【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

東野あさひ

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44話「新たなる仲間・謎の天才少年」

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 村の精製祭りが大盛況のうちに終わり、リオたちは新たな冒険の旅支度を進めていた。

 

 アストラ遺跡――
 王都から公式依頼を受けたリオとミナ、そして再集結した仲間たちは、村のみんなに見送られ、晴れやかな春の朝に出発した。

 

 出発の朝、ミナは村の子どもたちから「無事に帰ってきてね!」と色とりどりの手作りカードを贈られる。
 リオも「絶対にお土産話を持って帰るからな!」と力強く約束した。

 

 仲間たちは誰もが頼もしく――
 カイは大きな荷物を担いで「新しい幻獣バトルに燃えてる!」と目を輝かせ、
 ユリエルは「古代文明の謎、楽しみね」と静かに微笑み、
 ティアナは「素材集め、絶対に抜け駆けしないでよ!」とリオのリュックを覗き込む。
 シュトラは「無茶しすぎはやめてくれよ」と皆に声をかけていた。

 

 グラン=ヴァルドはミニチュア姿でミナの肩にちょこんと座り、
 『遺跡には私にも馴染み深いものが多い。心して進むがよい』と慎重な表情を見せる。

 

 道中、のどかな農村や静かな森を抜け、やがて見晴らしのよい丘にたどり着いた。

 

 丘の上には、朽ちかけた石塔がぽつんと建っていた。
 その足元で、見慣れぬ少年がひとり、夢中でカード精製を行っていた。

 

 *

 

 「……あれ? あんなところでカード作ってる子、いたっけ?」

 

 リオが不思議そうに声をかけると、
 少年はちらりと顔を上げ、興味深そうにこちらを見た。

 

 「やあ、君たちもカードクリエイターなの?」

 

 栗色の髪に、鋭い金色の瞳。
 どこか都会的で、年齢はまだリオより一つか二つ下くらいだろうか。
 身なりは質素だが、その手つきは村の誰よりも洗練されている。

 

 「ぼくの名前はアール。旅のカード職人さ」

 

 ユリエルが思わず目を見張る。「この土地でカード精製をしてるなんて珍しいわね」

 

 アールは石の上に腰掛け、穏やかに微笑んだ。

 

 「この遺跡には、不思議な“精製の気”が満ちている。カードに“想い”をこめやすい場所なんだ。君たちも試してみる?」

 

 ティアナが興奮気味に「面白そう! やってみようよ、リオ!」と叫ぶ。

 

 リオは自分のカードを手に取り、静かに精製を始める。
 カイやユリエルたちも、負けじとカードを構えた。

 

 ところが、アールの手元に現れたカードは――

 

 「……な、なんだこれ?」

 

 まるで精密機械のような緻密な紋様が刻まれ、淡く輝く青いカード。
 周囲の空気が一瞬、ピリリと張りつめる。

 

 「こ、これが君のカード……?」

 

 リオが問いかけると、アールはにこやかにカードを掲げた。

 

 「“蒼穹の光輪”カード――どんな精製師でも、まだ作ったことがないはずだよ。
  このカードには、“世界を記録する力”があるんだ」

 

 ティアナは感心して「すごい! こんなデザイン、初めて見た!」と叫び、
 シュトラも「精製の完成度が異常だ……」と呟く。

 

 しかし、ユリエルがふと顔を曇らせる。

 

 「……このカード、何か違和感がある。微細なノイズ……“バグ”?」

 

 リオも目を凝らしてアールのカードを見つめた。

 

 確かに、表面のごく端に、わずかに歪んだ模様――“バグの痕跡”のような黒いノイズが浮かんでいた。

 

 「アール、君のカード……どうして、こんなノイズが?」

 

 アールは静かに目を伏せ、しばし沈黙した。

 

 「――ぼくも、まだ全部はわからない。でも、最近精製すると、必ずこのノイズが混じる。
  そして、ぼくの記憶も、ところどころ“欠けて”いるみたいなんだ」

 

 リオとミナ、仲間たちは思わず顔を見合わせた。

 

 グラン=ヴァルドが静かに語る。

 

 『精製バグは、近年急増している。
  だが、これほどの完成度と“バグ”が共存しているカードは極めて稀有だ。』

 

 カイが「もしかしてアールは、“精製バグ”の影響を直接受けてるのかも……」と呟くと、
 アールは淡い笑みを浮かべた。

 

 「君たちは、精製祭りの騒動で“バグ”の力を体感したよね?
  でもそれは、まだ“入り口”にすぎない。
  本当に怖いのは、想いが暴走することでも、記憶が消えることでもない――
  “想いそのものが、何かに書き換えられていくこと”なんだ」

 

 その言葉に、ユリエルとリオは息を呑む。

 

 「……君は、それを止めたいのか?」

 

 リオの問いかけに、アールはうなずいた。

 

 「ぼくは、自分が“何者か”を思い出したい。そして、“このバグの真実”を知りたいんだ。
  できれば――君たちと一緒に、遺跡の奥を調査したい」

 

 リオは仲間たちを見渡した。

 

 ミナがそっと微笑む。「困っている人を助けるのは、私たちのスタイルだよね」

 

 ティアナは目を輝かせ、「絶対に一緒が楽しいよ!」と即答。
 カイは「新しい仲間が増えるのは心強いしな」と腕を組み、
 ユリエルも「この少年の“力”と“謎”を調べない手はないわ」と研究者の目を光らせる。
 シュトラは「とことん面倒見てやるさ」と笑った。

 

 グラン=ヴァルドは、重々しく頷いた。

 

 『よかろう。カードの未来と、少年の過去――
  共に歩めば、新しい答えに辿り着けるやもしれぬ』

 

 アールは、はにかみながらも嬉しそうに「ありがとう」と礼を述べた。

 

 こうして、遺跡への調査隊に“天才カード少年アール”が新たに加わることになった。

 

 *

 

 その夜、野営地でリオたちは焚き火を囲み、アールの不思議な精製技術や彼自身の過去について話し合った。

 

 「君の記憶の“欠け”は、いつごろから?」

 

 アールは少し考え、「気が付いたら、親の顔も、村の名前も思い出せなくて……。
 でも、カードを作っていると、ほんの一瞬だけ、“すべての想い”が戻る気がするんだ」と語る。

 

 リオはしんみりと、「カード精製は、自分の心と向き合う旅でもある。
 アール、お前の“想い”を一緒に探そう」と語った。

 

 ミナも、「私たちが傍にいるから、どんな謎でも一緒に立ち向かおう」と手を重ねる。

 

 アールは焚き火の揺れる光の中で、初めて安堵したように笑った。

 

 仲間たちのあたたかさと、“カード精製”という共通の絆。
 それは、やがて来たる新たな危機を前に、少年たちに大きな勇気と力を与えていく――
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