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前編
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私の婚約者は由緒正しいディケイド伯爵家の跡取りデル様だった。
だったというのは先日、それが撤回されたからだ。
なんでも、真実の愛に気づいてしまったとかなんとかで……要するに私への興味も愛も薄れて、いいやなくなったということだろう。
辺鄙な田舎貴族の私との婚約など、広大な土地目当てか、本当に私を気に入ったからのどちらかしかない。
今となってはそれもどうだっていいけれど、少なからず私は彼を想う気持ちがあった。
これまで恋愛というものをしたことはなかったけれど、彼には初めて恋心というものが芽生えた。そんな相手なのだ。
だから落ち込むことは許して欲しい。
なのに、デル様は今になって私の元に戻ってきたのだ。
やっぱり君がいいと。
そんな安易に心が揺らぐような殿方は信用もできない。
何よりあんなに唐突に酷い別れを告げられたというのに今更……。
正直なところ私は疑っているのだ。
これには何か裏があると。
そうでもなければ、戻ってくるなんてありえない。
「…………」
彼の真意を確かめるべく、私は手段を考える。
**************
「そしたら、あの人……」
今日もまたいつものように友人のリズとお喋りをしている。
この時間は毎日とても楽しい時間だが、最近は少し悩み事が増えた気がしてならない。
というのも最近、何故か友人である彼女の様子がおかしいと思うようになったからである。
いや、以前から彼女は特殊な人だったけれど、もっと落ち着いた感じの子だったはず。
それが今は想い人ができたらしく、人が変わったかのように明るく活発になっている。
それはとても喜ばしく思うし応援したいのだが、その相手がなんとも困った人物だと言うことが問題。
デル様だったのだ。
彼は以前まで男爵令嬢であったタルトさんに夢中になっていたはずだ。
それこそ私が嫉妬してしまうほどには。
真実の愛というのもきっとタルトさんのことなのだろうと思っていた。
しかし、今度は別の女性に手を出しているらしい。……一体何を考えているのかしら?
殿方として私の中では最底辺の人という扱いに変わった。
私が恋をした男性はとてつもないクズだったのかもしれない。それでもまだほんのわずか彼を好きだと思っている自分がいる。
こんなにも簡単に捨てられる程度のものだったんだわと思い知らされるようで悲しかった。
「ねぇ、聞いてる?」
ダメだ。つい考え込んでしまっていて話を全く聞いていなかったようだ。
ここはちゃんと誤魔化しておこう。「えぇ、もちろん。それでその後どうなったの?」
「それが……」
その後も結局話は上の空になってしまい、ほとんど聞き流してしまったが、彼女も楽しそうだしいいかと諦めた。
彼女に本当のことを告げたらどうなるのか。それは考えたくもない。
婚約のことは表立って話していたことではないため、彼女は知らないのだ。
もしかするとおいおいわかることだろう。
だけど、親友である彼女まで裏切るようなことをしたら私は彼を許せない。
だったというのは先日、それが撤回されたからだ。
なんでも、真実の愛に気づいてしまったとかなんとかで……要するに私への興味も愛も薄れて、いいやなくなったということだろう。
辺鄙な田舎貴族の私との婚約など、広大な土地目当てか、本当に私を気に入ったからのどちらかしかない。
今となってはそれもどうだっていいけれど、少なからず私は彼を想う気持ちがあった。
これまで恋愛というものをしたことはなかったけれど、彼には初めて恋心というものが芽生えた。そんな相手なのだ。
だから落ち込むことは許して欲しい。
なのに、デル様は今になって私の元に戻ってきたのだ。
やっぱり君がいいと。
そんな安易に心が揺らぐような殿方は信用もできない。
何よりあんなに唐突に酷い別れを告げられたというのに今更……。
正直なところ私は疑っているのだ。
これには何か裏があると。
そうでもなければ、戻ってくるなんてありえない。
「…………」
彼の真意を確かめるべく、私は手段を考える。
**************
「そしたら、あの人……」
今日もまたいつものように友人のリズとお喋りをしている。
この時間は毎日とても楽しい時間だが、最近は少し悩み事が増えた気がしてならない。
というのも最近、何故か友人である彼女の様子がおかしいと思うようになったからである。
いや、以前から彼女は特殊な人だったけれど、もっと落ち着いた感じの子だったはず。
それが今は想い人ができたらしく、人が変わったかのように明るく活発になっている。
それはとても喜ばしく思うし応援したいのだが、その相手がなんとも困った人物だと言うことが問題。
デル様だったのだ。
彼は以前まで男爵令嬢であったタルトさんに夢中になっていたはずだ。
それこそ私が嫉妬してしまうほどには。
真実の愛というのもきっとタルトさんのことなのだろうと思っていた。
しかし、今度は別の女性に手を出しているらしい。……一体何を考えているのかしら?
殿方として私の中では最底辺の人という扱いに変わった。
私が恋をした男性はとてつもないクズだったのかもしれない。それでもまだほんのわずか彼を好きだと思っている自分がいる。
こんなにも簡単に捨てられる程度のものだったんだわと思い知らされるようで悲しかった。
「ねぇ、聞いてる?」
ダメだ。つい考え込んでしまっていて話を全く聞いていなかったようだ。
ここはちゃんと誤魔化しておこう。「えぇ、もちろん。それでその後どうなったの?」
「それが……」
その後も結局話は上の空になってしまい、ほとんど聞き流してしまったが、彼女も楽しそうだしいいかと諦めた。
彼女に本当のことを告げたらどうなるのか。それは考えたくもない。
婚約のことは表立って話していたことではないため、彼女は知らないのだ。
もしかするとおいおいわかることだろう。
だけど、親友である彼女まで裏切るようなことをしたら私は彼を許せない。
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