ハートの瞳が止まらない

若目

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止まらないアイデア

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いわゆる「玄人」の背中である。
思えば、五井はその辺にいるような若者の裸の背中を見るのは初めてだった。

真広の背中は若者らしく弾力に富んでいて艶があり、柔らかくすべすべしているけれど、ところどころにニキビやかさぶたの跡がある。
汗っかきな体質のようだから、ニキビや汗疹ができやすいのだろう。
加えて、風俗嬢やAV女優と違って、男の子特有の骨っぽさや硬さもある。

──シミひとつなくキレイ…とか書くよりも、ニキビとかホクロとかあるって書く方がリアリティある気がするな。そっちのほうが読者の食いつきもいいかもしれない

五井は思いついたアイデアを頭の中で練りながら、真広の体の前面を洗おうとした。
そこで真広が「自分で洗うから」と言い出してボディタオルを手に取ったので、好きにさせることにした。

真広が体を洗っている様子を見ると、結構に豪快に大雑把に体を洗うものだから、少し驚いてしまった。
日頃の態度の大人しさを考えると、もっと丹念にゆっくりとした動作で体を洗うのだろうと思っていた。
真広が体を洗い終わったのを確認すると、五井は真広に湯船に浸かるよう促し、今度は自分の体を洗い始めた。

──ああ、そうだ。このくだりも入れてみるか。主人公の男が女の子の背中洗ってあげるシーンを入れて、ニキビの跡とかあるのを見つけるくだりを入れよう。スレてない女の子設定なら、これが一番しっくりくるだろう。女の子が自分の体洗ってるシーンも入れよう。意外と豪快に体洗ってて主人公が驚く…とかもアリだな…

自分の体を洗いながら、五井は執筆中の作品の続きを考えていた。
こないだまでのスランプがウソのように、最近はポンポンとアイデアが浮かんで止まらない。

──ああ、いけない

ついつい考え事に耽って、真広のことを忘れてしまっていた。
「ちょっと端に寄ってくれ」
五井は体についた泡を流すと、湯船に浸かろうと右足を上げて、バスタブの縁にかかとを置いた。

真広が「すみません」と言ってあわててバスタブの片側に寄ったのを確認すると、五井は勢いよくバスタブに体を浸けた。
五井の肩まで浸かったと同時に、バスタブ内のお湯がザバーッと音を立てて溢れて、浴室の床へ流れていく。
体が温まると、思わずフーッとため息が出てしまう。

息を吐き切ったと同時に、真広の視線を感じた五井は、ちょっとした意地悪も兼ねて真広の顔をジッと見つめ返した。
真広の反応を伺ってはみるが、特に何も返ってこなかった。
「なあ、キミがよかったらここでするかい?」
五井はついついイタズラ心が働いて、そんなことを言ってみた。

「え…?」
概ね五井の想像通り、真広は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。
「いや、やっぱりやめておこう。ここのタイルは滑りやすいんだ。実を言うと、こないだ滑って転んでね。なんとか受け身取れたから大したケガはしなかったけど、膝にアザ作っちまってね。もしヤッてる最中にすっ転んでケガでもしたらマズい」
五井は笑ってしまいそうになるのを堪えつつ、自分の膝にできたアザを指差した。
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