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3話 屈強な男の恋占い
しおりを挟む「それにしても父様から話がなくて自殺じゃないなら連続殺人鬼がこの街にいるって事でしょう?」
つい、占い屋の休憩時間に横にいるエイレンに声をかける。
自分達が住んでる街は比較的に治安がいいのにこうも近くの街に嫌な噂が立つと暮らしにくい・・・ 。
どうやら殺されたのは役職が高い男性らしい。
「有能な方が亡くなられると、街としても衰退しますし、早く犯人が見つかってほしいものです」
とエイレンが諭す。
彼はいつもより神妙に考え込んでいた。
「エイレン?」
メイユイは彼の顔を覗きこむ。
「!いえ・・・ 。
何でもありません」
(何でもない訳ないだろう)
そうメイユイは思ったが、なにやら隣から男性の声が聞こえて来た。
「すまない。休憩中かな?」
客だ。
メイユイの店の客層は女性が多い為珍しい。
見たところ体格の良い人当たりの良い青年だ。
(今月はやけに私の商いに関しては絶好調ね)
そうメイユイは意気込み心の中でガッツポーズを取る。
「あれ、今誰かと喋っていなかったか?」
と言われてメイユイはギクッとした。
普段、人にエイレンは見えない。
「気のせいですわ。今さっき休憩が終わりましたの。
さあ、何を占いましょう」
「俺は呉 梓航(ゴ ズーケン)だ。近くの孫(ソン)様の屋敷で付き人をしている。
いやあ、実に情け無いのだが・・・ 」
孫の一族は確か金や銀細工を売って財を成した一族だ。
その付き人が占いに興味があるとは意外だ。
(何?出世運?商い運かしら?)
男の様子は身体は逞しいのに表情はどこか本当になよなよしい。
(まさか!見かけによらず恋占いかしら!?)
だとすると意外だ。
まだ男は「なんとゆうかなんだが」
と話すのが恥ずかしいのか勿体ぶっているのだ。
そんな彼をメイユイは
(こんながたいが良い方も恋の相談となると可愛らしくなるのね)
分かってますよ。早く相談なさいと頷いて客の言葉を待つ。
すると覚悟を決めたかのように彼は袖から一枚のメモを見せながら
「実は今日初めて遊郭に行くのだがどの妓女と茶を共にするのが良いと思う?」
と堰を切ったようにメイユイに問うた。
なんて事だ。
(こんなくだらない占い相談初めてだわ)
メイユイは多少引いたが相手は客だ。
「そうですね。お客様の好みにもよるのでなんともですが、それぞれどのように妓女の気を引けば良いかなら占う事ができます」
「ぜひ、お願いしたい」
メモを見せてもらい早速、筮竹(ぜいちく)占いを始める。
二人の妓女の内どちらがいいかなので数回に渡り筮竹を一本ずつ選び結果を話す。
「いやあ、実に面白い結果だった。
ありがとう」
瑞華 (ルイホァ)と詩夏 (シーシァ)。
どちらも花街では有名な看板妓女だ。
積極的に行きなさいと結果が出たルイホァと、純粋な喜びが出て来るでしょうという結果の
シーシァ。
どちらとも良い結果に客は悩んでいた。
「ズーケン様がお茶を共にする時間、どのようなひと時を共にしたいか考えられると良いと思います」
と助言をすると
「なるほど。そうゆう考え方もありだなあ」
と答えは決まったようだった。
「先日まで買い手を探して街を回っていたのだがようやく昇進した自分なりの褒美なんだ。仕事ばかり打ち込んでいたからな」
本当は女房がいるのが一番なんだがと自傷気味にズーケンは笑う。
「それは、おめでとうございます」
ただの女好きだと誤解していた。
「一つの事に打ち込めるのはすごい事ですよ。
それと、これは占い関係なく女性の気を引くコツですが」
「なんだ?」
客は興味津々とばかり耳を近づける。
「話し上手より聞き上手ですわ。女性側の話を聞いて労ったり褒めるだけで好感は得られます」
「ははっ!そうだな。
自慢話ばかりをしすぎて恨むのは男だけじゃないよな。
肝に銘じるよ」
そう言うと客は表示してある代金よりも多い金額を払い店を出て行った。
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