長崎あやかし茶房 桃花源(とうかげん)へいらっしゃい 〜中国茶は人を救う〜 

麻麻(あさあさ)

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最終章 

5-9クリスマス、大切な人に送るお茶

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(死のう)
緑仙はそう思った。

いきなり帰って来たら5年も経っていて、彼女がいない世界に生きたって仕方ない。

(茶も無駄になってしまった)

いや、そもそもあんな根も歯もない噂を信じてこうなったのだ。

確か仙人は『お前の身体を好きにさせてもらう』
『友達になれ』と言っていた。

どうゆう事か分からない。
しかし今となってはどうでも良い。

(近くの林で首でも括ってしまおう)

そう決めると
緑仙は荷物をその場に置き、登山に持って行った頑丈な縄だけを持ち林を目指そうとした。

しかし
「やめなさいったら。縄なんか使ってもアンタ大きいから自殺なんて失敗するに決まってるの!」
とどこからともなく高い子供の声が聞こえた。

「誰だ!?」
「私よ私」

声は下から聞こえた。

猫だ!
明明が人間の言葉を喋っている。


(嘘だ!仙人といいこれは一体なんなんだ!?)
緑仙が頭を抱えていると更に驚く事になった。

なんと人間の女の子になったのだ。

「アンタに付き合ってこうなったのよ!だから責任取りなさいなのね!」
お分かり!?と彼女はいいたげだ。

「どうゆう事だ。
お前は猫だろう。それともあの仙人が関係あるのか
?」


しかし明明にもそれは分からない。

「知らないわよ。
それよりも何よ!死ぬとかありえないのよ!

確かに好きな子が亡くなるって悲しいわよ。

誰かさんに邪魔者扱いされた私の最初の主人だったんだから。

でもね、悲しいのがアンタだけとは思わない事ね!ッヒック!」

そう言いながら彼女の目も濡れている。
しばらく2人は同じ顔になり共に涙が枯れるまでそうしていた。


「私はこんなかわいい人間になったし、長生きできるこの身体を使って人生を楽しむんだから」

明明は開き直る。
流石は元野良猫。生きる事に強欲だ。

「アンタはどうするの?」
明明は緑仙に問う。


「一旦は後宮に戻らねば。それからは実家だな」

それからは早かった。
後宮は緑仙が亡くなったものと思っていた。

宦官を辞めるのは非常にもったいない事。
しかし、緑仙は意外と簡単に後宮から出る事を許され実家に帰り茶屋で父や兄の世話をしながら暮らした。

不思議だ。
どうやら後宮から出て何年も経ってるのに自身も明明も衰える気がない。

『お前の身体を好きにさせてもらう』
『ワシの友になってくれ』
つまり仙人は人間から自分の同胞にしたらしい。

「すっかり騙されたな」
そう明明に文句を言うが彼女は
「いいじゃない。
私は満足よ。

仙人は寂しかったのよ」

しかし人の命を見送ってばかりは辛い。
「だから大事な想いはなるべく伝えなきゃダメなのよ」

2人が思い浮かべる顔は同じ人だ。

家族や友の命を送り
やがて長い年月が過ぎ鎖国が解かれ島国に場所を移した。

桃花源はそのころから始まった。
人は少ないが茶を研究できる日々。


紅茶は途中からイギリスの物という認識になったが味や香り以外にも効能があるのだ。

1980年くらいになると緑仙は工芸茶作りを楽しんだ。

その頃、桃花源は人気店になった。 



そんな中、やっと長い歳月をずっと待っていた人が来た。

桃香だ。この人は桃麗(タオレイ)の祖先。
目を細め緑仙は桃香を見る。
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