備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず

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第1章 ココどこですか?

金曜日の夜にラッキーの神様が微笑んだ?!

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  金曜日、20時45分。
なんてラッキーな日だ。この会社に入ってから金曜日に21時前に帰れるなんて数える程しかない。

  これなら「まんぷくパン」の売り切りバーゲンに間に合うかもしれない。

会社の正面玄関を出て、まだ熱気のこもる空気を浴びながらも楽しい想像に頬が緩むのを止められない。
表情筋が死滅している矢作の笑顔は不気味と有名だ。犬なら必ず吠えられるし子供も泣き出すのが当たり前。
それが分かっているから、普段から笑顔は控えめにする努力をしていた。
それを忘れるほどのラッキー。

会社から5分の場所にある「まんぷくパン」へ着いた矢作は自動扉が開いた途端、コーナーの隅へと急いだ。
売り切りバーゲンは会社帰りの主婦の目玉商品だ。売れ残っているのがマレなのだ。

だが、ラッキーの神様は見捨てなかった。
「パンの耳」袋が2袋も残っていた。

何度も重ねた赤札は今や【80円】
浮き足立つとはこの事かと、2袋を掴むとレジへと急いだ。
残り物しか買わない矢作にも、この店のレジのおばさんは優しい。

「お帰り。今日は珍しく間に合ったね。普段は土日しか来れないのにね。オマケだよ。クッキーが割れちゃってね。良かったら持っておゆきよ。」

ああ、良い人過ぎる。
満面の笑みでお礼を言う矢作に、びっくりしない程度には顔見知り。
ここら辺で1番旨いパン屋なのだ。入社して以来ずっと通っているのだ。

今日のラッキーは凄すぎた。
パン屋の帰りに、何時もは既に閉まっている【肉屋 木村】と【青木青果店】もまだ店じまいしてなかった。

「またアンタかい。」
肉屋木村のおばさんは矢作に厳しい。
そりゃ、揚げ玉ばかり買って帰るのだから儲からない客だ。
しかも値切り品ばかり。

「でも、好都合だ。今日に限ってコロッケは残るしポテトフライもこんなに余って困ってたんだ。いつもの揚げ玉と一緒に【500円】で良いよ。」

えっ。
絶句して固まった。

投げやりになったおばさんは、この店の奥さんだ。いつもはケチで有名なのに一体。

「もうすぐ、息子が孫連れて帰って来るのよ。」

なるほど。
やっぱり今夜のラッキーの神様は大盤振る舞いらしい。

その後も青果店、魚屋など商店街の様々な店で値切り品を買い漁り両手に大荷物で帰宅の道を弾む足取りで歩いていた。

大通りから脇道に入ると、昔ながらの路地が続く。車も入れない狭い路地の奥に住み慣れた我が家がある。
まあ、我が家と言っても築20年の賃貸アパートだ。壁の薄さが郡を抜いていて人気はない。両隣も今は空き家だ。

大荷物が腕にくい込み始めた頃、ようやくドアの前に着いた。こんな日に限って鍵をポケットでは無くカバンの奥にしまっていた。

沢山の書類の中から(もちろん、在宅残業の書類だ)必死に鍵を探り当て鍵を差した途端。

ピカッ。

ま、眩しい。
目くらましか。もしかして、泥棒か強盗などか。いやいや。こんな古アパートにまさかな。

そうか。停電だ。
古いアパートにはありガチだ。停電の前に
光る事は間々ある。

そう思い直してドアノブを回した瞬間。

ふわっと。
そう身体が浮き上がったのだ。

えっ?何だ??
何が起きたのだ?
もしかして、またもや脳貧血で倒れたのか。せっかく買った値切り品が潰れる。
はぁぁぁ。
やっぱりラッキーの神様は最後まで矢作の側には居られないらしい。

そんな事を考えながらも真っ暗になる直前に誰かに名前を呼ばれた気がした。
が、それも一瞬の事。
矢作の意識は、その事も記憶に留めないまま暗闇に沈みこんでいった。
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