【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

東野あさひ

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第30話「希望の灯火、村の絆」

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 リオが暴走した翌朝、村には穏やかな陽射しが差し込んでいた。しかし、その光が届く場所には、昨夜の傷跡がまだ色濃く残っていた。

 

 リオは自室の片隅で、ぼんやりと天井を見上げていた。
 暴走による破壊と混乱、仲間たちへの負傷、グラン=ヴァルドとの絆の亀裂――
 胸の奥にはまだ、深い痛みと自責の念が渦巻いていた。

 

 ドアの向こうから、そっと誰かが覗く気配。
 ミナだった。

 

 「……リオ、朝ごはんできてるよ。みんな、待ってる」

 

 その声は優しくて、けれどどこか不安げだった。リオは返事もできずに、布団の中に潜り込む。

 

 (みんなの顔、まともに見られない……)

 

 昨日の自分の暴走――あの時、確かに“守るため”だった。けれど、守りたい人をも傷つけてしまった。
 その現実が、リオの胸を強く締め付ける。

 

 ふいに母親が部屋に入ってきた。

 

 「リオ……おかえり。生きて帰ってきてくれて、ありがとう」

 

 その言葉に、リオは何も言えず、ただ涙が滲んだ。母は静かにリオの頭を撫でてくれる。

 

 「人は、弱いものよ。でもね、だからこそ、誰かと支え合って生きていくの」

 

 リオは小さくうなずいた。

 

 「ごめん、母さん……俺、みんなを傷つけちゃった」

 

 「リオ……本当に大切なものは、きっと“自分ひとりで守ろう”としなくてもいいのよ。支えられて、はじめて“本当の強さ”になる。あの子たち、あなたのこと、みんな待ってるわ」

 

 母の言葉は、じんわりとリオの胸に染み込んでいった。

 

 *

 

 リビングに降りると、仲間たちが集まっていた。
 カイは大きな声で「リオ! 飯食って元気出せよ!」と手を振り、
 ユリエルは「ごはん、冷める前に食べたほうがいいわよ」と静かに微笑んだ。
 ティアナも「昨日は……ちょっと痛かったけど、今のリオが戻ってくれて本当に嬉しい」と優しく語りかけた。
 シュトラは「お前が倒れたままじゃ、村のみんなも困る」と笑った。

 

 みんな、リオを責める者は一人もいなかった。

 

 そして、ミナが席を立ち、リオの手を取る。

 

 「リオ……あたし、昨日怖かった。でもね、あなたが帰ってきてくれるって信じてた。だって、リオは“守りたい”って、ずっと言ってくれたから」

 

 ミナの小さな手が、リオの手を包み込む。

 

 「今度は、みんなで守ろう。リオが“守らなきゃ”って思い詰めなくていいよ。みんな、リオのこと、大好きなんだから」

 

 その言葉に、リオの胸の奥で、何かがゆっくりと解けていった。

 

 (俺は、一人じゃない……みんながいるから、もう一度立ち上がれる)

 

 「……ありがとう、みんな。本当に、ごめん。俺……これからは、もっと“みんなのため”の力で戦うよ」

 

 仲間たちは、口々に「それでこそリオだ」と笑い、肩を叩いた。

 

 *

 

 その日の午後、リオはグラン=ヴァルドのカードを胸に、村の丘に立っていた。

 

 (グラン=ヴァルド……お前にも、酷いことをした。だけど、もう一度だけ――もう一度だけ、俺の声を聞いてほしい)

 

 カードから淡い光がこぼれ、グラン=ヴァルドの幻影が現れる。
 その竜の姿は、いつもより少し遠く、けれどその瞳には静かな誇りが宿っていた。

 

 『リオ。お前は、“孤独”を知った。だが、同時に“絆”も知った。お前の成長を、私は誇りに思う』

 

 「グラン=ヴァルド、ごめん。俺、お前の声が聞こえなくなって、怖かった。でも――もう大丈夫だ。これからは、お前と一緒に“みんなのため”のカードを精製する。そう、決めたんだ」

 

 『ならば、私もお前に応えよう。お前の“希望”に力を与えよう』

 

 その瞬間、リオの手の中のカードが金色に輝きはじめた。

 

 「これは……!」

 

 村の空に、まばゆい光の柱が立ち上る。
 村人たちも空を見上げ、歓声を上げた。

 

 リオの手には、新たなカード――
 《希望竜グラン=ヴァルド・レガリア》が現れていた。

 

 カードの表面には、仲間や家族、村人たちとの思い出、そしてリオ自身の成長のすべてが刻まれていた。

 

 (これが、“みんなで”創ったカード……!)

 

 グラン=ヴァルドは微笑むように頷いた。

 

 『リオ。この力は、お前一人のものではない。“守りたい”と願った全ての者の想いが、私とお前を進化させたのだ』

 

 リオは仲間たちの元へ走った。

 

 「みんな! 見てくれ、これが新しいグラン=ヴァルドのカードだ!」

 

 カイが「すげぇ! なんかすごくカッコいい!」と歓声を上げ、
 ユリエルは「これなら、どんな敵にも立ち向かえるわね」と微笑み、
 ティアナも「私たちのカードも、負けていられないね!」と明るく言った。

 

 ミナは静かに微笑み、リオの手をしっかりと握った。

 

 「これが、リオの“希望”のカードなんだね」

 

 リオは深くうなずいた。

 

 「俺はもう、一人で戦わない。みんなで、未来を守るために戦うよ」

 

 こうして、暴走と絶望を乗り越えたリオと仲間たちに、
 新たな“希望の灯火”がともった。

 

 村に再び陽射しが降りそそぎ、リオたちの決意と絆を温かく照らしていた――。
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