【完結】人妻オメガの密かな願望

若目

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投資家の間中

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「その人というのがねえ、花比良さんっていうんですけど、お子さんにピッタリの結婚相手を探しているというよりは、家の再興がしたいみたいなんですよ」
燕の巣を飲み込んで、間中はううんと軽く咳払いした。

「再興、というのは?」
「花比良さんは地方名家のご主人でして、ちょっと前まではいくつかの飲食店の経営やってたんです。
あと、土地を持ってたんですよ。で、その土地転がしでもそれなり儲けていたみたいなんですが…」
スープが入ったボウルを置いて、間中が言い淀んだ。
「あー…商売が立ち行かなくなったんですか?」
「そうです」
総治郎は当てずっぽうで言ったのだけど、これが当たりらしかった。

「経営してる飲食店ってねえ。一見さんお断りの高級料亭なんですよ」
間中が今度は水餃子を箸でつまんだ。
「そりゃ、継続は難しいでしょうね」
「でしょう?こんなご時世ですから」
間中は水餃子を一口かじると、湯呑みに入ったお茶を飲んだ。

ここ最近の平均収入だとか、1人あたりの賃金は下がりつつある。
10年ほど前に、この国全体を襲った不景気のせいかもしれない。
その不景気の煽りは総治郎も受けたし、そこからの巻き返しにかなり苦労した記憶がある。

現在、国全体の経済状況は持ち直したものの、やはり国民ひとりあたりの生活水準は下がっている。
そんな折では、料亭なんて行く機会も自然と減る。
地方ならなおさらだ。

「花比良さんもねえ、一見さんお断りって縛りはやめて、団体の観光客なんかもOKにしてみたんです。
でもまあ、大半の人は料亭なんて馴染みがないから集客は見込めないし、古参のお客さんの高齢化も進んでなかなか来なくなっちゃって…それで、10軒くらいある店のうち3軒は畳んじゃったんです」
「高級料亭が3軒も店を畳むとなると、なかなかの痛手なんじゃないでしょうか?」

総治郎は飲食店の運営に関しては専門外であるけれど、商売の知識はある。
それをもってすれば、間中の知人のその後は、だいたい予想できる。

「そうなんですよ。大衆向けのチェーン店ならね、3軒くらいは大した痛手にはなりません。料亭なんかと比べたら、1店舗あたりの売り上げがそんなにないですし。
大衆、とりわけ若い人は新しい物が好きだから、また新しい店舗をどっかに作ったり、ある程度のリニューアルを図ればまた集客は見込めます。
でも、花比良さんの店はそうもいかなくて…」
「ネット販売ですとか、仕出し弁当の卸売りとかは?」
答えはわかっていたが、総治郎はあえて聞いてみた。

「ネット販売はねえ、すでに別の料亭や割烹店が市場を独占してますから、老舗の出る幕はほぼないに等しいわけです。
あと、都心の百貨店に仕出し弁当を卸してはいたんですけどね、それも売れ行きが落ちました。
やっぱり収入が減るとねえ、正月に食べるおせちや法事で出す弁当のランクも落としちゃうわけです。
今どきの消費者はお金がないから、「今回は奮発しよう!」なーんて言ってられないワケで…」
「難儀なもんですね…」

総治郎は顔も知らない地方名家の主人に同情した。
飲食店の運営は専門外でも、商売の大変さは嫌というほど知っているからだ。

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