狩人の人は、魔族の襲撃で私を宿屋に預けた時に無くなってますね。」
「なるほど。」
いや、何がなるほどだよ。そんな返答があるのか?どう声をかければいいんだ?可哀想だと慰めればいいのか?でも、それを嫌っている人も現代には、沢山いるって聞くし、下手な同情は良くないとも聞くし。
「あっ、リュウさん。ごめんなさいね。こんなつまらない話しちゃって。だからね、私って家族ってものに憧れたんだ。リュウ兄ちゃんの家に行ってからは、一緒には住んでないけど、ウェルザさんもいるし、モニカちゃんもいるし、ティタニアちゃんもいる。今はセバリンもいるから、仕事だけど。
家族ってこんな感じかなって気がして毎日とっても楽しいんだ。だから、私を家に泊めてくれたリュウ兄ちゃんにはとても感謝してるんだよ。」
チルはオールで水を漕ぎ出した。僕の時は水面の水をバタ使せるだけで、前に全く進んでいなかったのに、ましろ少し陸に近づいているのではと思ったくらいだ。
が、前にゆっくりと前に進む。あたりの景色が少しずつ変わる。うん、僕が作ったボートなのに、僕は前に進まず、チルは前に進む。なんだろうこのモヤモヤ感は一体。作った本人が構造をよく理解しているから、上手く動かせるはずなのに。
構造を理解していることと上手に扱うことは別の次元の話なのだろうか。
「チ、チ、チルさん。お上手ですね。実は漕いだ経験がおありだとか?」
「ふふっ、リュウさん。さっきも言いましたけど、私はこれを見るのも、乗るのも、そして動かすのも初めてなんですよ。それにしても、このボートですか、いいですね。時間がゆっくりと流れているようです。
魔法の絨毯は、、、、早くて景色が目隠しされて見えなかったので、あれですけど、これはやったり流れてるから、二人で何かするにはいいものですね。」
「ええっ、私の世界では、このボートは中仲の良い、男女が愛を育む一役をかってたんです。このゆったりとした世界で二人きりの世界でお話する事でより一層二人の距離が縮まるんですよ。」
「リュウさんは、私との距離を詰めて、愛を育むためにこれを用意してくださったんだすね。とっても嬉しいです」
えっ、ちょっと待って、愛を育む?チルと?家族愛だよね?あくまで将来に向けての練習だよね?あれっ?ボートの説明
の仕方を間違えたかな。そういう意味で使われていることもあるって言いたかっただけなんだけど。
まー、チルが嬉しそうに喜んでいるから、訂正はしないでおこうか。チルのことを妹分としてもっとよく知りたいっていうのは、その通り出し。
「ええ、チルさんに喜んで頂けるように準備しましたよ。町中では外野が煩くて、静かにお話出来ませんからね。さっ、オールを渡して下さい。力を使うので、腕が疲れてきたでしょう?本来、ボートを漕ぐのは、男の役割ですから、僕に任せてください。」
「ありがとうございますわ。でも、大丈夫ですよ。いつも鍛えられていますから、このくらいのことはなんでもありませんわ。それにもっとこの状況を楽しみたいので、もう少し私にさせて下さい。ねっ。」
片目を瞑り、ウインクを、しながらお願いしてくる。
その口調と、今の容姿でそれをするのは反則ですよ。普段なら可愛いなーで済ませられるのに、今の状況だと、感情をコントロールしないと、暴走しちゃいそうだから。
「いい景色ですよね。普段の日常から切り離され、非日常の空気になってます。」
動揺しているのが悟られないように話題を変え、視線を思いっきり目の前のチルからあたりの景色へと移す。
「私もたまにここには来るんですけど、湖の中から見る景色は違いますね。」
「そうだ。チルさんに聞いてみたかったことが。ずっとこの町に住まわれてるんですよね?」
「ええ。多分。」
「多分?どういうことですか?」
「私って、幼い頃の記憶があまりないんですよね。ほら、前に宿屋の女将さんに住み込みで仕事させてもらってたって話しましたよね。」
「はい」
「その前の話になるんですが、私が記憶のあるのって、実は、宿屋で働く少し前からなんですよ。私は、両親の顔とか全く覚えて無いんです。魔族の襲来も度々あるので、親がいない子とかは沢山いるんで、そう珍しい話でも無いんですが。
女将さんに聞いは話だと、私って、薬樹の森で一人でいたようなんですね。で、それを薬草採取に来ていた狩人の人が、不信に思って声をかけて、街に連れてきてくれたようなんです。」
なんか、ちょっと気になったから、軽く聞いてみたんだけど思ったより思い話になってしまったな。しまったデートの日に聞くようなものではなかったよ。でも、こういう時ってどうすればいいんだっけ?
あんまりそういう経緯のある友達はいなかったから、そういう時にどういう対応をしていいか分からんな。
「狩人の人が役所や町の人に声をかけてくれて、親を探してくれたみたいなんですけど、結局見つからず、かと言って、狩人の人も男手一つでは育てられないので、人手を探してた宿屋の女将さんのとこに預けたらしいです。」
「ええと何と言っていいか分からないけど、狩人の人って今はどうしているの?」
チルは首を振る。
「狩人の人は、魔族の襲撃で私を宿屋に預けた時に無くなってますね。」
「なるほど。」
いや、何がなるほどだよ。そんな返答があるのか?どう声をかければいいんだ?可哀想だと慰めればいいのか?でも、それを嫌っている人も現代には、沢山いるって聞くし、下手な同情は良くないとも聞くし。
「あっ、リュウさん。ごめんなさいね。こんなつまらない話しちゃって。だからね、私って家族ってものに憧れたんだ。リュウ兄ちゃんの家に行ってからは、一緒には住んでないけど、ウェルザさんもいるし、モニカちゃんもいるし、ティタニアちゃんもいる。今はセバリンもいるから、仕事だけど。
家族ってこんな感じかなって気がして毎日とっても楽しいんだ。だから、私を家に泊めてくれたリュウ兄ちゃんにはとても感謝してるんだよ。」
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