【完結】週刊誌の記者は忘れられない

若目

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夜のお誘い

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食事を済ませた後、青葉は風呂も貸してくれた。
敏雄は「1日くらい風呂に入らなくても構わないだろう」と断ったが、青葉が「遠慮しなくていい」と言ってくれたので、お言葉に甘えて入ることにした。


「シャツ買い忘れた…」
借りたバスタオルで体を拭き終わり、下着を履いた後になって気がついた。

──仕方ない、着回すか…

同じものを2日続けて着ることには抵抗があったものの、無いものはどうしようもない。
そう考えて、脱衣所から出た。

「あ…ちょっと!伊達さん!!」
下着一枚で出てきた敏雄を見て、青葉はかあっと顔を赤らめた。
「んだよ?」
こんな中年の裸に驚くなんてどうかしているとは思うが、青葉をからかうのが楽しくて仕方がない敏雄は、わざと青葉の方へ近づいていった。

「服を着てください!」
「シャツ買い忘れたんだよ」
「貸しますから!」
青葉は機敏な動作で隣の部屋へ駆け込むと、ガサゴソ音を立てて、すぐにリビングに戻ってきた。

「ほら、これ着てください!」
青葉が、まだ真新しい白い長袖シャツを渡してくる。
「いいのか?これ、結構最近買ったばっかなんじゃねえの?」
シャツを手に取って、敏雄はタグや生地なんかをまじまじと見た。
「別にいいですから、服を着てください!!」
「わかったわかった」
青葉のあわてた様子を思う存分楽しんだ後で、敏雄はシャツを着込んだ。

「はっはっは。ブカブカだなあ、コレはアレだな、彼シャツってヤツか?」
いざ着てみると、袖も裾も余って隙間ができ、襟ぐりも大きく開く。
敏雄は改めて、青葉と自分の体格の違いを実感した。

「ふざけていないで、下も履いてください」
青葉がスウェットのズボンを出してくれた。
それを受け取って履いてはみるものの、ウエストはブカブカで、あっという間にずり落ちてしまう。
「下は履けねえから、このまま寝るわ」
「そんな…」
ただでさえ真っ赤だった青葉の顔が、より一層赤くなる。

「わかりました。部屋がもう一つあるんで、そこで寝てください」
青葉が隣の部屋を指さす。
指さす場所へ視線を移すと、その部屋にはベッドとハンガーラックしか置いていなかった。
ハンガーラックには、春夏物の服がいくつもかけてある。
これを見るに、どうやらその部屋は寝室兼クローゼットとして使われているらしい。

「お前はどこで寝るんだ?」
「ここで寝ますよ」
リビングの床に、分厚い毛布が敷いてある。
敏雄が風呂に入っているうちに、どこかから引っ張り出してきたのだろう。
青葉は床で寝るつもりなのだろうが、これでは寝違えてしまいそうだ。

「これじゃあ寝苦しいだろ」
「お客さんを床に寝かせるわけにはいかないですよ。ほかに布団もないし」
「じゃあ、一緒にベッドで寝ようか」
敏雄は、自分の体を擦り付けるように青葉に抱きついた。

「えっ⁈」
予想外の提案に加えて、突然抱きつかれたことに、青葉は心底驚いたらしい。
肩をビクッと震わせて、戸惑いの表情を浮かべた。
「俺たち恋人同士だろ?一緒に寝ようぜー?」
敏雄は年若い少女が父親におねだりをするみたいに、上目遣いで青葉を見つめた。

「そりゃあ、そうですけど…」
「じゃあ、問題ないだろ。それとも何か?あんなに情熱的に告白してくれたのに、アレはウソだったのかあ?」
敏雄はわざとらしく体をくねらせて、青葉の体に回した腕に力を入れると、より強く抱きついた。

「ん…わかりました、一緒に寝ましょう」
青葉は困ったような、それでいて嬉しそうな顔をして、敏雄の提案を受け入れた。
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