【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました

東野あさひ

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2章

19話「交錯する運命、抗う意志」

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 控室に戻った私は、なおも体の奥でうねる記憶の余韻を感じていた。アムネリスの声、血の歴史、儀式を拒絶した衝撃。そして、隣にはレヴィア――同じく肩で息をしている。

 控室の外はすでに騒然としていた。鐘の音、怒号、結界を強化する詠唱。王都の窓から空を見れば、裂け目がさらに拡大し、黒い霧が王都の広場や城下町を覆い尽くしつつある。

 「ノクティアさん!」
 エイミーが駆け寄り、私の肩を揺する。
 「外が……王都も、セレスタも、砦も、あちこちで結界の崩壊や魔素の暴走が起きてるんです!」

 レオナートも駆け込んでくる。「ノクティアさん、急ぎ王都の中央結界へ。セレスタ使節団も合流地点へ向かっています!」

 私は頷き、立ち上がった。
 (“血の呪い”は、いよいよ世界規模の災厄として現実化している……)

 立ち上がろうとした瞬間、隣でレヴィアが私の手をそっと握った。

 「私は……もう、逃げない。ノクティア、私も共に戦う。これが私の意志だ」

 驚きと、嬉しさと、どこか誇らしい気持ちが混じる。
 「ありがとう、レヴィア。……一緒に終わらせよう、この呪いを」

* * *

 私たちは王都の中央広場へと走った。既に空は紫色に染まり、結界の隙間から無数の黒い稲妻と闇の塊が降り注いでいた。王都の術士たち、セレスタの使節団、砦の兵士たち――みなが戦線に加わり、絶望的な状況に抗っている。

 「ノクティア殿!」
 「ご指示を!」
 砦兵士や王都術士たちの目は、迷いながらも私に向けられていた。

 私は深く息を吸い込み、自らの中心に意識を集中した。

 (私は、もはや“無能”ではない。私の選択が、皆の未来を導く――)

 「王都班、広域結界を南門から再展開! セレスタ班、結界核の魔力安定をお願いします! 砦兵士は、被害住民の救出を最優先!」

 私の指示が次々に伝令され、皆が走り出す。

 「ノクティアさん!」
 エイミーが私の横で魔法陣を展開しながら声をかける。「魔素の流れが……どんどん歪んできてる! このままじゃ現実そのものが飲み込まれちゃう!」

 「大丈夫、エイミー。私たちで必ず止める」

 レオナートも剣を抜き、背中を預けてくれる。「この戦い、王都とセレスタの名誉をかけて、共に!」

 私たちは三人で背中を合わせ、襲い来る魔物の群れ――
 異世界の核から生まれた獣たちと戦い始めた。

* * *

 激戦のさなか、広場の中央、王城の真上に裂け目が開く。

 そこから、銀髪の女が舞い降りる。
 アムネリス――始祖、セフィラの本流。

 その足元には、黒い結晶がうねり、魔素の波動が世界そのものを引き裂くほど激しい。

 「ノクティア、レヴィア。選ぶがいい。お前たちの“希望”が真実であるなら、この世界の理(ことわり)を超えてみせよ」

 声は静かだが、鋼の意志が籠もっていた。

 「これ以上、犠牲も絶望もいらない!」
 私は杖を構え、結界魔法を最大展開する。「皆、援護を!」

 「ノクティア、共に!」
 レヴィアが私の隣に並び、初めて完全な同調を見せる。
 二人の魔力が同時に解き放たれ、黄金と蒼の魔法陣が夜空に浮かぶ。

 「“守るため”の魔法を――この手で!」

 私の足元から光がほとばしり、調和と融合の魔法――《セフィラ・インテグラーレ》が世界を包む。
 レヴィアの力と私の力が重なり合い、暴走していた魔素を巻き込みながら、大地そのものが震えた。

 「お前たちの覚悟、その目で見届けよう――」
 アムネリスの瞳に一瞬、孤独の色がよぎる。

 だが、彼女は最後の力を振り絞り、黒い核を解き放つ。
 「ならば、私を超えよ!」

 異世界の裂け目から、魔物の大群――かつて見たこともない異形が現れ、王都を包囲する。

 エイミー、レオナート、砦兵士、セレスタの術士たち、王都の守備隊、みなが一丸となって戦線を支え始める。

 私は、隣で全力を振り絞るレヴィアの顔を見つめた。

 「今こそ、私たちの意志を示す時!」

 「……行こう、ノクティア!」

 二人で同時に詠唱する。

 「《律動解放・セフィラ・ラグナレウム》!」

 黄金と蒼の閃光が夜空を貫き、魔物たちが次々と浄化されていく。

 けれど、異世界の核はなおも裂け目に残り、アムネリスが静かに私たちを見つめていた。

 「お前たちの希望が本物なら、私を超えてみせよ。……そのとき、私の孤独も、すべて解き放たれるだろう」

 彼女の瞳の奥に、かすかな哀しみと救いへの渇望が混ざる。

 広場の空は光と闇に裂け、決戦の最後の舞台が整っていく。

 私は強く杖を握りしめ、皆の方へ向き直った。

 「これが、最後の戦い。皆――一緒に、未来を掴みに行きましょう!」

 戦火の轟音の中で、私は決して諦めないと心に誓った。
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