【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

東野あさひ

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第26話「異界の王・襲来」

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 世界会議が終わった直後、王都リュミエールには重苦しい静けさが漂っていた。
 リオは夜の宿舎で、グラン=ヴァルドのカードを手に窓から広がる星空を眺めていた。

 

 (……この平和が、いつまでも続いてくれたら――)

 

 そのささやかな願いは、突然の激震によって打ち砕かれた。

 

 「リオ! 大変だ、管理庁から緊急連絡だ!」
 カイが部屋のドアを勢いよく開け、息を切らして飛び込んできた。

 

 すぐさま管理庁の作戦室へ駆けつけると、各国からの緊急通信が魔導石の上で点滅していた。

 

 「北部管理庁、壊滅! 東のギルド本部も……!」

 

 「異界の“王”を名乗る存在が、各地で直接攻撃を開始した模様!」

 

 レーベン長官の声もかすかに震えている。

 

 「世界各地の管理庁、ギルド、都市が次々に襲われている。特に“伝説カード保持者”が標的にされている。リオ君、故郷の村にも異界勢力が接近中だ!」

 

 リオの心臓が凍りついた。

 

 「――村が、狙われてる……?」

 

 「俺たちで村を守りに行こう!」
 ミナがすぐさまリオの手を取った。

 

 仲間たちもすぐに装備とカードを整え、魔導馬車で一路、村へと急ぐ。

 

 *

 

 村に近づくと、空は紫色の雷雲で覆われ、村の上空に異様な黒い門が浮かんでいた。

 

 村人たちは集会所に避難し、老人や子供たちが肩を寄せ合って震えている。
 リオの母が、村長とともに必死に皆を守ろうとしていた。

 

 「リオ! おかえり!」
 母親が涙ぐみながらリオに駆け寄る。

 

 「大丈夫、俺が、みんなを絶対に守るから!」

 

 そのとき、空から禍々しい気配が降りてきた。

 

 「来たぞ……異界の“王”だ」

 

 雷鳴とともに、門から現れたのは巨大な漆黒の影。
 人型にも竜型にも見える異形の王――“アルド=グラディウス”だった。

 

 「この世界の命運は、ここで決まる。全てのカードを我がものとし、魂ごと飲み込んでやろう」

 

 声は空気そのものを震わせ、地響きのように村全体に響いた。

 

 王と共に、異界幻獣たちが次々と村へなだれ込む。

 

 「村を守れ!」
 リオが叫ぶと、カイが「雷牙狼ルガノス!」、ユリエルが「魔導連鎖!」、ティアナが「守護結界!」と次々にカードを発動。
 シュトラは村の若者たちと共に、集会所の防衛ラインを築いた。

 

 ミナもサポートカードで村人の負傷者を癒やし、母親や幼なじみと共に「絶対に負けない!」と叫んだ。

 

 村人たちも総出で武器や農具を手にとり、「リオのために!」「村のために!」と一致団結して異界の幻獣に立ち向かう。

 

 (みんな、こんなにも強い……! 俺が守らなきゃいけない世界は、ここにある!)

 

 異界の王アルド=グラディウスが、圧倒的な魔力でフィールド全体を漆黒に染め上げる。
 「見せてみろ、お前たちの“絆の力”を――」

 

 リオはグラン=ヴァルドを呼び、バディの竜が轟音とともに現れる。

 

 『リオ、俺たちで村を、世界を守るぞ!』

 

 「みんな、力を貸してくれ! 合体カードで一気に反撃だ!」

 

 仲間たちのカードと心が共鳴し、村全体が光に包まれていく。
 グラン=ヴァルドは進化形態“希望の黎明竜”となり、雷光と炎を纏って異界幻獣たちをなぎ払う。

 

 カイの《雷牙狼ルガノス》と連携した“稲妻咆哮”、
 ユリエルの魔導カードで援護射撃、
 ティアナの結界が村を包み、
 シュトラが防衛部隊を率いて鉄壁の守りを築く。

 

 「これが俺たちの村だ! 絶対に壊させない!」

 

 異界の王の力は凄まじく、次々に精製した幻獣たちを送り込んでくる。
 だが、村人たちの“想い”と仲間たちの連携が奇跡を呼んだ。

 

 「リオ! 後ろは任せたぞ!」
 カイの叫びと共に、リオはグラン=ヴァルドと共に王に真っ向から挑む。

 

 「リオ、お前たちの“魂”がこの村を守れるか、見せてみろ!」

 

 アルド=グラディウスは異界のカードを発動、“虚無竜ヴォイド=ドラグーン”を召喚する。
 その闇に、村の光が徐々に飲み込まれていく。

 

 「負けるなリオ! お前ならできる!」
 ミナの声、村人の叫び、仲間たちの心――すべてがリオに力を与えた。

 

 「いくぞ、グラン=ヴァルド! 希望の咆哮で、みんなを守るんだ!」

 

 リオの叫びとともに、グラン=ヴァルドが黄金の閃光を放つ。
 その光が“虚無竜”を打ち砕き、闇を裂いていく。

 

 「バカな……この程度の絆で、我が力を凌駕するとは……!」

 

 異界の王は初めて顔を歪め、後退した。
 だが完全には退けず、「次こそ全てを奪う」と不気味な言葉を残し、門の奥へと消えていく。

 

 *

 

 激戦の余韻の中、村には静けさが戻った。

 

 リオは母親や村人たちと固く抱き合い、仲間たちと健闘を称え合う。

 

 「リオ、お前は村の誇りだ!」
 村長の言葉に、リオは目を潤ませた。

 

 「まだ終わりじゃない。けど、みんながいてくれる限り、俺は絶対に負けない!」

 

 グラン=ヴァルドの竜眼が温かく輝く。

 

 『リオ、これが本当の“絆”の力だ。俺もお前と共に、最後まで戦い抜くと誓う』

 

 リオは空を見上げた。
 闇の彼方、異界の王との“最終決戦”を予感しながら――
 村の大地と仲間の手の温もりを、しっかりと感じていた。
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