ハートの瞳が止まらない

若目

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二度目の鉢合わせ

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「五井さん、お邪魔します」
「いらっしゃい」
いつものように真広が玄関ドアを開けると、いつものように五井が廊下に出て迎えてくれた。
しかし、今日はいつも着ている部屋着は着ていなかった。
黒のテーラードジャケットにダークグレーのタートルネック、下は黒のスラックスを履いていた。
今日は仕事だと言っていたし、さっきまで誰かと会っていたのかもしれない。

「あー…先に言っとくね。今日も調子悪いんだ」
「…そうですか」
五井に抱かれることを期待して来ただけに残念だなと思いつつ、真広は玄関の土間に立ったまま、平静を装った。
あからさまにがっかりした様子を見せたら五井に失礼だし、品がない気がした。

「だからね、今日は一緒にどこかに出かけよう。映画とかはどうかな?」
「え?あ…い、行きたいです。ぜひ…」
思ってもない誘いに、真広は驚いた。
今日もいつものようにシャワーを浴びて、いつものように寝室で事に及んだら帰るものと思っていたから。

「そうか、じゃあ今から行こう。いいかな?この後予定とかはある?」
「大丈夫です」
この後の予定は特に無い。
帰りは遅くなるかもしれないが、夜間に帰ってきたところで両親は特に何も言ってこないし、大した問題ではない。

「良かった。それなら一緒に出よう。車を出すよ」
五井は真広の隣をすり抜けるように通り抜けて、土間に置かれていた靴に足を突っ込んだ。
「…ありがとうございます」
「お先にどうぞ」
五井が玄関ドアを開けて、真広に先に通るように促してくる。
「あ、はい。すみません」
真広がドアをくぐり抜けると、それに続いて五井も外に出る。

外に出ると、五井はスラックスのポケットから鍵を取り出して、手際よく玄関ドアを施錠した。
五井は結構に用心深いようで、施錠した後はドアノブをガチャガチャと上下させながら、ドアを前後に動かして、きちんと閉まっているか確認した。

「じゃ、行こうか」
「はい」
歩き出した五井についていき、二人でエレベーターに乗り込む。
「閉」のボタンを押してからまもなく、エレベーターが3階で停止した。
エレベーターのドアが開いて、3階の住人が入ってくる。

「あっ…」
真広は思わず声を漏らした。
エレベーター内に入ってきたのは、以前に遭遇した大学の事務員の女性だった。
彼女とは以前にもここで出くわしたが、今回は五井が隣にいる。
真広は体中の毛穴という毛穴から汗が噴き出て、体温が一気に上がるのを感じた。

五井の家に向かう途中で出くわすだけでも気まずいのに、一緒にいるところを見られたとなると、どう思われるかわからない。
彼女と大した交流は無けれど、大学で何度か顔を見られているし、これから顔を合わせる機会はいくつもあるだろう。
そうしているうちに顔を覚えられるかもしれないし、五井の家に出入りしているうちに、真広と五井との関係に勘づくかもしれない。

勤務先の大学の生徒だと向こうに気が付かれたりしないだろうか、もし気づかれたら変な噂を立てられたりしないだろうかと、あれこれ不安になった瞬間、彼女が真広の顔をチラッと見た。











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