【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

第18話「管理庁・最強カードバトル」

　初夏の陽光が王都リュミエールの空に広がる朝――
　街の中心、巨大な円形アリーナには、各地から集まったクリエイターと観衆の熱気が満ちていた。
　今年最大のイベント、「管理庁主催・最強カード決定戦」。伝説級カードを持つ者、天才と呼ばれる若き挑戦者、ギルドを背負う英雄たち。名だたる実力者が集い、最高峰のバトルが今、幕を開けようとしていた。

　

　リオは控え室で深呼吸し、カードケースをそっと撫でる。

　

　（ここまで来た――これまでのすべてが、この舞台に繋がっていたんだ）

　

　仲間たちも緊張と期待の入り混じった顔でリオの周りに集まっていた。
　ユリエルは長い髪を一つにまとめ、凛とした瞳でリオを見つめる。

　

　「いい？　王都のバトルは“お祭り”だけど、ここは本物。今度は全国の“怪物”たちが本気で来るわ」

　

　カイが拳を掲げる。

　

　「負けねぇぞ、リオ！　俺たちの連携、見せつけてやろうぜ！」

　

　ティアナは自作の補助カードをデッキに丁寧に挟みながら、少し緊張した声で囁いた。

　

　「この日を夢見て、ずっと修行してきた。みんなで、最高の一枚を作ろう」

　

　シュトラも、静かな闘志を湛えたまなざしで頷いた。

　

　「全力で支える。君の精製も、仲間の力も、信じてるよ」

　

　ミナはリオの隣に立ち、心配そうに、しかし力強く励ました。

　

　「どんな相手でも、リオはリオらしく戦って。あたしがずっと応援してるから！」

　

　控え室のスピーカーが鳴る。

　

　「第1試合、リオ・バルド、入場！」

　

　歓声の渦の中、リオは仲間たちと固く握手を交わし、アリーナへと歩き出した。

　

　＊

　

　円形フィールドに降り立つと、観客席は満員の熱狂だった。
　実況席からは各ギルドの代表や王都の名士たちが見守り、管理庁の審査官がバトルの一挙一動を記録している。

　

　リオの初戦の相手は、巨大ギルド《黄金の獅子団》のリーダー、ラドック。
　分厚い鎧に身を包み、圧倒的な威圧感を放つ彼は、すでに「都市伝説級」の強豪として知られていた。

　

　「少年よ、貴様の力、確かめてやろう！」

　

　ラドックが金色のカード《獅王ガルムス》を召喚する。
　フィールドに轟く獅子の咆哮。
　リオは躊躇なくグラン＝ヴァルドのカードを手にする。

　

　「いこう、グラン＝ヴァルド！」

　

　黒曜の竜が咆哮と共に舞い降り、激しい衝突が始まった。

　

　ラドックは《ガルムス》の「王者の咆哮」で場の全体攻撃を仕掛け、同時に「防御強化」のスペルで獅子を守る。
　リオはグラン＝ヴァルドの「封印炎」で攻撃しつつ、仲間たちのサポートカード――ユリエルの「氷結魔法」、ティアナの「クリスタルバリア」――で耐え抜く。

　

　ラドックの連続攻撃に押されそうになったその時、カイの「雷牙狼ルガノス」が加勢し、敵のガルムスをひるませる。

　

　「リオ、今だ！」

　

　リオは両手でカードをかざし、魂の奥から願う。

　

　（守りたいもののために……！）

　

　グラン＝ヴァルドの紋章が輝き始めた。

　

　『リオ――今こそ“進化”の時だ』

　

　カードが熱を帯び、まばゆい光に包まれる。
　グラン＝ヴァルドの姿が一瞬だけ大きく変化し、力の波動がアリーナ全体を覆った。

　

　《覚醒竜グラン＝ヴァルド・アルカナフォーム》
　（進化スキル：心の共鳴／竜と使い手の魂を重ねたとき、全能力が一時的に大幅上昇、場の幻獣を圧倒する）

　

　観客がどよめき、審査官たちも動揺する。

　

　ラドックは動じず最後の猛攻をしかけるが、リオの「魂の融合」発動と共に、グラン＝ヴァルドが圧倒的な力で獅王ガルムスを撃破した。

　

　「これが……リオとグラン＝ヴァルドの新しい力か！」

　

　ラドックは潔く降参を宣言し、リオに手を差し出す。

　

　「見事な戦いだった。貴様こそ“伝説”にふさわしい！」

　

　リオは汗を拭い、仲間たちの方を振り返る。

　

　「ありがとう、みんな！」

　

　控え室に戻ると、仲間たちが拍手で出迎えてくれる。

　

　「すごいじゃないか、リオ！」
　「竜の進化、見たことない……！」

　

　次の対戦は、懐かしいライバルたち――ユリエル、シュトラ、そして幻のクリエイター・アルノルトとのバトルだった。

　

　ユリエルとの対戦は頭脳戦。彼女は「連鎖スペル」と補助カードで巧みにリオの動きを封じるが、リオは仲間との連携を駆使し、「魂の共鳴」で突破口を切り拓く。

　

　シュトラは守備の名手。鉄壁の「城壁騎士」カードで防御を固めるが、リオの「覚醒グラン＝ヴァルド」と仲間の強化スキルが絶妙に絡み合い、ついに城壁を打ち破る。

　

　アルノルトは創造と変幻のプロ。神出鬼没の幻獣や一度しか使えない“物語カード”でリオを翻弄するが、リオは「自分だけの精製」に集中し、グラン＝ヴァルドと心を重ねて勝利をもぎ取った。

　

　バトルの合間には、ティアナの「補助スペル」やカイの「一撃必殺」、ミナの「癒やしカード」といった仲間たちの支援が光った。

　

　決勝戦を前に、リオは控え室の窓から沈みゆく夕日を見ていた。

　

　（ここまで来られたのは――仲間と、グラン＝ヴァルドと、みんなのおかげだ）

　

　グラン＝ヴァルドの声が、いつもより優しく響く。

　

　『リオ。お前が歩んできたすべてが、今ここに集約されている。共に、最後の戦いへ進もう』

　

　仲間たちが集まり、肩を並べる。

　

　「最後まで、全員で戦おう」
　「最高の一日を、みんなで作るんだ！」

　

　最強カードバトルは、いよいよクライマックスへ――
　新たな力と絆を得たリオと仲間たちは、どんな相手にも負けない“本物の伝説”へと歩み始めていた。