【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

東野あさひ

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42話「眠れる遺跡と謎の手紙」

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 村に春の風が吹き抜ける。
 リオとミナが世界を巡る旅路から戻ってきてしばらく、のどかな日常が続いていた。

 

 麦畑の緑がまぶしい朝。
 ミナは庭で花の手入れをしながら、リオの姿を探していた。

 

 「リオ、またどこ行ったの? 朝ごはん冷めちゃうよー!」

 

 返事のかわりに、家の裏から子どもたちの笑い声が響いてきた。
 リオは今日も村のちびっこたちとカードバトルの真っ最中だった。

 

 「はいっ、グラン=ヴァルド召喚! ……でも手加減するから、覚悟しろよ!」

 

 「えー! リオ兄ちゃんずるい! こっちは“麦畑のネコちゃん”カードしかないのに!」

 

 「カードバトルに年齢制限はないのだ! さあ、勇気を出して攻撃だ!」

 

 ちびっこたちと笑い合うリオを見て、ミナはため息と同時に、頬がゆるむ。

 

 ――こんなに平和で、幸せな日々がずっと続けばいいのに。

 

 そう思った矢先のことだった。

 

 *

 

 その日のお昼、家のポストに奇妙な手紙が届いた。
 分厚い羊皮紙に、見慣れぬ紋章。
 そして、そこに書かれていたのは、
 「――魔女の血を引く者へ」という古代語の一文だった。

 

 ミナが驚きつつも手紙を開くと、中には王都・聖印管理庁からの公式依頼書が同封されていた。

 

 『新大陸西部・アストラ遺跡にて、古代カード文明の封印解放が確認された。
  “魔女の系譜を継ぐ者”がいれば、至急協力を願いたい――管理庁長官・レーベン』

 

 「これ……私、宛て?」

 

 リオも駆け寄ってきて手紙を覗き込み、
 「古代語で“魔女の血”って、まさかミナ……君のご先祖?」と目を丸くする。

 

 ミナはうっすら笑って首を傾げた。

 

 「昔、うちの家系は“精製魔女”って呼ばれてたみたいだけど、今は普通の村娘よ?」

 

 そのとき――

 

 テーブルの上で、グラン=ヴァルドのカードがピクリと震え、
 カードからミニチュア竜がぴょこんと顔を出した。

 

 『アストラ遺跡……懐かしい響きだ。
  かつて古代文明の中心地、“精製の始まり”と呼ばれた場所だ。
  これは、只事ではないな』

 

 ミナが口を尖らせる。「グラン、そんなに大事件なの?」

 

 『うむ。封印が解けたということは、あの“災厄のカード”が……』

 

 「ちょっと待った! “災厄のカード”って何!?」
 リオが慌てて竜の鼻先を押さえる。

 

 そのやりとりに、ミナは思わず吹き出した。

 

 「どんなにすごい冒険が始まっても、結局うちは笑いが絶えないね」

 

 *

 

 翌日、村の広場は騒然としていた。
 リオとミナが“王都からの公式依頼”で村を離れると知ると、村の子どもたちは大騒ぎ。
 「リオ兄ちゃんまた冒険!?」「今度こそ俺も連れてって!」
 村の長老たちも「やれやれ、また世界の運命がリオたちの肩に乗るのか」と目を細める。

 

 お母さんは少しだけ寂しげに「くれぐれも無茶しないように」とハンカチを渡す。
 リオは「大丈夫! 何があっても、絶対に帰ってくるから!」と約束した。

 

 ミナは、花飾りを髪に差しながら言った。

 

 「またみんなで無事に帰ってくるための冒険だもの。ちゃんと“希望のカード”持っていくから、心配しないで」

 

 グラン=ヴァルドがミナの肩に乗り、
 『さあ、次なる冒険の扉は開かれた。
  新たな精製の時代――見届けるとしよう』

 

 そのとき、王都からの伝令騎士がやってきた。

 

 「リオ・バルド殿、ミナ・エトワール殿。
  これより王都経由で、新大陸アストラ遺跡への調査任務にご同行願いたい」

 

 リオは胸を張り、ミナは緊張しながらも凛とした表情で頷いた。

 

 「よし、じゃあ行こうかミナ! 新しい冒険が、また始まる!」

 

 「ええ、今度はどんな出会いがあるのかな――」

 

 *

 

 王都へ向かう道すがら、ミナがふと呟く。

 

 「ねえリオ、私たちだけで行くのかな……また仲間たちとも再会できるといいな」

 

 リオは頷く。「あいつらなら、きっと何かの拍子にすぐ集まってくるさ!」

 

 グラン=ヴァルドも得意げに、「カード精製に引き寄せられる“縁”というものがあるのだ」とうそぶく。

 

 その矢先――

 

 街道の先で、元気いっぱいに手を振る少年がいた。
 「リオ兄ちゃん! ミナ姉ちゃん! 今度の冒険、僕も連れてって!」

 

 懐かしい仲間・カイが、そしてさらにユリエル、ティアナ、シュトラたちも次々に合流する。

 

 「おいおい、やっぱり全員集合か!」
 リオが呆れると、
 「当然でしょ。あなたたちだけにいい格好させないわよ」
 とユリエルがウィンクする。

 

 ティアナは両手を広げて「新大陸の遺跡! 絶対新しい精製素材が眠ってるんだから!」と目を輝かせ、
 シュトラは「王都のギルドからも依頼が来ててな。やっぱりリオたちの動向が一番気になるんだよ」と相変わらずの頼もしさ。

 

 仲間たちが一人、また一人と集まってきて、旅はどんどん賑やかに、頼もしくなっていく。

 

 *

 

 王都の管理庁で最終説明を受け、
 一行はいよいよ新大陸・アストラ遺跡へ出発することに。

 

 管理庁長官・レーベンは、厳しい表情で言った。

 

 「今回の調査は、“精製バグ”と古代文明の封印が同時に関わっている可能性が高い。
  何かあれば、すぐに連絡を」

 

 リオたちはそれぞれ自作カードを手に、「絶対にみんなで帰ってこよう」と誓い合った。

 

 グラン=ヴァルドも、久しぶりの本格的な冒険に
 『全力でお前たちを守ろう。だが、トラブルの種を蒔くのはほどほどに頼むぞ』
 とボケを忘れない。

 

 リオが「その役目は主にグランだろ!」と突っ込み、
 仲間たちの笑い声とともに、新たな旅立ちの朝がやってきた。
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