妹なんてすぐに譲ります。その代わり婚約破棄した罰として復讐されてください。

青杉春香

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2話

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ルシオンは最初から、妹目当で私に近づいてきた。

今思えば、ことあるごとに彼はマリナのことを尋ねてきていた。

「マリナは元気かい?」「マリナとは最近どうなの?」「マリナは何が好きかな」

マリナ、マリナ、マリナ、マリナ……とよく言っていた。

そして、マリナもルシオンのことを大変気に入っていて、彼の話題になるとすぐに目の色を変えて、楽しそうに話をしていた。

相思相愛だったのだろうか。

それならいい。二人がさえいれば、姉の私からしてみても微笑ましいことだ。

けれど、そうではなかった。

ルシオンとマリナは、お互いにお互いの気持ちをわかっていて、わざと私を貶めるような真似をしたということだ。

そうでなければ、はなっから二人が婚約をすればいいだけなのだ。

なんとなくだが、二人とも私に対して悪意やら敵意、そういうものがあったのかもしれない。

妹の恨みならばなんとなくわかる。

マリナは腹違いの妹なのだ。

そのせいで、家では扱いが違う。

私の方が優遇されて、マリナの方が若干、冷たくされている気がする。

私の目から見てもそれがわかるときは、家の人に言いつけるようにしている。

マリナはそれを嫌がるけれど、ただ単に私が差別を許せないのだ。

でも、マリナからしたら虚しくなるだけで迷惑なのかもしれない。

ルシオンに関してはわからない。

そもそも、婚約者となったときも巷では、ルシオンが財産と地位目当で私を狙っている、なんて言われていたくらいだ。

何が狙いなんだろうか。

でも結局は、マリナを愛していたわけだし。

家で優遇されている私と婚約を申し込む方が、マリナと接点を持ち易かったという話なら合点がいく。

だとすると、マリネのことをルシオンはかなり前から愛していたのだろうか。

それでいて、私に会うたびに、愛しているだなんて告げていたと思うと、なんだか寒気がしてくる。そして腹立たしい。


今頃二人はどうしているのだろうか。

私が婚約破棄されることになって、両親も不服そうだったけれど、マリネとルシオンが結婚をすることは既に承諾したらしい。

二人のことを他の人がどう思ってるかは知らないが、二人は婚約破棄だけでなく、稚拙な嫌がらせもしている。

私がパーティー会場に取り残された後、妙な噂を聞いたのだ。

私が遊び人で浮気ばかりしている。だからルシオンに捨てられたんだ。

とか、

私がマリネに普段からすごい暴力を振るっている。

とか、

最初から婚約はルシオンとマリネがする予定だったのを、私が邪魔して自分と差し替えた。

他にも色々聞こえてきた。

とても悲しかった。

涙のせいで、視界がずっとぼやけたまま、城に帰った。

当然、そこに妹たちはいない。

いるのは、両親と執事だけだった。

私が帰るなり、悲観的な目線を向けられた。

全てが嫌になって、すぐに自室のベッドに寝転んだけれど、眠れるはずもなかった。

いっそこのまま死んでしまおうかとも考えたけれど、それよりはやっぱり、二人への復讐心に燃えた。

それからここ数日間、どんな方向でどう復讐してやるかと、幾度も考え抜いた結果、私は彼らに同じ思いをしてもらうことにした。


いいや、それ以上かもしれない。



二人には、家名に泥を塗るような存在として世間的に認知させ、地位も名誉も財産も全て無くした後に、二人きりで幸せに夫婦生活を迎えてほしいと考えている。

それに対する計画はまだ段階途中だけれど、ある程度固まってきたため、明日にでも実行してみようと思う。

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