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3話 意外な一面
しおりを挟む昨夜は思うように寝られなかった。
メイドが運んだ朝食を食べながら眠気と闘う。
昨日のグレイの態度にアドレナリンが出たのであろう。
眠たさを誤魔化す為に深くハットを被り出発の準備をする。
時間になりグレイに習った通り扉をノックして出ると彼は「私も同行いたします」と同じ馬車に乗り込んだ。
こんなに眠い中、彼と同じ空間にいるがエメは苦痛で肩を落とした。
お互い会話がない。
彼はというと、たまに景色を見ながら時折馬車を引く御者に道順を説明していた。
小一時間ほどするとやっと城下町に着き、実に昨日ぶりだが我が家に到着すると父と母は早かった娘の帰還に拍子抜けをしたが、仕事道具を撮りに来た事情を話すと快く準備を手伝ってくれた。
店はというと昨日から久々に母が店頭に立ったらしい。
母が店内に立つのは久しぶりだ。
忙しいがお客様の接客は母も楽しいようでしばらくの間なら店を空けても大丈夫みたいだった。
無事、家から調達したトランクに見本となる宝石や
趣味でコレクションしている宝石や鉱石をトランクに詰めて再び馬車に乗る為に荷物をグレイに渡すと予想以上に彼は重たそうな表情をしたのでそれが面白く彼に悟られないように手袋で口を隠し笑った。
帰りの馬車の中での沈黙を割ったのはグレイだった。
「ウィリアム様はいつもこの様な重い宝石を持ちながら仕事をしているのですか?」
先程店から両手一杯に軽々運んでいた姿に驚いたのか彼はとても驚きながら聞いてきた。
しかし、エメの仕事は売り子と鑑定だ。
そんな訳ないじゃないと思いつつ
「たまに遠方から原石を取り寄せたり、父の代わりに手伝いでこれくらいの石は持ったりしますが」 と側にあるトランクを指を差し話すと彼は感心したのか呆れたのかため息を吐いていた。
彼の心中が読めない。
「そんなに珍しいですか?」
結局呆れられたと解釈したエメが彼に投げかけた言葉の語尾は明らかに強くなりかけた。
「いえ、私も執事長とはいえ日々の仕事である程度動いていたので、衛兵まではいかなくとも力はあると思っていたのですが・・・、もっと鍛えなければですね」と肩を落とす彼かは、よほど悔しかったのだろう。いつもの涼しい顔をしていた彼からは想像ほど今はクールで寡黙な執事長の面影は一つも感じなく感じた。
あまりの態度の変わり様に笑いを抑えきれずクスクス笑う。
その様子を見たグレイがわざとらしく咳払いをしたので「すみません」と謝ったが肩はしばらく笑いで震えていた。
行きの馬車とは違い空気が和んだのもありイメージが変わった彼に声をかける。
「グレイ様こそすごいですよ。
昨日も私なにもお伝えしなかったのにすぐにテーブルまでご用意して下さって、その・・助かりました。
あんな素敵なお部屋で仕事ができるなんて・・・夢みたいです」
つい本心を伝えたが途中から大袈裟に言い過ぎたかと気づき声が段々小さくなり最後にはついに「すみません」と頭を下げた。
すると彼は窓の外を俯きながらモルクルを意味もなく上げてみせた。
どうやら彼は照れたらしい。
「あくまで私は執事長ですので、当然といえばそれまでですよ」
と満更でもなさそうだ。
彼はまた窓越しに御者に道の指示をする。
「どうですか?宝石がどの種類か目処は立てれそうですか?」
彼は仕事ぶりが心配に思ったのかそう聞いた。
「まだ分かりませんが、ある程度候補を絞りお妃様にもそれを見ていただいて記憶と合っているかを判断したいのですが」
「かしこまりました。妃にそうお伝えいたします」
と彼は任せなさいとばかり頭を下げた。
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