【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

第40話「希望の創造主」

　新緑の森を抜け、リオとミナはゆっくりと世界への新たな旅路を歩いていた。
　村で迎えた静かな日常も、穏やかでかけがえのないものだったけれど、ふたりは「希望精製」の新しい時代をもっと広げるため、再び世界へと足を踏み出すことを決めていた。

　

　朝焼けに染まる道の向こう、リオの肩には村の子どもたちが作ってくれた“未来のカードケース”がかかっている。
　ミナはリオの横で、柔らかな風を感じながら歩いていた。

　

　「ねえリオ、なんだか……すごく不思議だよね。
　　昔みたいに畑で汗を流してた自分たちが、今じゃ世界を旅して“希望のカード”を届けるなんて」

　

　リオは笑って頷いた。

　

　「そうだな。でも、あの日から始まったんだ。グラン＝ヴァルドと出会って、自分だけのカードを生み出した瞬間から、全部が“冒険”だったんだよな」

　

　ふたりは何度も立ち止まり、何度も前を向き直して歩き続けてきた。
　失敗も涙も、そして仲間との数えきれない出会いと別れも――

　

　そのすべてが、「希望」を紡ぐカードの糧になっている。

　

　＊

　

　旅の途中、ふたりはさまざまな街や村を訪れた。

　

　ある山岳都市では、精製ギルドが主催する“子どもカードコンテスト”に招かれた。

　

　「リオ先生！　見て見て、僕の“勇気のカード”、めっちゃ強いでしょ？」
　「ミナお姉ちゃん、この“家族のカード”、大事にしなきゃ効果が消えちゃうんだって！」

　

　笑顔と歓声があふれ、子どもたちはそれぞれの物語をカードにして、夢中で見せ合う。
　大人たちもカードを囲み、かつての自分や未来への想いを語り合う姿があった。

　

　リオはその輪の中で「カード精製は“競い合うため”だけじゃなく、“誰かを守り、笑顔を増やすため”にこそあるんだ」と熱心に語る。

　

　ミナも子どもたちと手を取り合い、みんなで“未来の約束カード”を作っていく。

　

　「誰でも、どこでも、希望のカードを生み出せる時代が来たんだよ」

　

　＊

　

　時には各地の仲間たちと再会も果たした。

　

　ギルドリーダーとなったシュトラは、広い地方をまとめる存在に成長していた。
　ユリエルは研究所で“精製理論”をさらに進化させており、リオの訪問に「これからは“心”の多様性こそが力になる」と胸を張った。
　ティアナは異国の村で“精製ワークショップ”を開き、希望の精製を旅人たちに教えていた。
　カイは村で子どもたちの“カードバトル大会”を開いていた。

　

　それぞれの道で輝きながらも、「また必ず集まろう」と約束を交わす。
　“離れていても、心はいつも近くにある”――それがリオたちの新たな絆だった。

　

　＊

　

　道すがら、ふたりは時に困難にも直面した。

　

　旅先の小さな町で、カード精製がうまくできずに泣いていた少年にリオはそっと手を差し伸べた。

　

　「失敗しても、何度でもやり直せるよ。カードが生まれるのは、“諦めない心”があるからなんだ」

　

　少年は涙をぬぐい、もう一度チャレンジし、ついに“笑顔のカード”を生み出した。
　ミナがそっと拍手を送り、町の人たちもその奇跡を見守った。

　

　旅を続けるうち、リオとミナは自分たち自身もまた成長していることを感じていた。

　

　「……ミナ、俺、本当にここまで来られたのは、みんながいたからだと思う」

　

　「私も。リオがいてくれたから、一歩ずつ歩けたよ」

　

　“希望の創造主”と呼ばれることがあっても、ふたりの根っこは、あの村の少年と少女のまま。
　どこまで行っても、ただまっすぐ、誰かの幸せを願って歩み続けている。

　

　＊

　

　ある夜。
　ふたりは高原の野営地で焚き火を囲み、星空を見上げて語り合った。

　

　「リオ……この世界が、これからどんなふうに変わっていくのか、楽しみだね」

　

　「うん。きっと、“希望のカード”がある限り、誰もが未来を選び取れるはずさ。
　　俺たちの旅はまだ終わらない。もっとたくさんの“物語”を集めて、もっといろんな希望を生み出したい」

　

　ミナは焚き火の光に包まれながら、リオの肩にもたれた。

　

　「……私、リオとなら、どこまでだって歩いていける。これからも、一緒に、ずっと」

　

　ふたりは小さなカードを夜空に掲げた。
　そこには“未来”と“約束”――そして“希望”という言葉が、やさしい光となって刻まれている。

　

　＊

　

　朝になればまた新しい出会いが待っている。
　旅の途中、ふたりは新たなカードクリエイターに出会い、次の世代に技術や心を伝えていく。
　どこまでも希望は連鎖し、広がっていく。

　

　そして、リオとミナは今日も世界のどこかで歩き続けている。
　きっとその先には、また新しい仲間や物語が待っている。

　

　「俺たちの物語は、これからも続いていく――」

　

　春の光がふたりを照らし、
　新しい時代の“希望のカード”が、静かに、しかし確かに世界へと羽ばたいていった。