【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

東野あさひ

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60話「また、旅がはじまる」

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　世界に再び平和が訪れてから、しばらくが過ぎた。
　王都も村も、どこを歩いても穏やかな日常が広がり、人々の手には希望のカードが輝いている。
　子どもたちの笑い声、大人たちの歌声、幻獣たちの穏やかな寝息――
　すべてが「未来」の始まりを優しく告げていた。

　

　リオは朝焼けの村の丘に立っていた。
　手には、自分が最初に作った草花のカードと、覚醒した「守護竜グラン＝ヴァルド」のカード。
　胸の奥には懐かしさと、ほんの少しの寂しさ、そして新しい希望が入り混じっていた。

　

　「もう“冒険”は終わったんじゃない。ここからまた始まるんだ」

　

　リオは自分にそう言い聞かせ、振り返る。
　そこには、荷造りを終えたミナが立っていた。

　

　「待たせた？　ほら、忘れ物しないでよ」

　

　ミナの手には、村の子どもたちが作った花飾りと、旅の無事を願うカードが握られていた。
　二人は静かに微笑み合い、丘を降りていく。

　

　広場では村人たちが集まり、二人を見送る準備をしていた。

　

　「リオ兄ちゃん、ミナ姉ちゃん、また絶対帰ってきてね！」
　「お前たちが守ってくれた村は、もう大丈夫さ。いつでも戻っておいで」
　「今度こそ、世界一の精製師になるんだぞ！」

　

　子どもたち、年寄りたち、友人たち。
　ティアナやカイ、ユリエル、シュトラ、アール……これまで旅をともにした仲間たちも、それぞれの道へ歩き出す時を迎えていた。

　

　カイはギルドの訓練場で子どもたちのバトルを見守り、ティアナは港町の診療所で新しいカード療法の研究に没頭している。
　ユリエルは世界中の精製ネットワーク管理の要職に就き、アールは新しい「記憶のカード」研究を続けていた。
　シュトラは王都の守護隊長となり、町の平和を守っていた。

　

　仲間たちは、笑顔でリオとミナの旅立ちを祝福した。

　

　「またどこかで会おうぜ、リオ！」
　「絶対に無理はしないでよ。ミナ、リオを頼んだよ」
　「新しい時代の精製師として、恥ずかしくない背中を見せてね！」

　

　リオとミナは、仲間たち一人ひとりと固い握手を交わし、
　そして村の母親、家族のもとへ歩み寄った。

　

　「母さん、行ってくるよ。必ずまた帰るから」

　

　「大丈夫、リオ。あんたなら、きっとどんな未来も切り開けるよ」
　「ミナも――リオのこと、よろしくね」

　

　ミナは母親の手を強く握り、そっと微笑んだ。

　

　「また必ず、一緒にご飯食べましょうね」

　

　家族の温かさと、村人の応援に背を押され、二人は村をあとにする。

　

　＊

　

　道中、リオはグラン＝ヴァルドのカードを胸元で握りしめた。
　その瞬間、竜の声が優しく響く。

　

　『リオ――この時を待っていた。お前と共に旅することで、私は“守護竜”として覚醒した。
　だが、守るべき未来は、まだまだ無限に広がっている。
　私はこれからも、お前の旅路を見守り、導こう』

　

　「うん、グラン＝ヴァルド。俺も、もっと強くなってみせる。
　カード精製も、人との絆も――全部、もっと深く追求して、
　“本当の希望”を世界に広げたいんだ」

　

　ミナは隣でリオの手を握り、「ふたりなら、どんな未来も怖くないよ」と優しく囁いた。

　

　＊

　

　王都へと続く街道を進む二人。
　途中、精製カードを使った子どもたちの遊びに誘われたり、
　新しい精製技術を試す若き精製師と出会ったり――
　小さなトラブルや笑い声の絶えない道のりとなった。

　

　途中の町では、新たなカード大会が開催されていた。

　

　「リオさん！　ぜひ参加してください！」

　

　子どもたちの熱意に押され、即席チームを作って参加するリオとミナ。

　

　カードバトルで見事優勝し、「伝説の旅団」の名は再び町中に広がっていく。

　

　＊

　

　夜、野宿のテントでリオとミナは焚き火を囲みながら、これまでの旅路と、これからの未来について語り合った。

　

　「不思議だな。大きな戦いが終わったはずなのに、
　こうしてまた新しい冒険が始まってる」

　

　「うん。きっと私たちは、止まれないんだよ。
　“希望”は、歩き続けることで見つけるものなんだと思う」

　

　空には満天の星が広がり、遠くにはグラン＝ヴァルドの守護の光がきらめいていた。

　

　「明日も明後日も、その先も……何が起こるか分からないけど、
　“俺たちらしく”進もう」

　

　「うん、絶対に！」

　

　ふたりは笑い合い、新しい旅への決意を固めた。

　

　＊

　

　その頃、グラン＝ヴァルドは守護竜として、
　世界中の精製ネットワークを見守っていた。

　

　絶望の影が戻らぬよう、希望が絶えることのないよう、
　彼は空の彼方から人々の願いと夢を受け止め、
　時に“伝説の竜”として、また時に「リオの相棒」として、
　新しい世界の守護者であり続けていた。

　

　仲間たちも、それぞれの場所で新たな挑戦と成長を続けている。

　

　世界は変わった。それでも、「希望」という言葉は、どこまでも広がっていく。

　

　＊

　

　朝日が昇る。

　

　リオとミナは、また新たな道へと一歩を踏み出す。

　

　「じゃあ、いこうか」

　

　「うん！」

　

　――旅路はまだ、続く。
　まだ見ぬ出会いと冒険、新しい希望が、二人と世界を待っている。

　

　俺たちの物語は、まだまだ続く――

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