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5話
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次に向かったのは、スープが美味しいと評判の喫茶屋だ。
店内の雰囲気はとても落ち着いて、やや狭い。客層も階級の高い人間が多い気がする。
予想どおり、これは、好都合に尽きる条件だ。
私は、ここで美味しい料理を嗜んで、優雅なひとときを過ごそうなんて考えているわけではない。
この場所で、待ち合わせをしている人がいるのだ。
店内の見渡しても、まだその人の姿はどこにも見当たらない。
なので私はカウンターの隅の席に腰をかけて待つことにした。
その際、コーヒーを一杯だけ頼んだ。
「お待たせしました。ちょっと、道が混んでまして」
そう声をかけられたときには、予定より二十分ほど遅れた時刻だった。
不服ではあったものの、仕方のないことだから咎めることはしない。
むしろ、こんなところまで足を運んでくれたことに感謝の気持ちでいっぱいだった。
だって、その人物は……
「いいえ。お構いなく。こうして来てくださったことだけで私は頭が上がらない思いです。久しぶりですね。タルト様」
タルト様は、ルシオンの実の兄であり、唯一の私の味方なのだから。
店内の雰囲気はとても落ち着いて、やや狭い。客層も階級の高い人間が多い気がする。
予想どおり、これは、好都合に尽きる条件だ。
私は、ここで美味しい料理を嗜んで、優雅なひとときを過ごそうなんて考えているわけではない。
この場所で、待ち合わせをしている人がいるのだ。
店内の見渡しても、まだその人の姿はどこにも見当たらない。
なので私はカウンターの隅の席に腰をかけて待つことにした。
その際、コーヒーを一杯だけ頼んだ。
「お待たせしました。ちょっと、道が混んでまして」
そう声をかけられたときには、予定より二十分ほど遅れた時刻だった。
不服ではあったものの、仕方のないことだから咎めることはしない。
むしろ、こんなところまで足を運んでくれたことに感謝の気持ちでいっぱいだった。
だって、その人物は……
「いいえ。お構いなく。こうして来てくださったことだけで私は頭が上がらない思いです。久しぶりですね。タルト様」
タルト様は、ルシオンの実の兄であり、唯一の私の味方なのだから。
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