【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

東野あさひ

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第28話「ミナ、運命の選択」

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 夜明け前の村は、不思議な静けさに包まれていた。昨日の激戦とそれぞれの“試練”を乗り越えた仲間たちは、心なしか顔つきが凛々しくなっている。リオとミナもまた、村の丘の上で並んで朝日を待っていた。

 

 「ミナ、昨日は大丈夫だったか?」
 リオがそっと尋ねる。

 

 ミナは微笑みを浮かべ、リオの顔を見つめる。「うん。もう迷わない。私も、一緒に戦うって決めたから」

 

 リオはその言葉に安心し、カードケースを握りしめた。「これからどんな敵が来ても、俺たちは絶対負けない。みんながいれば、どこまでも行ける気がするんだ」

 

 ふたりの前に、朝日が昇り始めた。その瞬間だった。

 

 ――バキッ――。

 

 村の中心で、空間が裂けるような不気味な音が響いた。

 

 「……また“異界の門”か!?」

 

 叫び声と同時に、村の広場の空間が歪み、黒い霧が渦を巻き始めた。異界の瘴気が村を包みこみ、どこかから冷たい笑い声が響く。

 

 「リオ、下がって!」
 ミナが叫んだその瞬間、霧の中から現れた異界のクリエイターがミナをまっすぐに見据える。

 

 「“選ばれし者”よ……君に運命の選択をさせてもらおう」

 

 冷酷な声とともに、クリエイターが闇色のカードを掲げると、ミナの足元に魔法陣が浮かび上がった。

 

 「ミナ、逃げて!」
 リオが駆け寄ろうとするが、異界の力が空間ごとミナを飲み込んでいく。

 

 「リオ――!」
 ミナの叫びとともに、彼女の姿は霧の中に消えていった。

 

 *

 

 目が覚めると、ミナは見知らぬ世界に立っていた。
 周囲には光も影も曖昧な、奇妙に歪んだ空間。足元は果てしない鏡面の大地で、空には異界の幻獣が泳いでいる。

 

 「ここは……異界?」

 

 そのとき、目の前に異界のクリエイターが現れる。
 長い黒髪の女性――“セラフィナ”と名乗った。

 

 「あなたが“リオ・バルド”の大切な人間……ふふ、見た目は平凡な少女だけど、魂には特別な光があるわ」

 

 ミナは一歩も引かずに言い返す。「私をどうする気?」

 

 セラフィナは優雅に微笑む。「あなたの心の“強さ”を試しに来たのよ。もしリオのそばに立ちたいなら、この異界で“自分自身”の力を示してもらうわ」

 

 その言葉と同時に、周囲の鏡面にミナ自身の姿が映し出される。
 自信のなさそうな、昔の自分――。リオの後ろで小さく震えていた少女の姿だ。

 

 「これが、私……?」

 

 「あなたの“弱さ”。でも、ここで立ち向かわなければ、永遠にリオの背中しか見えないわ」

 

 セラフィナは幻獣カードを取り出し、“虚無の猫獅子(ネメア・ヴォイド)”を召喚する。
 巨大な黒獅子がミナの前に立ちはだかる。

 

 「……戦うしかないんだね」

 

 ミナは自分のカードケースを開き、ずっと大切にしていたサポートカードを握りしめる。
 「私の“思い出”……みんなの笑顔が、私の力」

 

 ミナは勇気を振り絞り、“仲間の絆”カードを発動。
 仲間たちの支えや、リオとの思い出が幻影となって彼女の周りを取り囲む。

 

 「私は――守られるだけじゃなく、誰かを守りたい!」

 

 ミナの叫びに呼応して、“光の羽衣”カードが発動する。彼女の身体を包む優しい光が、虚無の猫獅子の攻撃を一つひとつ跳ね返していく。

 

 セラフィナは初めて顔色を変える。

 

 「まさか、あなたがここまで……!」

 

 ミナは“光の加護”カードで自分自身と仲間の幻影を強化。リオと交わした言葉や、村で交わした小さな約束――そのすべてが力となっていく。

 

 「これが、私の“運命の選択”。私は、リオと一緒に未来へ進む!」

 

 渾身の一撃で猫獅子の幻獣を浄化したミナの前に、空間が再び歪む。

 

 「まだ終わりじゃない!」

 

 セラフィナは自身もカードの力で巨大な“闇の翼”を纏い、直接バトルを挑んでくる。
 だがミナはもう怯まない。

 

 「あなたの闇を、私の光で包み込む!」

 

 仲間のカード、思い出のカード、リオとの“誓い”カード――
 ミナは全てを重ねて連続発動し、異界の闇を少しずつ浄化していく。

 

 「もう私は、ひとりじゃない!」

 

 そのとき、遠くでリオの声が響いた。

 

 「ミナ――絶対に迎えに行く! 約束だ!」

 

 ミナの心に力が満ちる。

 

 (リオ……みんな……)

 

 *

 

 現実世界。
 リオたちはミナ救出のため、異界の門の前で奮闘していた。

 

 「絶対にミナを連れ戻す!」
 リオが叫び、仲間たちもカードを次々と展開。

 

 ユリエルは精密な魔法陣で異界の座標を割り出し、カイは《雷牙狼ルガノス》の咆哮で門の封印を揺るがせる。
 ティアナとシュトラは、協力してサポート魔法と防御陣を構築。村人たちも祈りのカードで“絆”の力を送り続けていた。

 

 「みんなの力を一つに! 俺たちなら絶対できる!」

 

 リオが“希望の黎明竜”カードを発動すると、門にまばゆい光が差し込む。
 仲間たちの絆が共鳴し、ついに門が大きく開かれた。

 

 *

 

 異界――
 ミナの前に、リオたちの姿が現れる。

 

 「ミナ、大丈夫か!」
 リオが駆け寄ると、ミナは涙を浮かべながらも、しっかりとうなずいた。

 

 「うん……もう、私は迷わない。私の“力”は、みんながくれたものだから」

 

 セラフィナは静かに微笑む。「見事よ、ミナ。あなたの選択が、異界にも光をもたらした」

 

 リオはミナの手を握り、仲間たちと共に現実世界へと戻る。

 

 *

 

 村の広場で再び目を覚ましたミナを、皆が温かく迎える。

 

 「本当に、よく帰ってきたな!」
 カイが大きく抱きしめ、ユリエルはそっと涙を拭う。

 

 「ありがとう、みんな……これからも、私も一緒に戦わせて!」

 

 リオは優しくミナの手を握り返す。

 

 「当たり前だ。俺たちは、ずっと仲間だからな!」

 

 ミナの決意と勇気、仲間たちの救出――
 こうして、絆はさらに深まり、次なる戦いへの力となった。

 

 新しい朝が、村と仲間たちの未来を優しく照らしていた――。
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