きっと最後の恋です。貴方が望むのならば、婚約などどうでもいいです。

青杉春香

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想い

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「彼はずるいですね。ミレーヌ様にこんな想いをさせるなんて……。ですが、彼なりの最大限の優しさであることにミレーヌ様自身も気づいていらっしゃる」

「ええ……もちろんです」

私の婚約者は、少しばかり前に私をフった。

婚約破棄を申し出たのだ。

唐突だった。


彼を心の底から愛していた私は、時が止まったような、数秒の長い時を過ごした。

愛していたのは私だけだったのだろうか、彼は何とも思っていなかったのだろうか。

いろんなことが頭をよぎり考えてしまった。

だけど、私は彼を嫌いになれなかった。

それはもう、ただただ好きが増すばかりで。

親同士が決めた婚約ではあった。

国のための結婚という目的ではあった。

でも私にとってはそんなことは本当にどうでもよくて、彼を愛していた。

人生で彼のような素敵な殿方に出会えたことを今でも感謝している。

彼と結ばれないのであれば、一生独り身でもいいと感じる。

いいえ、いっそのこと……

「どうして先に行ってしまわれたのですか……言ってくだされば私も一緒になったというのに」

「ミレーヌ様、その辺で……気が気じゃないのは充分に理解はしているつもりではありますが」

私に話しかけてくれているのは、いつも私と彼の世話係を担当していたもの。

元々は向こうの使いだが、家柄など関係ないくらいに親切にしてくれる。

私と彼のことを第一に考えてくれる人なのだ。

「わかっていますよ。ただの戯言です。ですが、ズルいですね……」

「ああ。全くです」

私の婚約者は私に嘘をついていた。

彼はもうすでにこうなることがわかっていた。でも、そんなこと微塵も感じさせないように毅然に振る舞っていたのだ。

今頃、天国を彷徨っている彼に、私は何を想えばいいのでしょう。

ありがとう。

今は、それだけにしておきましょう。

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