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司会役の説明が終わると、南の口が開いた。
「今度の不祥事ってのはね、向こうさん、エックスデー側がね、言論とか報道の自由だとか言って、おれやおれの周りの人たちを撮り続けてたんです。それはいいんですよ。でもね、おれとしてもプライベートを守る自由ってものがあるわけで」
「それに対して具体的な態度を取ったわけですが、そのために暴力を使ったり、弟子たちを巻き込んでしまったことに限っては、本当に反省しております」
頭を深々と下げた南の、長い釈明が終わる。
「今回のことは、刑務所行きや引退覚悟でやったんですか?」
記者のひとりが質問してきた。
「現場で逮捕されましたから。逮捕された時点じゃあ、警察にひっぱられるのは当然と思いましたよ。暴れたことは暴れたんだから」
南はあせる様子もなく、淡々と答える。
「すぐに釈放されて、芸能界復帰は近いと聞いています。それに対してどう思いますか?」
「結果はどうなるかっていうのは、まだわかりませんね。まあ、テレビ局の要請がありましたんでね、ビデオ撮りくらいはやっておこうかって思ってますよ」
「お茶の間のアイドルとして、社会に与える影響は非常に大きいと思いますが、事件を起こした後の今のお気持ちは?」
女性の声がした。
敏雄は声の主を知っていた。
某テレビ局のアナウンサーだ。
「お茶の間のアイドルなんて、おれのほかにも山ほどいるだろう。おれひとりでテレビを切り盛りしているわけじゃないんでね。あと、おれの行動が世間の子どもたちに悪影響だって主張してる人がいるね。もしそうなら、その親たちが「アレは南健司が悪いんだ。絶対にマネするじゃないぞ」と教えてやるべきだと思ってる」
「写真雑誌に対する現在の考え方は?」
別の雑誌記者が聞いた。
以前会ったことがある、敏雄の顔見知りだ。
「お互い因果な将来だと思うよ。今回殴られた人は、オレには殴られるわ、家族にはお父さんそんな商売やってんのかと言われるわ、いやな思いしてるだろうし、そうすると当事者同士がいちばん酷い目にあったってことですよ。オレも酷い目にあって、向こうも酷い目にあってる。どっちが悪いとかいう問題じゃない」
「殴られてケガした人に対してはどう思っていますか?」
「申し訳ないと思ってる」
「お弟子さんたちには?」
「同じです。申し訳ないと思ってます」
尋問は続くが、南の様子は変わらない。
「引退するだとか、そういうことは考えたのでしょうか?」
女性アナウンサーの隣に立っていた男性記者が質問した。
「引退するだとか、そういうことは20代から考えてるよ、いまに始まったことじゃなくて。いつでも面白くなくなる前に辞めたいと思ってる。芸能界入ったときから、ずっと考えてる」
南の冷静さは、相変わらず崩れない。
今度は敏雄の番だ。
「ひとりで行く、という手段は考えられなかったんですか?」
敏雄は、南の顔をじっと見つめた。
自分が暴行した記者がここにいるとなれば、少しはあせるだろうと期待していた。
「ひとりで行くのは、おっかなかったね」
南が簡潔にそう答えたと同時に、敏雄と南はしっかりと、寸分の狂いもなく目が合った。
その獲物を見据える猛禽類のような瞳を、敏雄は二度と忘れることができなくなった。
「今度の不祥事ってのはね、向こうさん、エックスデー側がね、言論とか報道の自由だとか言って、おれやおれの周りの人たちを撮り続けてたんです。それはいいんですよ。でもね、おれとしてもプライベートを守る自由ってものがあるわけで」
「それに対して具体的な態度を取ったわけですが、そのために暴力を使ったり、弟子たちを巻き込んでしまったことに限っては、本当に反省しております」
頭を深々と下げた南の、長い釈明が終わる。
「今回のことは、刑務所行きや引退覚悟でやったんですか?」
記者のひとりが質問してきた。
「現場で逮捕されましたから。逮捕された時点じゃあ、警察にひっぱられるのは当然と思いましたよ。暴れたことは暴れたんだから」
南はあせる様子もなく、淡々と答える。
「すぐに釈放されて、芸能界復帰は近いと聞いています。それに対してどう思いますか?」
「結果はどうなるかっていうのは、まだわかりませんね。まあ、テレビ局の要請がありましたんでね、ビデオ撮りくらいはやっておこうかって思ってますよ」
「お茶の間のアイドルとして、社会に与える影響は非常に大きいと思いますが、事件を起こした後の今のお気持ちは?」
女性の声がした。
敏雄は声の主を知っていた。
某テレビ局のアナウンサーだ。
「お茶の間のアイドルなんて、おれのほかにも山ほどいるだろう。おれひとりでテレビを切り盛りしているわけじゃないんでね。あと、おれの行動が世間の子どもたちに悪影響だって主張してる人がいるね。もしそうなら、その親たちが「アレは南健司が悪いんだ。絶対にマネするじゃないぞ」と教えてやるべきだと思ってる」
「写真雑誌に対する現在の考え方は?」
別の雑誌記者が聞いた。
以前会ったことがある、敏雄の顔見知りだ。
「お互い因果な将来だと思うよ。今回殴られた人は、オレには殴られるわ、家族にはお父さんそんな商売やってんのかと言われるわ、いやな思いしてるだろうし、そうすると当事者同士がいちばん酷い目にあったってことですよ。オレも酷い目にあって、向こうも酷い目にあってる。どっちが悪いとかいう問題じゃない」
「殴られてケガした人に対してはどう思っていますか?」
「申し訳ないと思ってる」
「お弟子さんたちには?」
「同じです。申し訳ないと思ってます」
尋問は続くが、南の様子は変わらない。
「引退するだとか、そういうことは考えたのでしょうか?」
女性アナウンサーの隣に立っていた男性記者が質問した。
「引退するだとか、そういうことは20代から考えてるよ、いまに始まったことじゃなくて。いつでも面白くなくなる前に辞めたいと思ってる。芸能界入ったときから、ずっと考えてる」
南の冷静さは、相変わらず崩れない。
今度は敏雄の番だ。
「ひとりで行く、という手段は考えられなかったんですか?」
敏雄は、南の顔をじっと見つめた。
自分が暴行した記者がここにいるとなれば、少しはあせるだろうと期待していた。
「ひとりで行くのは、おっかなかったね」
南が簡潔にそう答えたと同時に、敏雄と南はしっかりと、寸分の狂いもなく目が合った。
その獲物を見据える猛禽類のような瞳を、敏雄は二度と忘れることができなくなった。
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