41 / 101
外伝41話「グラン=ヴァルド、村で初めてのおつかい!?」
しおりを挟む
――これは、リオとミナが世界を旅するほんの合間。
春の穏やかなある日、ふたりが久しぶりに村へ帰省していた時の出来事だ。
村はのどかで、のんびりとした時間が流れている。
けれど、そんな日常に突如、“とんでもない非日常”が巻き起こるとは――誰も想像していなかった。
*
「リオ、ちょっと! お母さんに頼まれたおつかい、忘れてないよね?」
朝食のテーブルでパンをかじるリオの頭を、ミナがぺしりと軽く叩く。
「うわっ、忘れてないって! 市場で牛乳とタマゴ、あと村長の家に寄って“春祭りの飾り”を受け取ればいいんだよな?」
「ついでに、今日はお母さんが“幻獣カードの新しい材料”も探してきてって言ってたから、森にも行ってきてね!」
リオは苦笑いを浮かべながら、「まったく、実家ってやつは……」とぼやく。
その横で、グラン=ヴァルドのカードがぴょこんと浮かび上がった。
『リオ。おつかいとは何だ? 祭りの“素材狩り”のようなものか?』
竜の姿を現してはいけないので、今はミニチュアサイズ(リオの手のひらサイズ)で出てきているグラン=ヴァルド。
だが、その威厳は相変わらず。パンくずをふっ飛ばしながらキリリと空を睨む。
「違う違う。ご近所の人たちに挨拶しつつ、村の平和を守りつつ、“おつかい”ってのは“社会科見学の修行”みたいなもんだよ!」
ミナがぷっと吹き出す。「リオ、絶対説明間違ってるでしょ」
「じゃあ、グラン=ヴァルド! 今日は俺の代わりに“おつかい初体験”してみるか?」
『ほう……それが“村の試練”というわけだな。よかろう、我が力をもってすれば……』
「いやいや! 力はいらないからね!? 絶対カードバトルで買い物を制圧しないでよ!?」
こうして、
“伝説の竜・グラン=ヴァルド、村で人生初のおつかい!”という、村史に残る珍事件が始まった――。
*
まずは市場へ向かう。
リオの肩に乗ったミニチュア・グラン=ヴァルドが、「牛乳」を求めて意気込む。
しかし、村の牛乳屋のおじさんは竜の気配に気づかず、
「おっ、リオ! 今日は“幻獣ストラップ”のおまけをつけてやるよ!」とニコニコ。
グラン=ヴァルドは、しげしげと牛乳瓶を見つめて言う。
『この白き液体……かつて古代竜たちは“神の飲み物”と呼んだというが、本当に牛の乳から作られているのか?』
リオが小声で、「グラン、声デカい、デカい! 誰も古代竜の乳飲んでないから!」と突っ込む。
隣のミナは、
「今度はタマゴもね。グラン、割っちゃダメだからね!」
と優しく諭す。
グラン=ヴァルドは小さな爪でそ~っとタマゴを持ち上げ、緊張しながら「ふむ……壊れやすいものほど尊いのか」としみじみ。
「昔は“竜の卵”が世界を救うとか言われてたけど、今はみんなで“オムライス”作る方が世界平和だよなぁ」とリオ。
市場を出ると、村長の家で“春祭りの飾り”を受け取る番だ。
だがここで、事件が起きる。
「おや、リオくん……? 今日はずいぶん小さな新しい友達がいるね?」
村長がグラン=ヴァルドに興味津々。
グラン=ヴァルド、見事なポーカーフェイスで
『私は……リオの“便利な妖精”です』と名乗ってしまう。
村長は「ほぉ~便利な妖精さんか! 春祭りの飾りも妖精が運ぶと縁起が良さそうだ」と、まさかの納得。
リオもミナも「妖精!?」と盛大にズッコケる。
*
さて、おつかいのラストは森での“カード素材集め”だ。
森の入口でミナが「今日のミッションは“レアハーブ”だよ!」と告げると、グラン=ヴァルドはキリッと引き締まる。
『任せておけ。私はかつて世界の頂点に立った伝説の竜、植物の精気など造作もな……』
がさごそ――
小動物たちがゾロゾロ寄ってきて、グラン=ヴァルドの頭にリスが乗っかり、ほっぺたにどんぐりを詰めては“妖精さま~!”と大人気。
竜の威厳はどこへやら。
しまいには、うさぎに抱きつかれ、キノコに囲まれてピクニック状態に。
「なんだか“動物たちの守り神”みたいになってる……」と、ミナがほほえむ。
リオは「これぞ、村の平和の証だな!」と大笑い。
グラン=ヴァルドは仕方なく、
『……まあ、これも悪くはない。守るべきものの“温もり”だな』
と満更でもない顔をするのだった。
*
こうして大騒動の末、無事おつかいを終えたリオたちは家に帰る。
「ただいまー! 牛乳とタマゴと飾り、ちゃんと持ってきたよ!」
母は、「あら、妖精さんもご苦労さま」と微笑みながらお菓子をふるまう。
グラン=ヴァルドは、つまみ食いのクッキーを見て「人間の“焼き菓子”……これは竜の宝にも劣らぬ味わいだな」と大絶賛。
その日、リオの家では“伝説の妖精グラン=ヴァルドと作る! 村のオムライス&クッキーパーティー”が開かれた。
ミナは、「次はグランのために“伝説のケーキ”でも精製してみようかな」と目を輝かせる。
こうして、英雄も伝説の竜も、村のあたたかな日常にすっかり馴染んで――
今日も村には、のんびりとした笑い声と“希望のカード”があふれているのだった。
春の穏やかなある日、ふたりが久しぶりに村へ帰省していた時の出来事だ。
村はのどかで、のんびりとした時間が流れている。
けれど、そんな日常に突如、“とんでもない非日常”が巻き起こるとは――誰も想像していなかった。
*
「リオ、ちょっと! お母さんに頼まれたおつかい、忘れてないよね?」
朝食のテーブルでパンをかじるリオの頭を、ミナがぺしりと軽く叩く。
「うわっ、忘れてないって! 市場で牛乳とタマゴ、あと村長の家に寄って“春祭りの飾り”を受け取ればいいんだよな?」
「ついでに、今日はお母さんが“幻獣カードの新しい材料”も探してきてって言ってたから、森にも行ってきてね!」
リオは苦笑いを浮かべながら、「まったく、実家ってやつは……」とぼやく。
その横で、グラン=ヴァルドのカードがぴょこんと浮かび上がった。
『リオ。おつかいとは何だ? 祭りの“素材狩り”のようなものか?』
竜の姿を現してはいけないので、今はミニチュアサイズ(リオの手のひらサイズ)で出てきているグラン=ヴァルド。
だが、その威厳は相変わらず。パンくずをふっ飛ばしながらキリリと空を睨む。
「違う違う。ご近所の人たちに挨拶しつつ、村の平和を守りつつ、“おつかい”ってのは“社会科見学の修行”みたいなもんだよ!」
ミナがぷっと吹き出す。「リオ、絶対説明間違ってるでしょ」
「じゃあ、グラン=ヴァルド! 今日は俺の代わりに“おつかい初体験”してみるか?」
『ほう……それが“村の試練”というわけだな。よかろう、我が力をもってすれば……』
「いやいや! 力はいらないからね!? 絶対カードバトルで買い物を制圧しないでよ!?」
こうして、
“伝説の竜・グラン=ヴァルド、村で人生初のおつかい!”という、村史に残る珍事件が始まった――。
*
まずは市場へ向かう。
リオの肩に乗ったミニチュア・グラン=ヴァルドが、「牛乳」を求めて意気込む。
しかし、村の牛乳屋のおじさんは竜の気配に気づかず、
「おっ、リオ! 今日は“幻獣ストラップ”のおまけをつけてやるよ!」とニコニコ。
グラン=ヴァルドは、しげしげと牛乳瓶を見つめて言う。
『この白き液体……かつて古代竜たちは“神の飲み物”と呼んだというが、本当に牛の乳から作られているのか?』
リオが小声で、「グラン、声デカい、デカい! 誰も古代竜の乳飲んでないから!」と突っ込む。
隣のミナは、
「今度はタマゴもね。グラン、割っちゃダメだからね!」
と優しく諭す。
グラン=ヴァルドは小さな爪でそ~っとタマゴを持ち上げ、緊張しながら「ふむ……壊れやすいものほど尊いのか」としみじみ。
「昔は“竜の卵”が世界を救うとか言われてたけど、今はみんなで“オムライス”作る方が世界平和だよなぁ」とリオ。
市場を出ると、村長の家で“春祭りの飾り”を受け取る番だ。
だがここで、事件が起きる。
「おや、リオくん……? 今日はずいぶん小さな新しい友達がいるね?」
村長がグラン=ヴァルドに興味津々。
グラン=ヴァルド、見事なポーカーフェイスで
『私は……リオの“便利な妖精”です』と名乗ってしまう。
村長は「ほぉ~便利な妖精さんか! 春祭りの飾りも妖精が運ぶと縁起が良さそうだ」と、まさかの納得。
リオもミナも「妖精!?」と盛大にズッコケる。
*
さて、おつかいのラストは森での“カード素材集め”だ。
森の入口でミナが「今日のミッションは“レアハーブ”だよ!」と告げると、グラン=ヴァルドはキリッと引き締まる。
『任せておけ。私はかつて世界の頂点に立った伝説の竜、植物の精気など造作もな……』
がさごそ――
小動物たちがゾロゾロ寄ってきて、グラン=ヴァルドの頭にリスが乗っかり、ほっぺたにどんぐりを詰めては“妖精さま~!”と大人気。
竜の威厳はどこへやら。
しまいには、うさぎに抱きつかれ、キノコに囲まれてピクニック状態に。
「なんだか“動物たちの守り神”みたいになってる……」と、ミナがほほえむ。
リオは「これぞ、村の平和の証だな!」と大笑い。
グラン=ヴァルドは仕方なく、
『……まあ、これも悪くはない。守るべきものの“温もり”だな』
と満更でもない顔をするのだった。
*
こうして大騒動の末、無事おつかいを終えたリオたちは家に帰る。
「ただいまー! 牛乳とタマゴと飾り、ちゃんと持ってきたよ!」
母は、「あら、妖精さんもご苦労さま」と微笑みながらお菓子をふるまう。
グラン=ヴァルドは、つまみ食いのクッキーを見て「人間の“焼き菓子”……これは竜の宝にも劣らぬ味わいだな」と大絶賛。
その日、リオの家では“伝説の妖精グラン=ヴァルドと作る! 村のオムライス&クッキーパーティー”が開かれた。
ミナは、「次はグランのために“伝説のケーキ”でも精製してみようかな」と目を輝かせる。
こうして、英雄も伝説の竜も、村のあたたかな日常にすっかり馴染んで――
今日も村には、のんびりとした笑い声と“希望のカード”があふれているのだった。
0
あなたにおすすめの小説
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。
無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。
やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる