【R18】忘却令嬢はあなたの記憶に残りたい

麻麻(あさあさ)

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1話 忘却令嬢の縁談

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「私に縁談ってお母様、本当ですか?」

アスター家の屋敷の一室で珍しく母に呼ばれたとおもったら私、アリア・アスターは縁談話を持ちかけられた。

「ええ。
直々にお相手からお声掛けされたのよ。
悪い話じゃないと思うわ」


母が言うにはお相手は南にあるブロワの領地を治めるフェリックス・ブロワという伯爵様だ。


名前を聞いて私はふと先日に行った社交界で知り合った彼を思い出した。



確か彼は私より6つも年上だがヘーゼルの髪と瞳のを持ちながら他の紳士よりも落ち着いているように見える彼を密かに慕う令嬢もいた。

(確かに彼は素敵だわ)

でも、だからこそ分からない。

私以外にも彼は他の女性達に好意を寄せられていたし、たいして話らしい話もしていなかったはずだ。

心当たりはダンスの後に令嬢達にスイーツを勧められて口にして辛そうにしてたから胃薬をいらないかと聞いた後に少し「私達の血族が使える力」を密かに使い介抱しただけだ。

(まさかそれで気に入られたのかしら?)
でも、私だって普段から甲斐甲斐しい訳ではないし
無闇に力は使わない。

古くからの屋敷の使用人は私の力を知って恐る人も多い。


それにー、
(私と結婚しても得なんかしないわ)


そんな考えをお母様は汲んだのか
「アリア、会うだけ。
1度会ってお話ししてみたら素敵な人かもよ」


まるで人見知りの女児をあやすように声を掛ける。


「あなたは人よりも優しいの。
もっと自信を持たなきゃいけないわ」

(そうかしら?)
「この力」を知ったらどんな人でも私から離れていってしまうと危惧しているのに。


私達、アスター家には秘められた力がある。
女性だけがそれぞれ違う力を持っていてそれを私達は「女神の加護」と言っている。


例えば、上の姉達は結婚しているが1番上の姉から美の女神の加護、2番目の姉は豊穣、3番目は力の女神の加護を受けている。


その加護の力にかかれば人々は美の加護を受ける美しい姉を愛て、豊穣の加護には実りに感謝を、力の加護に頼もしさを覚え勝負事に勝つ為に崇めるのだ。

だからこそお姉様達が屋敷にいる時は肩身が狭かった。


例えば出掛ける際よそ行きに着替えれば「美」を司る姉に
「アリアったら地味なんだから。
着替えたら?
あまり側を歩かないでよね」

また、豊穣を司る姉は私が自分で生けた花を枯らした際には
「花の管理くらいちゃんとしなさい」
と小言を言われ、力を司る姉は
「優柔不断ね!」
と嗜められる。

正直に姉達が嫁いで屋敷が私だけになったからせっかく活き活き過ごせていたのに、だ。

きっと彼女達はそれぞれの嫁ぎ先でもその力を持ち合わせて幸せに過ごしているだろう。

でも
「忘却」なんて・・・。

せいぜい怪我の手当や慰めの為に辛い記憶を除くだけの気休めだ。

加護は自身にも働くが使いたいと思った事もないし
人にかける事もない。

(こんなの本当に加護なのかしら?)

「アリア、どうかしら?」
お母様に問われ、私は正気に戻る。

(そうだったわ。
縁談の話をしているんだったわ)

気にかける母にノーとは言いにくい。

「分かったわ。
お母様、会ってみるだけなら」

そう返事をすると母はほっとしたようだ。

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