【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

東野あさひ

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43話「村の精製祭りとカード騒動」

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 新たな冒険の依頼が届き、リオとミナ、仲間たちが旅の支度に追われていたある日。
 村では毎年恒例の一大イベント――「精製祭り」の準備が佳境を迎えていた。

 

 この祭りは、村の誰もが自分だけの“想い”をこめたカードを作り、それぞれ自慢しあう祝祭だ。
 お年寄りも、子どもたちも、商人も、全員がカード精製にチャレンジする。
 村の広場には色とりどりのテントが立ち並び、パンやお菓子の甘い香り、焼きたての魚や野菜の匂いが風に乗る。

 

 今年はなんと、「リオたち伝説のカード使い」も参加するとあって、例年以上に村は盛り上がっていた。

 

 *

 

 「ミナ姉ちゃん見て見て! 僕、“一番かわいいネコカード”作ったよ!」

 

 「おばあちゃんが“若返りカード”作ったの、みんな大爆笑なの!」

 

 「こらこら、カードで遊ぶのはいいけど、精製した“願い”は大切にしなきゃダメだぞ!」

 

 リオは広場の真ん中でちびっこたちに囲まれ、カードの使い方や精製のコツを指南していた。

 

 その横でミナは、
 「“想い”がちゃんとこもっていないと、カードはすぐに消えちゃうのよ」
 と優しく教えている。

 

 ユリエルやティアナも村の女の子たちに囲まれて、自作カードのアイディアで盛り上がっていた。
 カイとシュトラは、腕自慢の青年たちのバトルに混ざり、「筋肉もカードも鍛えれば光る!」と大声で笑う。

 

 グラン=ヴァルドはというと――
 「ふむ……人間たちが“お祭り”で精製するカード、どれも素朴で温かい」
 と巨大な竜の姿を小さくして、村の片隅で子どもたちの作品を観察していた。

 

 *

 

 やがて、精製祭りの“メインイベント”が始まる。
 村中のカードクリエイター志望たちが持ち寄ったカードを広場のステージに並べ、“今年一番の傑作カード”を選ぶのだ。

 

 長老が舞台の上から高らかに宣言した。

 

 「それでは今年も、村の精製祭り“傑作カードコンテスト”を始めるぞ!
  最も心を込めて作られたカードには、なんと“リオ特製のサインカード”が贈られる!」

 

 広場が大歓声に包まれる。
 リオは思わず赤面しながら「え、俺のサインカード!? 聞いてないぞ!」と慌てる。

 

 だが、子どもたちや村人の目はきらきら輝いていて、リオも苦笑いしながらうなずいた。

 

 「みんなのカード、楽しみにしてるぞ!」

 

 *

 

 ステージには、
 ・“空飛ぶにんじんカード”(畑のおばちゃん作)
 ・“おこづかいが増えるカード”(商人の息子作)
 ・“友達とけんかしないカード”(小学生作)
 ・“寝坊しても怒られないカード”(青年団作)
 などなど、個性豊かなカードが並んでいく。

 

 どのカードも“持ち主の想い”が詰まっていて、会場は笑いと感心の声で溢れた。

 

 だが――

 

 突然、事件が起こった。

 

 「キャアア! 空飛ぶにんじんが本当に空を飛び始めた!?」
 「おこづかいが勝手に小銭を吸い寄せてる!?」
 「ね、寝坊しても本当に誰も起こしに来なくなった……!」

 

 なんと、会場に集まった“珍カード”たちが一斉に暴走しはじめたのだ!

 

 空にはにんじんが何十本も舞い、村中の子どもたちは大興奮。
 商店街の小銭入れがいっせいに空っぽになり、青年団のリーダーは本当に寝袋のままどこにも現れない。
 さらには“若返りカード”を使ったおばあちゃんが、なぜか幼稚園児の姿で走り回る始末。

 

 「な、なんだこれ!? カードの“効果”が止まらない!?」

 

 リオもミナも呆然とするが、グラン=ヴァルドがふっと真顔で口を開いた。

 

 『どうやらこれは“精製バグ”の一種。
  祭りの高揚感と、皆の強い想いがカードに“過剰な力”を与えているのだろう。』

 

 ユリエルは「精製ネットワークの微細なノイズが影響してるのかも……」と冷静に分析し、
 ティアナは「でも、これは楽しいパニックだよね!」と、若返ったおばあちゃんと一緒にはしゃいでいる。

 

 シュトラは顔を青くしつつ「……寝坊カードはさすがに社会的影響が大きい」とぼやいた。

 

 *

 

 リオたちは急遽“カード鎮静作戦”を開始することに。

 

 まずは一人ひとり、自分のカードにどんな“想い”を込めたのかを再確認させ、暴走カードに向き合ってもらうことにした。

 

 リオは「カードが勝手に動くのは、君たちの気持ちが強すぎて暴走しちゃったからなんだ。大丈夫、自分で“ありがとう”って声をかければきっと落ち着くよ」と優しく呼びかける。

 

 子どもたちも、おばあちゃんも、商人も――
 自分のカードを両手で包み、心から「ありがとう」「また今度もお願いね」と語りかけ始めた。

 

 不思議なことに、それぞれのカードが少しずつ光り、暴走がおさまりはじめた。

 

 「ほら、“空飛ぶにんじん”もちゃんと畑に帰ってきたぞ!」
 「おこづかいカードも、お店に小銭を返してる!」
 「寝坊カードの青年団長も、起きてきた!」

 

 村中が拍手と歓声に包まれた。

 

 グラン=ヴァルドはうなずきながら、「“想い”の力はときに暴走するが、それを認めて向き合う心が一番大切なのだ」と語った。

 

 ミナは「みんなの気持ちがカードにちゃんと伝わって、戻ってきてくれたんだね」とにっこり微笑む。

 

 *

 

 最後に、長老が言った。

 

 「今年の精製祭りは、史上最大の騒動だったが――
  カードは“使い方”よりも“想いの込め方”が大事だと、みんな学べたようだな!」

 

 会場が笑いと拍手に包まれる中、
 リオは伝説の「サインカード」を子どもたちに配り歩いた。

 

 「お前たちの“希望のカード”、きっと世界を明るくするはずだ!」

 

 村に再び、あたたかく幸せな空気が流れた。

 

 そして、リオと仲間たちは新たな冒険に向けて、村の応援を背に旅立つ準備を始めるのだった――
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