【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

東野あさひ

文字の大きさ
96 / 101

96話「管理庁崩壊!?大改革の波」

しおりを挟む
 朝の村の広場に、ざわめきが満ちていた。
 鍛冶屋のハーリンも、屋台のマリナ婆さんも、農家のルーガ爺さんも、皆が手を止めて同じ一点を見つめている。
 そこでは王都発の速報を伝える幻灯板が設置され、緊張感のある声が響いていた。

 

 ――「本日、王都管理庁の幹部による大規模な不正が発覚。偽カード流通、暴走幻獣の闇取引、さらには庁内の汚職が明るみに……」

 

 「……やっぱりな」
 リオは、腕を組みながら小さく呟いた。
 以前から気配はあった。だが、これほど大規模な腐敗だとは思わなかった。
 横に立つミナも、眉をひそめる。
 「これじゃ……カード社会の信頼が、一気に崩れちゃう」

 

 子どもたちの遊び声すら消え、村全体が重苦しい空気に包まれる。
 そんな中、弟子のリクが駆け込んできた。
 「師匠! 王都から手紙が……“希望精製師連盟”に、すぐ来てほしいって!」

 

 ◆

 

 王都の連盟本部。
 広間には、リオ、ミナ、ユリエル、カイ、ティアナ、アール、レイナといった仲間たちが顔をそろえていた。
 中央の円卓には、各地の市民代表や精製師組合の長老たちも座っている。

 

 「……今回の件で、管理庁は事実上機能を失いました」
 低い声で説明したのは、連盟の副代表だった。
 「このままでは、カード流通も幻獣管理も無秩序になります」

 

 アールが机を叩く。
 「じゃあ、俺たちで新しい組織を作るしかないだろ!」
 「そう簡単にはいかないさ」カイが冷静に首を振る。「権力の空白を狙って、裏社会や武装勢力が入り込む危険がある」

 

 ミナは、テーブルに置かれた地図を見つめた。
 王都だけでなく、各地方に管理拠点を作り、精製師や職人、市民が共同で守る仕組みが必要だ――頭の中で、その設計図が浮かび上がっていく。

 

 「……市民も精製師も、同じ土台で協力できる仕組み。
 “英雄”だけじゃなく、普通の人も参加できる守りの輪……それを作ろうよ」
 ミナの声は柔らかく、しかし確固としていた。

 

 リオはそれに頷く。
 「希望精製師連盟を中心に、各地の職人や農家、教育者も巻き込むんだ。
 “戦う”だけじゃない、“支える”ための組織を」

 

 ◆

 

 翌日から、リオたちは奔走した。
 鍛冶屋ギルドでは、幻獣装備の適正検査制度を提案。
 屋台組合では、カード利用の安全ガイドラインを配布。
 学校には、子ども向けの「正しいカードの使い方」教室を導入。

 

 各地で市民集会を開き、管理庁の闇を説明し、代わりとなる新制度の草案を配る。
 「庁の不正は、俺たち全員で監視する」
 リオは壇上でそう言い切った。
 広場からは拍手が沸き、年配の女性が涙を拭いながら頷く姿もあった。

 

 ◆

 

 だが、すべてが順調ではなかった。
 一部の旧管理庁職員は、自分たちの権限を手放そうとせず、各地で妨害を行った。
 「市民が制度を決めるなんて混乱を招くだけだ!」と怒鳴る者もいた。

 

 その夜、リオは宿舎の一室で仲間と作戦会議を続けていた。
 「強引に進めれば反発も強まる。でも、時間をかければ裏社会が広がる」
 ユリエルの分析に、誰も反論できなかった。

 

 ミナがぽつりと言う。
 「……だったら、“物語”を作ろうよ」
 全員が顔を向ける。
 「ただの制度じゃなくて、人々が“自分もその一部だ”って思える物語を。
 希望連盟が、子どもからお年寄りまで、みんなの夢や願いを叶える存在になれば……自然と支持は広がる」

 

 リオはゆっくりと笑みを浮かべた。
 「……そうだな。バトルだけじゃない、俺たちの物語を」

 

 ◆

 

 数日後、王都中央広場で「新秩序宣言」の集会が開かれた。
 リオ、ミナ、そして各地の代表たちが壇上に立ち、管理庁に代わる新組織――
 “希望連盟統括会議”の設立を宣言する。

 

 「この輪は、戦う者だけのものじゃない。
 農家も、鍛冶屋も、屋台も、学校も……この世界を支えるすべての人のためにある」
 リオの言葉に、人々は立ち上がり、声を合わせて誓いの歌を歌った。

 

 その光景を見ながら、ミナはそっと呟いた。
 「これで、少しは未来が守れるかな」
 「いや……ここからが始まりだ」
 リオは彼女の手を取り、空を見上げる。
 夕焼けの向こうには、まだ見ぬ課題と、新たな旅路が広がっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

処理中です...