猫探しから爆破予告、浮気調査から完全犯罪までなんでもござれ。糸玉異能力探偵事務所へようこそ

田山海斗

文字の大きさ
27 / 45

十三本目 お出かけの電車、反抗の列車

しおりを挟む
「ってことがあってねー」
「それは災難でしたね、せっかく張り込んでいたのに」
「まったくですよ、せっかく今度こそいいところ見せられると思ったのに」
 今日はオフなので、紫さんと榠樝さんと事務所メンバーの若い衆で買い物に来た。田辺はお留守番。歳も近いということで仲良くなった。あと、たまにバイトに来てくれたりする。
 移動の電車の中で一昨日の事件の愚痴を言っているのだが、
「まあまあ、結局捕まえたのですから」
「りんさんがね」
「ええ……」
 榠樝さんだけ活躍したのが気に食わないようで。
「ちょ、由良さーん、たすけてくださいー」
「でもその通りじゃないですか」
「はうあっ」
 完全に四面楚歌である。
「ほら皆さん、そんなにいじめたら内海さんが可哀想ですよ、その辺にしてあげては?」
「………ま、終わったことですしね」
「ありがとうございます、えっと、緑さん!」
「紫です」
「ああ!ごめんなさい!」
 そんなことを言っていると、もうすぐ目的の駅に着く頃になっていた。
「そろそろですね、皆忘れ物しないようにね」
「次はー、██、██です」
 車内アナウンスが、到着を告げる。
「ですが!止まりませーん!」
 そしてそれは、同時に開戦も告げた。
「………は?」
「この電車は、我々が乗っ取りましたー!もう止まりませーん!あなたがたは、我々の国への反抗を示すための花火になっていただきます。もう少し席についたまま、お待ちくださーい!」
 何がなんだかわからない。誰もが声を出せなかった。理解するには少し時間が短い。
「あ、クラシックとかかけたらそれっぽくない?おーい、イプシロン!ケータイ貸して!」
「やだよ、オメガ、お前貸してやれ」
「わりー、もう制限きてて」
「早すぎんだろ、馬鹿かお前は」
 静まり返る車内には、不釣り合いに明るいスピーカーの声だけが響く。
「「「「「「「「「「「はぁーーー?!」」」」」」」」」」」
 ジャジャジャジャーン(運命)
 やっと理解が追いついて車両が叫ぶ。
 皆口々に憤怒や悲哀の叫びを上げる。口汚く罵り、卑しく媚び、哀れに憂い、そのどれもに必死に隠した絶望が見え隠れする。

 バァンッ

 この世に覗いた地獄が静まる。
「皆さん、お静かにお願いします。こちらとしましても、力にものを言わせるのは控えたいと思うところでして、どうか一度落ち着いていただきたく存じます。心配なさらずとも、コレを使うなんてことはいたしませんし、最期の時間くらい思い思いに過ごしていただいてけっこうです。ただ、もう少し静かに、この最期をお楽しみください」
 声の主はあの世への特急券を振りかざして、慇懃無礼な程に丁寧な死刑宣告を突きつけると、また元の席に座った。


「どーする?お姉ちゃん、これだけ数がいれば押し切れるでしょきっと。皆もう素人じゃないし」
「うーん、買い物に行けないのは悲しいなあ」
「ちょっと、真面目に聞いてよ!理香お姉ちゃんはどう思う?」
「そうね、買い物に行けないのは悲しいわね」
「もう!」
「つまり、サッサと終わらして、予定通り買い物に興じようということなのですよね?」
「「そういうこと」」
「なーんだ、やっぱりそうなのか」
 今は小声の作戦会議中です。小声です。
「でも僕銃なんて怖いですよ」
「ドア出したらいいじゃん」
「それだ!!じゃあ、皆僕の扉で守ってあげますよ、誰も失わせません」
「榠樝さんは大丈夫なんですか?この中では唯一キード持ってないですけど」
「僕の職業は警察官ですよ?もちろんしっかり訓練を積んできたのですよ。しかも男子混ぜても一番強かったんですから。その辺のより強い自信があるのです」
「へー!まさに文武両道ってわけですね」
「犬斗君、水筒は持ってる?」
「大丈夫ですよ、絶対にいいとこ見せてやるんですから」
「よし、それじゃあ」


「戦争の始まりだ!」
「やっちゃうよー!」
「お仕置きの時間ね!」
「お縄につくのです!」
「今度こそ見せてあげます!」
「きっと守ってみせる!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

いいえ、望んでいません

わらびもち
恋愛
「お前を愛することはない!」 結婚初日、お決まりの台詞を吐かれ、別邸へと押し込まれた新妻ジュリエッタ。 だが彼女はそんな扱いに傷つくこともない。 なぜなら彼女は―――

私の居場所を見つけてください。

葉方萌生
ホラー
“「25」×モキュメンタリーホラー” 25周年アニバーサリーカップ参加作品です。 小学校教師をとしてはたらく25歳の藤島みよ子は、恋人に振られ、学年主任の先生からいびりのターゲットにされていることで心身ともに疲弊する日々を送っている。みよ子は心霊系YouTuber”ヤミコ”として動画配信をすることが唯一の趣味だった。 ある日、ヤミコの元へとある廃病院についてのお便りが寄せられる。 廃病院の名前は「清葉病院」。産婦人科として母の実家のある岩手県某市霜月町で開業していたが、25年前に閉鎖された。 みよ子は自分の生まれ故郷でもある霜月町にあった清葉病院に惹かれ、廃墟探索を試みる。 が、そこで怪異にさらされるとともに、自分の出生に関する秘密に気づいてしまい……。 25年前に閉業した病院、25年前の母親の日記、25歳のみよ子。 自分は何者なのか、自分は本当に存在する人間なのか、生きてきて当たり前だったはずの事実がじわりと歪んでいく。 アイデンティティを探る25日間の物語。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

ジェリー・ベケットは愛を信じられない

砂臥 環
恋愛
ベケット子爵家の娘ジェリーは、父が再婚してから離れに追いやられた。 母をとても愛し大切にしていた父の裏切りを知り、ジェリーは愛を信じられなくなっていた。 それを察し、まだ子供ながらに『君を守る』と誓い、『信じてほしい』と様々な努力してくれた婚約者モーガンも、学園に入ると段々とジェリーを避けらるようになっていく。 しかも、義妹マドリンが入学すると彼女と仲良くするようになってしまった。 だが、一番辛い時に支え、努力してくれる彼を信じようと決めたジェリーは、なにも言えず、なにも聞けずにいた。 学園でジェリーは優秀だったが『氷の姫君』というふたつ名を付けられる程、他人と一線を引いており、誰にも悩みは吐露できなかった。 そんな時、仕事上のパートナーを探す男子生徒、ウォーレンと親しくなる。 ※世界観はゆるゆる ※ざまぁはちょっぴり ※他サイトにも掲載

悪役令嬢は手加減無しに復讐する

田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。 理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。 婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。

病弱設定されているようです

との
恋愛
『あのようにご立派な家門にお産まれになられたのに⋯⋯お可哀想なご令嬢だそうですのよ』 なんて噂が流れているけれど、誰も会ったことがないミリー・ミッドランド侯爵令嬢。 ネグレクトなんて言葉はない時代に生まれ落ちて、前世の記憶を取り戻したら⋯⋯。 前世の記憶と共に無双します! 再開しました。完結まで続投です。 ーーーーーー 恋愛小説大賞27位、ありがとうございました(感謝) ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定。 完結確定、R15は念の為・・

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

処理中です...