【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

東野あさひ

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94話「弟子たちの反乱!?」

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 ――その日は、村の訓練場がやけにざわついていた。

 

 「リオ師匠、ちょっと話があります!」
 勢いよく飛び込んできたのは、弟子のリクとナナ、そして最近育て始めたばかりの新世代精製師たちだ。
 年齢は十代半ば、勢いと自信だけは人一倍。

 

 リオはカード整備の手を止め、顔を上げた。
 「どうした、そんなに息巻いて」

 

 「……俺たち、もう“弟子”じゃありません」
 リクの瞳が真剣だった。
 「俺たちの時代が来たんです。師匠のやり方は古い。もっと攻撃的で、もっと派手な精製をすべきです!」

 

 「ちょっと待って、それは……」
 横でナナも頷く。
 「だって、最近は平和すぎるんですよ。私たちはもっと強くなれる。師匠みたいに安全第一じゃなく、挑戦したいんです!」

 

 訓練場の空気が張り詰める。
 ミナやユリエルたちも駆けつけてきたが、若手たちの表情は固い。

 

 ◆

 

 「……そうか。じゃあ試してみるか」
 リオは静かに言った。

 

 「試す……って?」
 「言葉だけじゃなく、実力で示せ。お前たちの“新しい時代”とやらを」

 

 その提案に、弟子たちの瞳が輝く。
 「いいですね! じゃあ、模擬バトルで!」
 「俺たち四人で、師匠と勝負します!」

 

 ミナが心配そうに囁く。
 「本当にいいの? 手加減しないと、弟子たち傷つくかも」
 「分かってる。でも、これは必要なことだ」

 

 ◆

 

 模擬バトルは、訓練場の中央リングで行われた。
 見物人として村人や他の精製師たちが集まり、ちょっとした祭りのような雰囲気になる。

 

 「行きます!」
 リクが一枚目のカードを精製。雷を纏った狼型幻獣〈雷牙〉が飛び出す。
 ナナは氷の鳥〈氷翼〉を呼び出し、空から奇襲。

 

 若手二人の動きは速く、攻撃の連携も取れている。
 さらに後方から二人の新人が巨大な土のゴーレムを精製し、防御を固めた。

 

 「……なるほどな。力はついてる」
 リオは微笑み、カードを二枚同時に展開する。
 現れたのは炎の竜と風の剣士。二体が連携して敵の攻撃をいなしていく。

 

 観客席から歓声が上がる。
 しかし、弟子たちは引かない。むしろ攻め手を増やし、リオの防御を崩そうとした。

 

 「これが俺たちの時代だ!」
 リクの声に観客も沸き立つ。

 

 ◆

 

 だが、その勢いが裏目に出た。

 

 雷牙と氷翼の連携が乱れ、氷の翼が雷撃を受けて暴発。
 土のゴーレムも動きを止め、戦場が混乱に包まれる。

 

 「おい、集中しろ!」
 「だって……お前、突っ込みすぎ!」
 弟子たちの間に言い合いが始まった。

 

 その隙を突き、リオの炎竜が雷牙を絡め取り、風の剣士が氷翼の翼を切り裂く。
 あっという間に戦況は逆転した。

 

 最後の一撃――リオはあえて全力を出さず、カードを消す。

 

 「……勝負ありだ。お前たちの力は本物だ。でも、それだけじゃ足りない」

 

 弟子たちは肩で息をしながら顔を上げた。
 「足りないって……何が?」

 

 「お前たちの言う“俺たちの時代”は、仲間の時代でもあるはずだ。力を誇るだけじゃ、誰も守れない。バトンは、仲間と一緒に持っていくんだ」

 

 その言葉に、リクもナナも黙り込む。
 やがて、リクが苦笑した。

 

 「……やっぱ師匠には勝てませんね」
 「でも、次は本当に勝ちますから!」
 「その時は喜んでバトンを渡すよ」

 

 ◆

 

 夜、ミナと並んで帰る途中。
 「バトンを渡す覚悟って、少し寂しい?」とミナが尋ねる。

 

 「……まぁな。でも、俺もいつまでも先頭にいるわけじゃない。新しい精製師が育って、この世界を守ってくれるなら、それが一番だ」

 

 ミナが微笑む。
 「じゃあ、その日まで一緒に走ろうよ」
 「もちろんだ」

 

 月明かりの下、二人は静かに歩き出した。
 弟子たちの笑い声が、まだ遠くから聞こえていた。

 

 ――次の時代は、きっと明るい。
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