【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

東野あさひ

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外伝41話「グラン=ヴァルド、村で初めてのおつかい!?」

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 ――これは、リオとミナが世界を旅するほんの合間。
 春の穏やかなある日、ふたりが久しぶりに村へ帰省していた時の出来事だ。

 

 村はのどかで、のんびりとした時間が流れている。
 けれど、そんな日常に突如、“とんでもない非日常”が巻き起こるとは――誰も想像していなかった。

 

 *

 

 「リオ、ちょっと! お母さんに頼まれたおつかい、忘れてないよね?」

 

 朝食のテーブルでパンをかじるリオの頭を、ミナがぺしりと軽く叩く。

 

 「うわっ、忘れてないって! 市場で牛乳とタマゴ、あと村長の家に寄って“春祭りの飾り”を受け取ればいいんだよな?」

 

 「ついでに、今日はお母さんが“幻獣カードの新しい材料”も探してきてって言ってたから、森にも行ってきてね!」

 

 リオは苦笑いを浮かべながら、「まったく、実家ってやつは……」とぼやく。

 

 その横で、グラン=ヴァルドのカードがぴょこんと浮かび上がった。

 

 『リオ。おつかいとは何だ? 祭りの“素材狩り”のようなものか?』

 

 竜の姿を現してはいけないので、今はミニチュアサイズ(リオの手のひらサイズ)で出てきているグラン=ヴァルド。
 だが、その威厳は相変わらず。パンくずをふっ飛ばしながらキリリと空を睨む。

 

 「違う違う。ご近所の人たちに挨拶しつつ、村の平和を守りつつ、“おつかい”ってのは“社会科見学の修行”みたいなもんだよ!」

 

 ミナがぷっと吹き出す。「リオ、絶対説明間違ってるでしょ」

 

 「じゃあ、グラン=ヴァルド! 今日は俺の代わりに“おつかい初体験”してみるか?」

 

 『ほう……それが“村の試練”というわけだな。よかろう、我が力をもってすれば……』

 

 「いやいや! 力はいらないからね!? 絶対カードバトルで買い物を制圧しないでよ!?」

 

 こうして、
 “伝説の竜・グラン=ヴァルド、村で人生初のおつかい!”という、村史に残る珍事件が始まった――。

 

 *

 

 まずは市場へ向かう。

 

 リオの肩に乗ったミニチュア・グラン=ヴァルドが、「牛乳」を求めて意気込む。
 しかし、村の牛乳屋のおじさんは竜の気配に気づかず、
 「おっ、リオ! 今日は“幻獣ストラップ”のおまけをつけてやるよ!」とニコニコ。

 

 グラン=ヴァルドは、しげしげと牛乳瓶を見つめて言う。

 

 『この白き液体……かつて古代竜たちは“神の飲み物”と呼んだというが、本当に牛の乳から作られているのか?』

 

 リオが小声で、「グラン、声デカい、デカい! 誰も古代竜の乳飲んでないから!」と突っ込む。

 

 隣のミナは、
 「今度はタマゴもね。グラン、割っちゃダメだからね!」
 と優しく諭す。

 

 グラン=ヴァルドは小さな爪でそ~っとタマゴを持ち上げ、緊張しながら「ふむ……壊れやすいものほど尊いのか」としみじみ。

 

 「昔は“竜の卵”が世界を救うとか言われてたけど、今はみんなで“オムライス”作る方が世界平和だよなぁ」とリオ。

 

 市場を出ると、村長の家で“春祭りの飾り”を受け取る番だ。

 

 だがここで、事件が起きる。

 

 「おや、リオくん……? 今日はずいぶん小さな新しい友達がいるね?」
 村長がグラン=ヴァルドに興味津々。

 

 グラン=ヴァルド、見事なポーカーフェイスで
 『私は……リオの“便利な妖精”です』と名乗ってしまう。

 

 村長は「ほぉ~便利な妖精さんか! 春祭りの飾りも妖精が運ぶと縁起が良さそうだ」と、まさかの納得。

 

 リオもミナも「妖精!?」と盛大にズッコケる。

 

 *

 

 さて、おつかいのラストは森での“カード素材集め”だ。

 

 森の入口でミナが「今日のミッションは“レアハーブ”だよ!」と告げると、グラン=ヴァルドはキリッと引き締まる。

 

 『任せておけ。私はかつて世界の頂点に立った伝説の竜、植物の精気など造作もな……』

 

 がさごそ――

 

 小動物たちがゾロゾロ寄ってきて、グラン=ヴァルドの頭にリスが乗っかり、ほっぺたにどんぐりを詰めては“妖精さま~!”と大人気。

 

 竜の威厳はどこへやら。
 しまいには、うさぎに抱きつかれ、キノコに囲まれてピクニック状態に。

 

 「なんだか“動物たちの守り神”みたいになってる……」と、ミナがほほえむ。

 

 リオは「これぞ、村の平和の証だな!」と大笑い。

 

 グラン=ヴァルドは仕方なく、
 『……まあ、これも悪くはない。守るべきものの“温もり”だな』
 と満更でもない顔をするのだった。

 

 *

 

 こうして大騒動の末、無事おつかいを終えたリオたちは家に帰る。

 

 「ただいまー! 牛乳とタマゴと飾り、ちゃんと持ってきたよ!」

 

 母は、「あら、妖精さんもご苦労さま」と微笑みながらお菓子をふるまう。

 

 グラン=ヴァルドは、つまみ食いのクッキーを見て「人間の“焼き菓子”……これは竜の宝にも劣らぬ味わいだな」と大絶賛。

 

 その日、リオの家では“伝説の妖精グラン=ヴァルドと作る! 村のオムライス&クッキーパーティー”が開かれた。

 

 ミナは、「次はグランのために“伝説のケーキ”でも精製してみようかな」と目を輝かせる。

 

 こうして、英雄も伝説の竜も、村のあたたかな日常にすっかり馴染んで――

 

 今日も村には、のんびりとした笑い声と“希望のカード”があふれているのだった。
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