【R18】忘却令嬢はあなたの記憶に残りたい

麻麻(あさあさ)

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プロローグ 忘却ゆえの目覚め

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こんな力、あなたと出会うまでは呪いだと感じていた。 


「フェリックス様!フェリックス様・・・!」

呼びかけられた彼は腕や胸から血を流して一刻も早く手当てが必要だ。

「止血しなきゃ!」

私はドレスのすそを引き裂くと彼の傷口をなんとか縛る。

「アリア・・・、無事でよかった」
「喋らないで。
傷が開きますから!」

そう言うと彼は従った。

だが彼の顔は痛みに苦しんでいる。

当たり前だ。

ついさっき獣に襲われたのだから。

(せめて、痛みが無くなれば!)

いつもだったら躊躇する呪文を私は唱える。

私達だけが使える特別な呪文だ。

「我が忘却の女神よ。
今こそ血族の力となってこの者の苦しみを除け!
アルケー・オギルド!!」

詠唱と共に彼の身体は優しい光に包まれた後、安らかに呼吸をしていた。

「よかった・・・。痛っ!」

どうやら私も足を捻って他にも怪我をしたらしい。

「困ったわ。
なるべくこの森を早く出ないと」

そうして彼の怪我を治す事が先決だ。


「ニャーン・・・」
茂みから聞き慣れた動物の声が聞こえる。


「ミネット、無事だったのね。
よかった」

ミネットと呼ばれた猫はフェリックスの屋敷で飼っている猫だ。

ミネットは主人のフェリックス様と私を交互に見て心配そうに彼の頬をペロペロ舐める。

彼女も主人の横たわる姿が心配みたいだ。

「ミネット」
名前を呼ぶと彼女はお利口に側に来る。

「誰か人を呼んできて。
フェリックス様を助けなきゃ」

彼女はピンとした姿勢でまじまじと私を見ながら話を聞いたように思うとニャッ!ひと声鳴き私達を見ると夜の森を駆け出した。


彼女はその賢さでいつも屋敷のメイドを呼ぶようにもしかしたら人を探して来てくれるかもしれない。


私は一縷に賭けた気分になった。


しかし、そうこうしている間に私は気絶したらしい。



「お嬢さん!お嬢さん!」

ハッと目を覚ますと私は白いベッドの上にいた。

「よかった。
目が覚めて」

そう微笑む白衣を来た人を見た途端、私は大きな診療所に無事に連れられたのかと理解した。


「あの、フェリックス様!夫は無事ですか?」


「フェリックス?
ああ、あの方はあなたの旦那だったのか」
「はい」
すると医師は部屋から出ると誰かを呼んだ。 

中に入ってきたその人を無事を祈っていた彼だ!

「フェリックス様!」

(よかった!無事だったのね)
と思ったが違和感を感じた。

(待って。確か彼は大怪我をしたはずよ!?)

どうなってるの?

フェリックス様も私を見てなぜかよそよそしい。

そして、彼は信じられない事を口にした。

「失礼・・・。
あなたはどこのご令嬢だろうか?」

「!!」

どうやら彼は私の記憶が無いみたいだ。

(一体、何が起こっているの?)

彼と医師が何かを話しているけど会話が頭に入ってこない。

代わりに私の頭に浮かんだのは、彼とのこれまでの事だった。
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