後宮退魔師(巫女)は魔(キョンシー)を愛す

麻麻(あさあさ)

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7話 2度目の牢番

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私もなにかできる事をしなければー!

家から持って来た我が家に伝わる対魔について書かれた書物を読む。

しかし、そこにはこれといって手がかりはなかった。

「なんとか飲ませたわ」

霊薬を飲ませた姉は日が明けると自室に戻って来たようだった。


姉は嫌がるキョンシーをどうにか脅したのか霊薬を彼に飲ます事ができたらしい。


「姉様、すごいわ」

「ああ、そうだな」

誇らしい父の姿に胸が痛む。

(やだ、姉様にヤキモチを妬いているのかしら)

「いいか?お前も霊薬の量を間違えずに飲ますんだぞ」

真っ直ぐ私の目を見る父に「はい」と返事をする。



今宵、2度目の牢番に私は出向いて行った。

「今夜はそなたか」

牢番をした初日同様、憎まれ口を叩く彼に腹が立つ。

しかし、相手にはしない。

側にして見ると彼は動きすらぎこちないが直立していた姿から壁に背を向けあぐらをかいていた。

その姿を見てホッと安堵した。

早速、裾から取り出した霊薬を彼に渡そうとした。

「飲まぬぞ」

彼はそれだけ言うとまたそっぽ向いて一向に口を聞こうとはしない。

しかし、いつまでもナメられる訳にもいかない。

が、姉は脅していたといったが一体どうやったというのか・・・。

シーンと初日同様、地下牢は静寂に包まれる。

(どうしよう?会話をするなと言ったのは私だ)

悩んだ末、私は筆談をしようと道具箱を取り出し墨を取り出した。

すると

「ぅう・・・!止めろ。それをしまえ」

と彼は苦しそうに悶え始めた。

苦しそうだ。

(どうしよう!・・・そうだ霊薬!
でもその前に)

「すみません。これはお白湯です。
お飲みになって下さい」

牢越しに渡そうとするが彼は警戒して口を開こうとしない。

確かに私の事は信用できないだろう。
まずは彼の前で私が白湯を飲む。

なんともない姿を見せると彼は驚いたのか覚悟を決めると私から茶碗を取り白湯を飲んだ。

少し彼が蒸せたので
「大丈夫ですか?」
と駆け寄りたいが牢が阻みそれを許さない。

「よせ、私は一応汚れなのだろう」
という彼は元は高貴なお人なのにか弱く見えた。


「昨日も飲んでお分かりでしょう。なぜ分かっていて素直にすぐ飲まないのです?
それともなんですか?私が持って来た物は信用なりませんか?」

我ながらめんどくさい女だ。

「どうしてそうなる。
そなたの父といい、姉といい強引すぎる。

その薬は確かに効くが水なしで飲まされるこちらの身になってみろ!」

と言われ拍子抜けした。

「それだけですか?」

「ああ、それだけだ」

呆れ顔で言われ安堵すると自然と涙が出ていた。

任務が失敗したかもしれないという恐怖と今の安堵があって気が動転したのだ。

(いけない。泣き止まなきゃ)

弱みを見せる訳にはいかない。

袖で涙を拭くと彼は
「すまなかった。
薬は飲むからさっきの湯と一緒にそこに置いといてくれ」

そういうと彼はまた私に背を向けて座る。

「そのまま飲めば良いですのに」

「君は巫だろう。汚れには触らない方がよいのではないか?」

「!」

(気遣ってくれている?)

「仮にも生きていた頃は私も節目事に儀式には参加したし、汚れには気をつけろと言われ過ごしてきた。占いの結果を守ったり、それはそれで窮屈だったが守ってきた意味はあったのだろう。
まあ、自身が汚れになってしまったが・・・」

「汚れだなんて言わないで!」

自分の口から出た言葉にハッとした。

「私を庇うのか?」

「いえ、そうゆうわけでは」

なんだか混乱してきた。

(いけない。しっかりせねば)


言葉につまる私に彼は
「そなたは私と会話はしないのだろう。
話相手にならずともよい。
私が勝手に喋る」

そう言って彼は語り出した。

「死ぬ前の記憶だ。
肝心な記憶が抜け落ちている。
皇帝・・・、兄上に手紙で叱られた。 
それがよほど応えたのか、普段はしないが酒を大量に飲んだのは覚えている」

「え、浴びるようにですか?」

そんな量を飲んで止める者はいなかったのだろうか?


「こら、今は私が話している。静かに聞け」

とあえて彼は思ってもいない口ぶりで叱る。

「気づくといつのまにか喉が苦しくなり、次に目を覚ますと検視官が悲鳴をあげていた後、衛兵や導師に囲まれた。墨の匂いが苦手なのはよほど兄の手紙が悔しかったのだろう・・・」

「皇帝とは、その仲が悪かったのですか?」

自分から質問したのは気になった点があったのだ。

彼は私が自分から口を開いたからか質問の意図が分からなかったのか少し驚いたが

「いいや、むしろ尊敬していた。
政治や様々な事を語り合う仲だ。

兄も私の言い分を時に聞いてくれ仲は良かったと思っていた。

たしかあの時も税金の使い道で意見した。
宮菅の税金の少しを民に還元してはと。
兄上も私の意見に賛成してくれていたと思ったが最後は聞き入れてもらえず手紙をもらったかと思えば却下された。

議会に掛けたが通らなかったのだろう」

「皇帝はなぜ反対したのでしょう?」

「さあな、議会には皇帝や官僚が参加して取り決める。
おそらく後押しが足りなかったのであろう。
まあ、民に還元するなら自分達に税は使いたいのは分かる。

しかし、国の治安はそれでは悪くなる一方だ」

確かに私達の国は安全かと言われたらそうではない。

私達導師の呪術、祈祷に頼っても助からない命もあるのだ。

しかし、弟と仲の良い皇帝が、民を想う皇帝がなぜ弟君の意見を聞かなかったのだろう?

まさか、誰か助言とばかりそそのかした人物がいるのだろうか?


考えがまとまらない。

それに私は街一番の導師の遣い。
政治には加担できない。

自分の無力が悔しい。

「そなたがそんな顔をするな」

「でも、あんまりです」

彼の過去を知り歯痒かった。

「皇帝もなにか考えがあったはずです。
私が意見するのは失礼ですが、貴方さまが言うように誰かが宮菅から税を取ると後宮の士気が落ちると言えば今回税を上げるのは見送ろうとなるのはあり得る話です」

「そうだな。こんな事を言っては兄上には悪いが私が皇帝だったら忖度なしに政治をするのだがな」

「良い兄や姉がいると下が不憫ですね」

「全くだ」

そう言って私達はいつの間にかたまらず笑いあった。

「そなたの姉上はなかなか恐ろしい女だ。
悪いことは言わない。
なんとかしてそなたが明日も来てくれ」

駄々をこねる彼が面白かったが

「明日は父が見張りです。
私には権限がありませんので父にその旨申し付けて下さい」

「ああ、高貴な身分は辛いな。何にするも上の許可が必要だ」

「全くです」

そう笑うと彼は優しい目で私を見ていた。

「こんなに自分の事を話せた女はいない。
私がもう身分なんて関係ない身だからか
そなただからか・・・。
生きてる内にそなたに会いたかった」

そう言われ胸がズキッと痛んだ。

「もし次の満月になっても私が元がキョンシーでい続けたらそなたに剣で斬ってほしい」


彼にそう言われ私の方が胸を刺されたように動揺した。


「霊薬は効いております。次の満月までには貴方さまは正気を取り戻しますわ」

霊薬の効果は絶対だ。

その証拠に彼の目には光が宿っている。

明らかに出会った頃とは違う。



あとは、彼の死因が分かればー!
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