【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました

東野あさひ

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5章

67話「未来への誓い」

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 春の陽が、砦と村にあふれるように差し込む朝だった。
 昨夜の祝祭の熱気がまだ石畳や花壇に残り、子どもたちの笑い声が早くも広場に響き始めている。

 奇跡の花はその中央で、なおも静かに銀色の光を放っていた。
 その花びらには、みんなの願いと涙が確かに刻まれている。

    * * *

 ノクティアは、砦の食堂にゆっくりと歩を進めていた。
 眠りから目覚めた体は、まるで生まれ変わったような軽やかさがあった。

 「おはようございます!」
 「ノクティア様、本当に元気になったんですね!」

 エイミーがパン籠を手に、レオナートはコップを片手に、
 子どもたちは手を振りながら駆け寄ってくる。

 ノクティアはみんなを見回し、大きく深呼吸した。

 「――みんな、ありがとう。私、ちゃんと“これからも生きていく”ことを約束します」

 その言葉は、食堂にいた全員の心に、しっかりと刻まれた。

 エイミーは感極まったように涙を拭い、ノクティアの手をぎゅっと握る。

 「本当に……よかった。
 私、ずっとノクティアさんみたいに、誰かを助けられる人になりたいって思ってました。
 これからは、私も、もっと強くなります!」

 レオナートも照れくさそうにうなずいた。

 「俺も同じです。
 ずっと、団長やノクティアさんの背中を見てきました。
 これからは自分の言葉で、村のみんなを守れるようになりたい」

 アリシアが肩をすくめて笑う。

 「私も……旅の剣士だけど、この砦が第二の故郷になりました。
 いつでも戻ってこられる場所があるって、こんなに心強いことなんだって初めて思えたわ」

 食堂の空気が自然と和らぎ、
 砦の人々や村の仲間たちが、それぞれに新しい夢や希望を語りはじめた。

 「将来は、自分の畑を持ちたい!」
 「魔法の学校を作るのが夢なんです!」
 「お菓子職人になりたい!」

 ノクティアはみんなの話に耳を傾けながら、何度も小さく頷いた。

    * * *

 その日の昼下がり、砦の花壇では春の陽射しに包まれながら、
 子どもたちとエイミーが花の世話をしていた。

 レオナートは剣の稽古をつける若者たちに混ざり、アリシアも手伝っていた。

 ノクティアは一人、奇跡の花の前に立つ。

 (私はここで、みんなの夢や希望が芽吹くのを、これからも見守っていきたい)

 花びらに手を伸ばし、そっとささやく。

 「生きていてよかった。
 これからも、何度でも新しい春を迎えてみせる。
 ここが、みんなの“帰る場所”であり続けますように――」

    * * *

 夕暮れ。
 砦の塔の上、やわらかなオレンジ色の光が村と森を照らしていた。

 カイラスがゆっくりと階段をのぼり、ノクティアの隣に立つ。

 「ここにいると、全部が見渡せるな」

 「ええ。ここが私の大切な場所になったの。
 ……でも、カイラスとなら、どこにいてもきっと大丈夫」

 カイラスは珍しく、少しだけ照れた顔で微笑んだ。

 「最初で最後の恋――なんて言ってたけど、
 これからは“最初で最後じゃない”恋にしよう。
 何度でも、お前に恋するから」

 ノクティアは、あふれる涙をこらえながら、
 「はい……私も、何度でも、あなたを好きになるわ」と静かに微笑んだ。

 ふたりは寄り添い、春の風の中で新しい約束を交わす。

    * * *

 夜。
 砦の窓からは、歌声と灯りがこぼれていた。

 ノクティアはカイラスの手を握り、
 「私、これからもたくさんの春を、一緒に生きていきたい」と願う。

 カイラスはそっとノクティアの肩を抱き寄せる。

 「どんな未来でも、お前となら越えていけるさ」

 ふたりの視線の先では、奇跡の花が再びやさしく揺れていた。

 砦と村の人々も、みんながそれぞれの“未来”を胸に刻み、
 “生きること”と“夢を持つこと”の喜びを、夜空の星に誓っていた。

    * * *

 ――こうして、春の奇跡は新たな約束となり、
 ノクティアと仲間たちは、これからも続く日々を
 笑顔と希望で紡いでいく。
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