【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

東野あさひ

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61話「新大陸からの招待状」

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 新しい時代が始まってから、季節がひとつ巡った。

 

 リオの村は、相変わらず穏やかだった。朝には鳥がさえずり、畑にはやわらかな日差しが差し込む。ミナとリオは村の丘の上に座り、心地よい春風に吹かれながら、日々のささやかな幸せを噛み締めていた。

 

 「ねえリオ、最近またカード作りの相談が増えたわね」

 

 ミナが笑いながらそう言う。リオは肩をすくめて、手元の草花カードを空にかざした。

 

 「みんなが“希望のカード”を作る時代になったんだもんな。うれしいけど、ちょっと不思議な気分だよ」

 

 世界のどこでも、誰でも、カードを精製できるようになった。村の子どもたちは自分だけの“冒険カード”を作り、大人たちは家族の無事を祈る“守りのカード”を作った。
 カードが人々の生活と心に根付いていく。
 それは平和で、どこまでもやさしい日常だった。

 

 その日、リオの家に珍しい来訪者があった。

 

 「リオ様、ミナ様、おられますか?」

 

 村長があたふたと扉を開け、立派な異国風の衣装に身を包んだ人物が一緒に立っていた。
 その者は浅黒い肌に銀の刺繍が輝くマントをまとい、胸元には見慣れぬ紋章が光っている。

 

 「……どちら様でしょうか?」

 

 ミナが首をかしげて訊ねると、使者は丁寧に頭を下げた。

 

 「私は“新世界大陸・アルカナシティ”より参りました、精製連盟本部の使者アルベールと申します。
 リオ=バルド様、あなたと、ミナ=リュミエール様に公式の招待状をお届けに参上いたしました」

 

 「アルカナシティ……新世界大陸?」
 リオは思わず繰り返す。

 

 使者は誇らしげに頷いた。

 

 「はい。今や世界各地で精製技術が発展し、我が大陸でも“希望の精製”は日常となりました。
 そこで“世界精製連盟”を設立し、王都で連盟式典を開催いたします。
 リオ様――あなたは、世界が認めた“最強の精製師”。ぜひ式典の名誉ゲストとしてご出席いただきたく」

 

 ミナは目を丸くした。

 

 「まさか、リオが……本当にすごいことになっちゃったわね」

 

 リオは耳まで真っ赤になりながらも、どこか誇らしげにうなずいた。

 

 「うん。俺……行ってみたい。“新世界”ってどんな場所なんだろう。
 きっと、まだ見たこともない景色やカード、出会いが待ってる」

 

 村長は困ったように笑いながらも、「リオなら大丈夫だ」と太鼓判を押した。

 

 「村のみんなも応援してるぞ。お前たちの旅は、もう村だけのものじゃない。世界の希望を広げてくれ」

 

 「ありがとう、村長さん。……ミナ、一緒に行こう」

 

 「もちろん!」

 

 *

 

 その夜、リオは家の中でグラン=ヴァルドのカードを見つめていた。

 

 『新しい旅だな、リオ。世界は広い。そして、“希望”が広がれば広がるほど、必ず“影”も生まれる』

 

 グラン=ヴァルドの声は、どこか慎重で優しい。

 

 「うん。……俺、ちゃんと胸張って世界に出たい。
 けど、ちょっとだけ怖いかも。今度の旅は、“精製師”としてだけじゃなくて……人としても試される気がする」

 

 『怖れることはない。お前の歩んだ道は、もう伝説だ。だが“伝説”に縛られるな。
 新しい物語を、またお前自身が紡げばよい』

 

 リオは静かにカードを握りしめ、星空を見上げる。

 

 ミナも隣でそっと手を握ってくれた。

 

 「リオ、大丈夫。私たちは二人で乗り越えてきたよ。新しい世界も、きっと楽しめる!」

 

 「ありがとう、ミナ。……よし、行こう。“新世界”へ!」

 

 *

 

 数日後――

 

 村の広場には、たくさんの見送りの人々が集まっていた。
 子どもたちが「リオ兄ちゃん、ミナ姉ちゃん、お土産話たくさん聞かせてね!」と声をかける。
 年配者や親たちも「困ったことがあれば、いつでも戻っておいで」と優しく背中を押してくれる。

 

 カイ、ティアナ、ユリエル、アール、シュトラたち仲間も、
 それぞれの道を歩みながらも、「新大陸で会おう」と約束のメッセージを送ってくれていた。

 

 「リオ、気をつけてな。俺も絶対そっちに行くから!」

 

 「精製の研究、負けないわよ」

 

 「新しいバトル、絶対一緒にやろうぜ!」

 

 リオとミナは、涙と笑顔の中、旅支度を整えた。

 

 「グラン=ヴァルド、いこう!」

 

 『ああ、リオ。新世界の扉が、お前を待っている』

 

 村をあとにして歩き出す二人。
 春風が、未来への旅路をやさしく撫でていた。

 

 ――新たな冒険のはじまり。
 まだ見ぬ新世界で、リオとミナ、そして仲間たちの物語が、再び大きく動き出そうとしていた。
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