【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

東野あさひ

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第16話「伝説への挑戦」

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 春も終わりに近づき、王都リュミエールの空は澄み渡っていた。
 事件や葛藤を乗り越えたリオと仲間たちは、今、新たな冒険の高鳴りに胸を躍らせていた。

 

 「いよいよだな……伝説カード精製イベント!」

 

 カイが興奮気味に拳を握る。その視線の先には、王都の東、切り立つ断崖の先に広がる、苔むした巨大な石造遺跡があった。
 古の魔術師たちが築き、数百年もの間、幻獣や強者たちの伝説を記録してきた聖地――それが「アルカナ神殿」だ。

 

 今年の精製イベントは、このアルカナ神殿で行われる。王都のギルドや管理庁も後援し、各地から選りすぐりのクリエイターたちが集結する一大イベントだった。

 

 「本当に、あんな場所で精製できるのかな……?」

 

 ティアナが不安そうに自作カードを握りしめる。
 ユリエルは逆に、澄んだ瞳で堂々と言った。

 

 「最高の舞台よ。遺跡の仕掛けや幻獣を突破できた者だけが、“伝説級”の新カードを精製できるって噂だもの。リオ、準備はできてる?」

 

 「もちろん!」

 

 リオはグラン=ヴァルドのカードを胸元で確かめた。
 竜の声が、静かに、だが確かに響く。

 

 『この地は、私にも懐かしい記憶がある。共に進もう、リオ――新しい伝説を、ここで刻むのだ』

 

 *

 

 神殿の正門には、すでに大勢のクリエイターたちが列を成していた。
 ギルドの旗がはためき、管理庁の役人たちが厳かにルール説明をしている。

 

 「参加者は各自のチームで神殿内部を探索、幻獣バトル・仕掛け突破を経て、最奥で“未精製の伝説”を見出し、新カードとして創造せよ。精製されたカードは公認申請の対象となる」

 

 リオたちは円陣を組んだ。

 

 「ここまで来たら、全員で最後まで行こう」

 

 「当然だ!」カイが満面の笑みを見せる。

 

 「私はカード研究者として、“未知”の現場に立ち会いたい」ティアナもやる気を見せる。

 

 ユリエルとシュトラもそれぞれ自分のカードデッキを手に、静かな闘志を燃やしていた。
 ミナはリオの手を握りしめ、微笑んだ。

 

 「絶対に、帰ってこようね」

 

 *

 

 神殿の中は薄暗く、冷たい空気が漂っていた。
 壁面には古代語の碑文、封印された扉、そして謎めいた魔法陣が浮かんでいる。

 

 最初の仕掛けは、石像の幻獣たちによる「審判の間」だった。
 侵入者の“魂”を試すべく、石像が一斉に動き出し、問いかける。

 

 「お前たちは、何のために力を求める?」

 

 リオは迷いなく答えた。

 

 「誰かを守るため。仲間と共に歩み、未来を変えるためだ!」

 

 その答えに呼応するように、石像は静かに通路を開いた。

 

 「見事だね……」ティアナが息を呑む。

 

 次の部屋では「幻獣バトル」が待っていた。
 現れたのは伝説の守護獣「翠玉のバジリスク」。巨大な体躯と、全身を覆う緑の鱗が威圧感を放つ。

 

 「来るぞ――!」

 

 リオはグラン=ヴァルドのカードを握り、カイは「雷牙狼ルガノス」を即座に召喚。
 ユリエルは氷魔法で援護、シュトラは防御スキルで仲間を守る。
 ティアナは連鎖スペルでバフを重ね、ミナはサポートカードでリオを支える。

 

 バジリスクの「石化の眼光」がカイを襲うが、ユリエルの「氷盾」が間一髪で受け止める。

 

 「今だ、リオ!」

 

 リオは心でグラン=ヴァルドに叫んだ。

 

 (俺たちの力を見せよう!)

 

 『応じよう――“封印炎”!』

 

 竜の咆哮とともに、炎がバジリスクを包み込む。
 仲間たちの連携で攻撃と守りを重ね、ついにバジリスクは静かに倒れ伏した。

 

 「やった!」

 

 だが、神殿の奥はさらに苛烈だった。
 崩れかけた橋を渡り、霧の迷宮を抜け、幻影に惑わされる「記憶の回廊」もあった。
 途中で体力を失いかける場面もあったが、互いに支え合い、励まし合いながら進む。

 

 「一人じゃ絶対に無理だったな……」カイが息を切らすと、ティアナも「仲間って、すごい……」と微笑む。

 

 やがて最奥、「伝説の祭壇」にたどり着く。
 そこには、巨大な鏡面の石碑と、古びたペン、そして“未精製のカード”が浮かんでいた。

 

 「……ここが、最後の試練だ」

 

 祭壇の前に立つと、不思議な魔法がリオたちの魂を問いただす。

 

 「お前の“本当の願い”は何だ?」

 

 リオは迷わず言った。

 

 「俺の願いは――みんなと共に、新しい時代を切り開くこと。希望をカードに変え、世界をもっと優しく強くすること!」

 

 その瞬間、未精製のカードが眩い光を放ち、リオの心と共鳴する。
 仲間たちも次々に自分の想いを語り、光の中でそれぞれの“物語”を封じ込めていく。

 

 リオはカードに手を伸ばし、深く息を吸う。

 

 (今までの旅、出会い、苦しみも喜びも――全部、このカードに込めるんだ)

 

 静かな奇跡の瞬間。

 

 「来い――《希望の黎明竜(ドーン・ドラゴン)》!」

 

 手のひらで白銀のカードが形を成し、そこには翼を広げる新たな伝説の竜の姿があった。
 グラン=ヴァルドの魂も、仲間たちの願いも、そのすべてが新しい伝説として記されたのだ。

 

 仲間たちが歓声を上げる。

 

 「やったな、リオ!」「すごい……本当に伝説カードが……!」

 

 グラン=ヴァルドが心で微笑む。

 

 『お前は、もう迷わない。お前こそが、私たち幻獣と人間の新しい希望となる』

 

 リオは涙をこらえながら、カードを胸に抱いた。

 

 「みんなで作った、新しい伝説だ――ありがとう!」

 

 神殿の天窓から光が差し込み、少年と仲間たちの姿を祝福するように照らし出していた。
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