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困った状況
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「……あ、はじめまして、成上総治郎です」
直生の容姿の、あまりのあどけなさに驚いて唖然としていた総治郎は、ハッと我に帰って挨拶を返した。
「では、あとは2人きりで過ごしてくださいな。間中さんはこちらへいらしてくださいませ。お茶とお菓子をご用意していますから、ごゆっくりなさってください」
花比良夫人がそう言って、花比良氏と間中も合わせて3人、その場から立ち去っていった。
通常、こういうときは「あとは若いおふたりで」と言うのだろうけど、あいにく総治郎は決して若くはない。
それを花比良夫人もわかっているのだろう。
だから「2人きりで」という言葉を選んだのだ。
──まいったな…
直生と2人きりにされた総治郎は困り果てた。
思えば、20代の若者と話したのはいつが最後だったかさえも覚えていない。
40代で重役となってからも、若手の教育には何度も携わった。
しかし、それはあくまで仕事の上でのことだし、ある程度の教育を済ませてしまえば、後は現場の人間に任せてきた。
「ねえ、立ちっぱなしも難ですから、あちらで座ってお話しませんか?」
何を話せば良いのかと考えあぐねているうち、向こうから話しかけてきた。
改めてよく聞くと、思った以上に高い声をしていて、これまた驚かされる。
「ええ、そうですね…」
言われた通り、直生の指差した方向にあるベンチまで、2人で歩いていく。
思わずかしこまって敬語で返してしまったが、冷静になって考えてみると敬語で話すべきなのか、そうでないのかさえもわからない。
「あー…」
見事なデザインのアイアンフレームベンチに2人並んで座ってはみるものの、やっぱり何を話したら良いのかわからない。
たとえば総治郎が20代30代であったらなら、もしくは向こうが同じ40代後半から50代前半くらいであったなら会話の切り口も見えただろう。
若者と接する際、ハラスメントにならないような気配りや言葉遣いは学んできたが、お見合い相手となれば、話は別になってくる。
──下手な口を聞くと反感を買いそうだし、あまり他人行儀な話し方も印象が悪くなりそうだし、どうしたものかな…
「ねえ、総治郎さん」
あれこれ考え込んでいるうち、向こうから話しかけてきた。
「えっと、何ですか、直生さん」
あるこれ悩んだ総治郎は、結局は敬語で接することにした。
曲がりなりにも目上の人の御子息様相手なのだし、あまりフランクに話せる間柄でもないから、これが妥当だろうと考えたのだ。
「結婚式の日取りですとか、場所ですとか、いつになさいます?」
「え?いや、それはまだ決めていません」
総治郎はキョトンとした。
普通、こういうときは「ご趣味は?」などと聞いてくるものだと思っていたので、あまりにも気の早い質問に戸惑った。
「子どもは望んでいますか?だとしたら、何人欲しいだとか、希望はございますか?」
「い、いや…そこもまだ、考えてはいません」
この後も直生は、総治郎の両親はいくつか、将来的に自分が面倒を見るのか、住まいはどこにするのか、もし子どもが産まれたらどのように育てるかなど、会ったばかりにしてはやたらと気の早い質問を延々と投げかけてきた。
そのたびに総治郎は、当たり障りのない同じような答えを返すほかなく、お見合いは何の進展もなく終わった。
直生の容姿の、あまりのあどけなさに驚いて唖然としていた総治郎は、ハッと我に帰って挨拶を返した。
「では、あとは2人きりで過ごしてくださいな。間中さんはこちらへいらしてくださいませ。お茶とお菓子をご用意していますから、ごゆっくりなさってください」
花比良夫人がそう言って、花比良氏と間中も合わせて3人、その場から立ち去っていった。
通常、こういうときは「あとは若いおふたりで」と言うのだろうけど、あいにく総治郎は決して若くはない。
それを花比良夫人もわかっているのだろう。
だから「2人きりで」という言葉を選んだのだ。
──まいったな…
直生と2人きりにされた総治郎は困り果てた。
思えば、20代の若者と話したのはいつが最後だったかさえも覚えていない。
40代で重役となってからも、若手の教育には何度も携わった。
しかし、それはあくまで仕事の上でのことだし、ある程度の教育を済ませてしまえば、後は現場の人間に任せてきた。
「ねえ、立ちっぱなしも難ですから、あちらで座ってお話しませんか?」
何を話せば良いのかと考えあぐねているうち、向こうから話しかけてきた。
改めてよく聞くと、思った以上に高い声をしていて、これまた驚かされる。
「ええ、そうですね…」
言われた通り、直生の指差した方向にあるベンチまで、2人で歩いていく。
思わずかしこまって敬語で返してしまったが、冷静になって考えてみると敬語で話すべきなのか、そうでないのかさえもわからない。
「あー…」
見事なデザインのアイアンフレームベンチに2人並んで座ってはみるものの、やっぱり何を話したら良いのかわからない。
たとえば総治郎が20代30代であったらなら、もしくは向こうが同じ40代後半から50代前半くらいであったなら会話の切り口も見えただろう。
若者と接する際、ハラスメントにならないような気配りや言葉遣いは学んできたが、お見合い相手となれば、話は別になってくる。
──下手な口を聞くと反感を買いそうだし、あまり他人行儀な話し方も印象が悪くなりそうだし、どうしたものかな…
「ねえ、総治郎さん」
あれこれ考え込んでいるうち、向こうから話しかけてきた。
「えっと、何ですか、直生さん」
あるこれ悩んだ総治郎は、結局は敬語で接することにした。
曲がりなりにも目上の人の御子息様相手なのだし、あまりフランクに話せる間柄でもないから、これが妥当だろうと考えたのだ。
「結婚式の日取りですとか、場所ですとか、いつになさいます?」
「え?いや、それはまだ決めていません」
総治郎はキョトンとした。
普通、こういうときは「ご趣味は?」などと聞いてくるものだと思っていたので、あまりにも気の早い質問に戸惑った。
「子どもは望んでいますか?だとしたら、何人欲しいだとか、希望はございますか?」
「い、いや…そこもまだ、考えてはいません」
この後も直生は、総治郎の両親はいくつか、将来的に自分が面倒を見るのか、住まいはどこにするのか、もし子どもが産まれたらどのように育てるかなど、会ったばかりにしてはやたらと気の早い質問を延々と投げかけてきた。
そのたびに総治郎は、当たり障りのない同じような答えを返すほかなく、お見合いは何の進展もなく終わった。
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