【完結】雇われ勇者の薬草農園 ~チートスキルで薬草栽培始めます~ 【累計13万PT & 123大賞4一次通過】

近衛 愛

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第8章 変わってしまう日常編

【雇用№162】精霊樹の斧と魔霊樹討伐11

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「ゲートってこんな風に出来るんだね。」

 チルがしみじみとゲートが開いていくのを見ながら呟いている。僕も同じようにゲートの開く瞬間を見入ってしまっていた。

「パパ、ゲートが開ききって魔族が出てくるよりも前に極大魔法を準備しないと。」

「そっそうだった。」

 急いで、現状を確認しつつ、不足しているの魔法を唱える。準備はこれで上場。後は、魔族が大多数出てくるのを待つばかりである。

「開いている側から少しずつインプが出てきてるね。」

「そうですね。今回の魔法は範囲と持続時間が長いので、なるべく多く魔族が出てきたから一網打尽にしとめましょう。」

  ノエルが拳を突き出しながら、強い声で言った。

「そうだな。最悪最初の数匹は撃ち漏らしても大多数を一気に仕留めてしまいたいな。」


 次から次へと魔族が出てきて、飛び出していく。
 1,2.3……36匹か。今回はこんなものかな?後続が出てくる気配もなさそうである。初めに来たインプが魔法の範囲外にもう少しで辿り着く。

「こんなものかな。」

「極大天候魔法、エターナルロア(雷の咆哮)」

 キースペルを解き放ち、準備していた極大魔法をぶっ放す。

準備していた氷の粒が微細に運動を始め、電荷がドンドン溜まっていく。臨界点に達し、それはすぐさま地上に向けて放たれる。

 北陸の風物詩、雷

「ピカッ、ゴロゴロ、ドーンドーン」

 いく数発の雷が転移ゲートに向けて、落とされる。インプやデーモン達は、訳も分からず雷に打たれて、黒焦げになりながら、地上へと落下していく。

 展開してある水のヴェールを突き破り、地表へと落ちていく。水のヴェールの下に落ちたデーモン達は、下の待機部隊によって、風の魔法で城の外まで吹き飛ばされていく。
 
 「リュウ兄ちゃん、面白いくらいに雷が落ちていくね。」

「あぁ、そうだね。あの魔法範囲内に入れば僕だけもデーモンと一緒に雷で黒コゲになるよ。」

「間違ってもあの中には入りたくはないね。あっ、あそこに雷に打たれてもしぶとく飛んでいるデーモンがいるよ。」

「パパ、本当です。あのデーモンを追撃しちゃいましょう。」

「いや、そこまでしなくても、しばらくすればまた、雷に打たれて落ちていくよ。ほらっ、また撃たれた。」

 流石に我慢では耐えきれなくなっていたのか、また一匹また一匹と雷に打たれて、地表へ落ちていく。

 季節外れの稲光が凄いな。下の城の方を見ると、兵士の人達が出てきて配備されているのがよく分かる。多分驚愕の表情でこの光景を見ているとは思うが遠くて詳細がわからないのが残念である。

「パパ出てきた魔族の最後の一名が撃沈しました。転移ゲートは開いたままですが、後続が出てくる様子はありません。」


「ノエル隊員。報告ご苦労様。では、これにて今回の魔族襲撃防衛作戦は終了とする。各自解散。」

「はっ」

 チルが右手を額の上に当て、敬礼のポーズをする。

「で、どうするの?リュウ兄ちゃん。転移ゲートまだ空いているから、今から突撃しちゃう?」

 僕とノエルは顔を見合わせて、苦虫を噛み潰した様な顔を一瞬する。が、それもすぐ元に戻し、目線でノエルにコンタクトを取る。ノエルはそれに対して、チョコンと頷く。


「いや、流石にあの雷が落ちている所を抜けて、転移ゲートに向かうのは無理だよ。せっかくのチャンスだけど、命あってのモノダネだからな。今回は諦めるとするよ。さっ地表に降りよう。チル。このまま地表に降りてくれ。」

「うん、わかったよ。でも、雷はリュウ兄ちゃんが魔法を解除したら、転移ゲートに向かうことが出来るんじゃないの?それになんでここで、地表に降りるの?ドラゴンズファームに戻ればいいんじゃないの?」


「チル。間抜けなことだけど、あの魔法の解除を、どうやってするから考えてなかったんだよ。ほらテストの時は小規模だったから、時間が経てばすぐ消えてたし。ここまで大きく展開すると持続時間が読めないんだよ。」

「へー、そうなんだ。リュウ兄ちゃんって、頭いいかと思えば、ところどころで抜けてるよね。さっきの転移ゲートの予測時間もそうだしね。ふふっ。」

「そうなんだよな。所どころで考えが甘い所があるからな。まー大事に至らなくてよかったよ。これがあるから予備の対策がいくつか必要なんだよな。」

「チルお姉ちゃん、地表に降りるのは、城の兵士さんの目があるからですよ。ほらっ、よく見るとこっちの方に顔が向いてますよ。」

「えっ、どれどれ?って、ノエルちゃんここからじゃ見えないよ。でも、そうなんだね。これからドラゴンズファームに変えるとどこからきたか解っちゃうからだね。」

「そういうことでだね。さっ、着いたから降りよう。」

 木や茂みのあるところに降りて、ならべく城から見えない様に着陸する。

 チルが降りたところを見計らって、

「チル、首元にゴミがついているよ。」

 「えっどこどこ?」

「僕がとってあげるよ。」

「うん、お願い。」

  僕は近づいて、そっと首元にチョップを入れる。

「イタッ」

  えっ、なんでって顔を向けて、チルが気を失い、倒れ込む。咄嗟に身体を抱き抱え、そっと木を背もたれにして、地面の上に下ろす。

「ノエル、念の為に眠りの魔法を!」

「はい、パパ」

 ノエルが精霊語で精霊術を使い、気を失っているチルを深い眠りへ誘う。
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