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33 花は闇夜に
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宗一はギルバートに連れられてじゃれ合いながら、というよりは、じゃれつくギルバートを宗一は鬱陶しげにあしらいつつ城内を移動し、行き着いたその場所は見覚えがあった。
この城へ来た時、宗一が初めて降り立った場所だ。石造りの建物に囲われた中庭で、石畳の小道、花壇に植えられた花。
すっかり夜の帳が降りた庭園には外灯などはない。今夜は空に薄い雲が掛かり、月明かりは弱々しい。夜目の利かない宗一には周囲を見ることはできないはずなのだが、助けとなる光源は足元にあった。
驚いたことに、花壇の花々が青白く光っている。
宗一は感嘆の溜息を吐いた。
「こりゃあ、たまげた」
淡く発光する花に近付き、よく見ると、それはユリに似た形状をしている。小振りで背は脛ぐらいと低めだ。発光しているのは花弁の部分で、その肉厚な花弁に囲まれた中央には、雄しべと雌しべが潜んでいる。
「ミースの花はもう終わりだから別へ移して、この時期の花に植え替えた」とギルバートが言った。「これはリオリリって呼ばれてる。どう? 光る花なんて、珍しいだろう? ソウイチに見せたかったんだ」
宗一はこの奇妙な花に釘付けとなった目を引き離し、ギルバートへ視線を向けると、ある違和感に気づいた。彼の向こう側に淡く照らされた噴水らしきものが見える。宗一の記憶違いでなければ、その噴水は女神像があって庭の中央に位置していたはずだ。しかし、円形だった噴水は壁際に追いやられて半円になり、立派な女神像は跡形もなく消えていた。
「おや、噴水はあっちだったかい? 像も立っていたと思ったけど」
「ああ、ちょっとフランスっぽいかなと思ってやめたんだ。そこの、あれ、見える?」
宗一の問いにギルバートが答えて、噴水から少し離れた暗がりを指さした。その辺りには発光する花は植えられていないので、宗一にはなにも見えない。
「いやあ、わからん。何だろう?」
「だね。あの辺に、アーチを造ってるんだ。トンネルにして、ガーデンベンチを置いた。あと、花壇の囲いはやめて、もっと自然な感じにハーブとか植えようと思ってる」
ギルバートは瞳を輝かせながらこの庭の展望を説明をしている。
楽しそうに話す彼を見ていると、宗一はふと懐かしくなった。亡妻ユキとの思い出だ。彼女は花が好きで、庭に色とりどりの花を植えていた。手伝いをしていた宗一もまた、彼女の影響で土いじりが好きになったのだった。
「君も庭いじりが好きな質かい」
そう言うと、ギルバートは気恥ずかしそうにそっぽを向いて言った。
「オレの祖母はイギリスにいるんだ。彼女の造った庭は素晴らしかった。できることなら、もう一度、あの庭が見たいよ」
宗一は胸を締め付けられるような思いがした。ギルバートはこの世界でひとりきりだったのだと、改めて思い知る。家族と離れ離れになったことは、若いギルバートにはさぞや辛かろう、と宗一は寂しそうに見える横顔に同情した。
「趣味だねぇ」
あれこれ言葉を選ぼうとしても彼を慰める言葉が見つからず、そんなことを呟くと、ギルバートは静まる雰囲気を吹き飛ばして笑った。
「あはは! 良い趣味してるだろう? ソウイチも手伝ってくれる?」
「願ってもない。僕もこういうのは好きなんだ」
「そうだと思った。早速手伝ってもらいたいところだけど、今夜は別件だ」
ギルバートの表情から穏やかな笑みが消えた。そして、宗一には聞き取れない言葉で念仏を唱える。掌の上に白く輝く紋様が現れると、その中心に光を放つ球体が現れた。野球ボールほどの大きさのそれは、土星のように紋様の輪っかをつけて空へと昇り、頭上5、6メートル付近で止まった。
光の玉が外灯の役割を担ってくれるお陰で、宗一にも周囲がはっきりと見える。
「ソウイチ、よく聞いてほしい」ギルバートは宗一の手を取って言った。「これから来るヤツらは、神ティレニアへの信仰心なんて皆無だ。寧ろ、真逆にいる。敵意すら持っているかもしれない。だけど、安心してほしい。オレが指一本触れさせない」
「そんなに危険な連中なのかい?」
「まあね。だけど、ソウイチがこの世界へ来る前にケリはついてるから、オレには逆らわないよ」
宗一の心に不安が過る。
すると、すかさずギルバートが握った手に力を込めた。真っ直ぐに宗一の目を見つめて頷く。
なるほど、と宗一は思う。ギルバートは宗一の感情が乱れることを案じているのだ。宗一に対し敵意を向ける者に、感情をどうやって保つのかが問題だ。
宗一が悪感情を抱くことは、ギルバートを邪悪へと堕としてしまうことになる。それは、二人にとって望まぬ結果だ。是が非でも、回避しなくてはならない。そう冷静に考えていると、今まさに、大きな山場に立たされているのだと思えてくる。
宗一は感情を押し殺すことが得意だということで、このギルバート青年のヘルパーさんに抜擢されたらしいが、宗一には得意という自覚はない。97年間生きてきた中で、感情の起伏は減ったとは思う。だが、無意識の領域は制御のしようもない。あからさまな敵意を向ける者が現れて、能天気ではいられない。
「気は持ちよう。たとえ、味噌汁を零したとしても、どんくさい己を笑えば良いだけだね」
宗一の言葉に、ギルバートはいまいち理解しがたいようで首を傾げた。
宗一はギルバートの手を握り返して言った。
「ものは試しだ。やってみよう」
ギルバートは驚いたように目を見開いたが、すぐに目を細める。
「ソウイチのそうゆうとこ、好きだよ」
今度は宗一が目を見開いた。ギルバートの言葉に、心臓が跳ね上がる。
直接的な表現はお国柄なのだろう。勿論、家族として、友人としての想いだということは重々承知している。だが、宗一には刺激が強い。不意に言われると、妙な勘違いをしてしまいそうになる。いい年寄りが恥ずかしい。
宗一は早まる鼓動を深呼吸で抑え、咳払いをして言った。
「よしなさい」
それを受けて、反論しようとしたのか、からかうつもりだったのか、ギルバートが口を開いたその時、暗闇の中から砂利を踏む音が聞こえてきた。
足音が次第に近づいてくる。
ギルバートは宗一を隠すように前に出た。
「タイミング、最悪。オマエら、遠慮って言葉、知らないのかよ?」
ギルバートの声は通常時よりも低く、緊張しているように聞こえた。
「オレらのことなんてぇ、気にしないでさぁ、続けてくださいよぉ。ヒトのプレイぃ、見るのもスキですよぉ?」
気怠そうな口調の上擦ったような声が言った。
光の下に現れたのは、真っ黒いマントに身を包んでいるせいで、白い顔が浮かんで見える人型の男だ。白金の髪は総髪にしていて、目鼻立ちの整った顔つき。耳はエルフ族程ではないが先が尖っている。
男は口角を吊り上げて言った。
「申し訳ございません、我らが王よ。ですが、急ぎお伝えしたきことがございます」
声色が違った。気怠そうな口調とは対照的で、滑舌の良い喋り口だ。
「そーですよぉ。オレらぁ、ちゃーんとシゴトしてきましたからぁ。ホメてくださぁい」
ようやく姿を現したのは、最初に声を発した主のようだ。ひと目で男だとわかる。彼も人型をしているが、肌を著しく露出させた特殊な服装をしていた。上半身は裸。下半身は股間を隠す程度。服と言えるのかは疑問だが。しなやかで線の細い身体だが、付くべきところに筋肉がある。赤く染まった長い髪を掻き揚げて、虚ろな目をしている。だが、これまたギルバートやアインハルトに負けず劣らずの美形だ。
「報告を聞こう」
ギルバートは酷く色白の男に言った。
「はい。南東の我が国との境、ヴァールグレーン王国領内にて、動きがございましたので――……」
色白の男の言葉を遮るように、露出狂の男が口を開いた。
「オレがエラそうなやつを白状させてきましたよぉ。それぇ」と言って宗一を指さした。「そのぉ、いとしごさまぁ? それがぁ、欲しいんだってさぁ」
気怠そうな口調の露出狂は、宗一を見てにやりと笑った。その顔は、どこか歪んで見える。張り付いているような、作り物の顔といった感じか。光が入らず、暗い色に見える瞳は笑っていないと感じさせる。
これは、敵意か? と宗一が身構えると、笑って見せるその男は、ねっとりと舌なめずりをした。
「っ!」
宗一は思わず息を飲んだ。狙われている、そう感じた。しかし、これは敵意ではなく、殺意とも違う。これは、何だ?
そう思ったと同時に、ひとつの解を得る。それは捕食者の視線だ。獲物を前にした蛇の如く、じりじりと迫りながら、決して目を離さない。この男は、宗一を食糧として見ている。
背中に冷たい汗が流れた。宗一の感情に恐怖心が芽生える。
その時、ギルバートは声を張って言った。
「やめろ」
たった一言だったが、宗一を舐めるように見ていた気怠い口調の男は、咄嗟に跪き、視線を地に落とした。
宗一から視線が外され、一気に緊張が解けた。宗一は息を深く吸い込んで、ゆっくりと吐き出しながら、心を落ち着かせる。
「なにか、変な感じがした……」
そう言ってギルバートを見上げると、厳しい表情のまま、宗一を抱き寄せて自身の外套で覆った。宗一はギルバートの懐にすっぽりと入ってしまっていて、視界は閉ざされた。逞しい胸板に押し付けている耳には、ギルバートの鼓動が心地良い。
安寧を得るとはこのことか。少し大げさな表現だ、と自嘲しながらも、宗一は盛大に胸を撫で下ろした。
この城へ来た時、宗一が初めて降り立った場所だ。石造りの建物に囲われた中庭で、石畳の小道、花壇に植えられた花。
すっかり夜の帳が降りた庭園には外灯などはない。今夜は空に薄い雲が掛かり、月明かりは弱々しい。夜目の利かない宗一には周囲を見ることはできないはずなのだが、助けとなる光源は足元にあった。
驚いたことに、花壇の花々が青白く光っている。
宗一は感嘆の溜息を吐いた。
「こりゃあ、たまげた」
淡く発光する花に近付き、よく見ると、それはユリに似た形状をしている。小振りで背は脛ぐらいと低めだ。発光しているのは花弁の部分で、その肉厚な花弁に囲まれた中央には、雄しべと雌しべが潜んでいる。
「ミースの花はもう終わりだから別へ移して、この時期の花に植え替えた」とギルバートが言った。「これはリオリリって呼ばれてる。どう? 光る花なんて、珍しいだろう? ソウイチに見せたかったんだ」
宗一はこの奇妙な花に釘付けとなった目を引き離し、ギルバートへ視線を向けると、ある違和感に気づいた。彼の向こう側に淡く照らされた噴水らしきものが見える。宗一の記憶違いでなければ、その噴水は女神像があって庭の中央に位置していたはずだ。しかし、円形だった噴水は壁際に追いやられて半円になり、立派な女神像は跡形もなく消えていた。
「おや、噴水はあっちだったかい? 像も立っていたと思ったけど」
「ああ、ちょっとフランスっぽいかなと思ってやめたんだ。そこの、あれ、見える?」
宗一の問いにギルバートが答えて、噴水から少し離れた暗がりを指さした。その辺りには発光する花は植えられていないので、宗一にはなにも見えない。
「いやあ、わからん。何だろう?」
「だね。あの辺に、アーチを造ってるんだ。トンネルにして、ガーデンベンチを置いた。あと、花壇の囲いはやめて、もっと自然な感じにハーブとか植えようと思ってる」
ギルバートは瞳を輝かせながらこの庭の展望を説明をしている。
楽しそうに話す彼を見ていると、宗一はふと懐かしくなった。亡妻ユキとの思い出だ。彼女は花が好きで、庭に色とりどりの花を植えていた。手伝いをしていた宗一もまた、彼女の影響で土いじりが好きになったのだった。
「君も庭いじりが好きな質かい」
そう言うと、ギルバートは気恥ずかしそうにそっぽを向いて言った。
「オレの祖母はイギリスにいるんだ。彼女の造った庭は素晴らしかった。できることなら、もう一度、あの庭が見たいよ」
宗一は胸を締め付けられるような思いがした。ギルバートはこの世界でひとりきりだったのだと、改めて思い知る。家族と離れ離れになったことは、若いギルバートにはさぞや辛かろう、と宗一は寂しそうに見える横顔に同情した。
「趣味だねぇ」
あれこれ言葉を選ぼうとしても彼を慰める言葉が見つからず、そんなことを呟くと、ギルバートは静まる雰囲気を吹き飛ばして笑った。
「あはは! 良い趣味してるだろう? ソウイチも手伝ってくれる?」
「願ってもない。僕もこういうのは好きなんだ」
「そうだと思った。早速手伝ってもらいたいところだけど、今夜は別件だ」
ギルバートの表情から穏やかな笑みが消えた。そして、宗一には聞き取れない言葉で念仏を唱える。掌の上に白く輝く紋様が現れると、その中心に光を放つ球体が現れた。野球ボールほどの大きさのそれは、土星のように紋様の輪っかをつけて空へと昇り、頭上5、6メートル付近で止まった。
光の玉が外灯の役割を担ってくれるお陰で、宗一にも周囲がはっきりと見える。
「ソウイチ、よく聞いてほしい」ギルバートは宗一の手を取って言った。「これから来るヤツらは、神ティレニアへの信仰心なんて皆無だ。寧ろ、真逆にいる。敵意すら持っているかもしれない。だけど、安心してほしい。オレが指一本触れさせない」
「そんなに危険な連中なのかい?」
「まあね。だけど、ソウイチがこの世界へ来る前にケリはついてるから、オレには逆らわないよ」
宗一の心に不安が過る。
すると、すかさずギルバートが握った手に力を込めた。真っ直ぐに宗一の目を見つめて頷く。
なるほど、と宗一は思う。ギルバートは宗一の感情が乱れることを案じているのだ。宗一に対し敵意を向ける者に、感情をどうやって保つのかが問題だ。
宗一が悪感情を抱くことは、ギルバートを邪悪へと堕としてしまうことになる。それは、二人にとって望まぬ結果だ。是が非でも、回避しなくてはならない。そう冷静に考えていると、今まさに、大きな山場に立たされているのだと思えてくる。
宗一は感情を押し殺すことが得意だということで、このギルバート青年のヘルパーさんに抜擢されたらしいが、宗一には得意という自覚はない。97年間生きてきた中で、感情の起伏は減ったとは思う。だが、無意識の領域は制御のしようもない。あからさまな敵意を向ける者が現れて、能天気ではいられない。
「気は持ちよう。たとえ、味噌汁を零したとしても、どんくさい己を笑えば良いだけだね」
宗一の言葉に、ギルバートはいまいち理解しがたいようで首を傾げた。
宗一はギルバートの手を握り返して言った。
「ものは試しだ。やってみよう」
ギルバートは驚いたように目を見開いたが、すぐに目を細める。
「ソウイチのそうゆうとこ、好きだよ」
今度は宗一が目を見開いた。ギルバートの言葉に、心臓が跳ね上がる。
直接的な表現はお国柄なのだろう。勿論、家族として、友人としての想いだということは重々承知している。だが、宗一には刺激が強い。不意に言われると、妙な勘違いをしてしまいそうになる。いい年寄りが恥ずかしい。
宗一は早まる鼓動を深呼吸で抑え、咳払いをして言った。
「よしなさい」
それを受けて、反論しようとしたのか、からかうつもりだったのか、ギルバートが口を開いたその時、暗闇の中から砂利を踏む音が聞こえてきた。
足音が次第に近づいてくる。
ギルバートは宗一を隠すように前に出た。
「タイミング、最悪。オマエら、遠慮って言葉、知らないのかよ?」
ギルバートの声は通常時よりも低く、緊張しているように聞こえた。
「オレらのことなんてぇ、気にしないでさぁ、続けてくださいよぉ。ヒトのプレイぃ、見るのもスキですよぉ?」
気怠そうな口調の上擦ったような声が言った。
光の下に現れたのは、真っ黒いマントに身を包んでいるせいで、白い顔が浮かんで見える人型の男だ。白金の髪は総髪にしていて、目鼻立ちの整った顔つき。耳はエルフ族程ではないが先が尖っている。
男は口角を吊り上げて言った。
「申し訳ございません、我らが王よ。ですが、急ぎお伝えしたきことがございます」
声色が違った。気怠そうな口調とは対照的で、滑舌の良い喋り口だ。
「そーですよぉ。オレらぁ、ちゃーんとシゴトしてきましたからぁ。ホメてくださぁい」
ようやく姿を現したのは、最初に声を発した主のようだ。ひと目で男だとわかる。彼も人型をしているが、肌を著しく露出させた特殊な服装をしていた。上半身は裸。下半身は股間を隠す程度。服と言えるのかは疑問だが。しなやかで線の細い身体だが、付くべきところに筋肉がある。赤く染まった長い髪を掻き揚げて、虚ろな目をしている。だが、これまたギルバートやアインハルトに負けず劣らずの美形だ。
「報告を聞こう」
ギルバートは酷く色白の男に言った。
「はい。南東の我が国との境、ヴァールグレーン王国領内にて、動きがございましたので――……」
色白の男の言葉を遮るように、露出狂の男が口を開いた。
「オレがエラそうなやつを白状させてきましたよぉ。それぇ」と言って宗一を指さした。「そのぉ、いとしごさまぁ? それがぁ、欲しいんだってさぁ」
気怠そうな口調の露出狂は、宗一を見てにやりと笑った。その顔は、どこか歪んで見える。張り付いているような、作り物の顔といった感じか。光が入らず、暗い色に見える瞳は笑っていないと感じさせる。
これは、敵意か? と宗一が身構えると、笑って見せるその男は、ねっとりと舌なめずりをした。
「っ!」
宗一は思わず息を飲んだ。狙われている、そう感じた。しかし、これは敵意ではなく、殺意とも違う。これは、何だ?
そう思ったと同時に、ひとつの解を得る。それは捕食者の視線だ。獲物を前にした蛇の如く、じりじりと迫りながら、決して目を離さない。この男は、宗一を食糧として見ている。
背中に冷たい汗が流れた。宗一の感情に恐怖心が芽生える。
その時、ギルバートは声を張って言った。
「やめろ」
たった一言だったが、宗一を舐めるように見ていた気怠い口調の男は、咄嗟に跪き、視線を地に落とした。
宗一から視線が外され、一気に緊張が解けた。宗一は息を深く吸い込んで、ゆっくりと吐き出しながら、心を落ち着かせる。
「なにか、変な感じがした……」
そう言ってギルバートを見上げると、厳しい表情のまま、宗一を抱き寄せて自身の外套で覆った。宗一はギルバートの懐にすっぽりと入ってしまっていて、視界は閉ざされた。逞しい胸板に押し付けている耳には、ギルバートの鼓動が心地良い。
安寧を得るとはこのことか。少し大げさな表現だ、と自嘲しながらも、宗一は盛大に胸を撫で下ろした。
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