【完結】人妻オメガの密かな願望

若目

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子どもの頃のこと

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「ここなら、子どもも一緒に入れそうですよね」
「まあ、子どもが小さいうちならな」
言うと総治郎は顔についた水滴を拭った。
最近、顔を洗っても洗ってもベタつきが止まらない。
暑い日なんか、おしぼりで顔を拭くこともしょっちゅうだ。


「子どもって何歳くらいまで親御さんと寝たりお風呂に入ってたりするんでしょう?」
「きみは何歳くらいまで親と一緒だったんだ?」
向かいあって湯船に浸かりながら、2人は話し合った。

「中学3年生くらいまで入ってましたよ」
「結構大きくなってからも入ってたんだな」
「総治郎さんは?」
「えーと、たしか俺は、10歳を越える前にはすでにひとりで入ってたな。早いめの反抗期が来たから」

総治郎は子どもの頃のことを思い返してみた。
もう40年近く前のことだが、案外鮮明に思い出せる自分に驚く。
やはり歳を取ると昔のことばかり思い出す、というのは本当らしい。

「10歳くらいの男の子って、髪の毛ぐちゃぐちゃのまま外に出る子がいるでしょう?アレって、反抗期でお母さんに髪を梳かされるのを嫌がるから、あんなふうになるんですって。中野さんから聞きました」
「ああ、そういえば中野さんには息子がいたな」
おそらく中野は、自身の経験則からそれを述べているのだろう。

実際問題、総治郎も子どもの頃には経験したことだ。
いかにも子どもらしい反抗心から、「自分でやるから」と言ってブラシを持つのだけど、後頭部までは手が行き渡らないから、寝ぐせがついたまま学校に通ったものだった。

それは同級生も同じだった。
小学4年生くらいにもなると、みんなして髪がぐしゃぐしゃのまま登校していた。

今となっては、髪の量がだいぶ減ってしまって、寝癖なんてほとんどつきようもないのだけど。

──懐かしいな

同時に総治郎は、あることを思い出した。





小学校中学年のときの参観日の、授業が始まる少し前。
今の総治郎より少し歳上くらいの男性が教室に入ってきた。
おそらく、保護者の誰かだろう。

そのときに総治郎はうっかり「ねえ、おじさんは誰のおじいちゃん?」などと聞いてしまったのだ。
まだ子どもだったとはいえ、かなり失礼な問いかけである。

何を隠そう、その人は「おじいちゃん」ではなかった。
彼はクラスメイトの女の子の父親だったのだ。
総治郎はその子とはよく話していたものの、親の顔はまったく知らなかった。
彼女が親が歳を取ってからの子どもだというのも、ここで初めて知った。


クラスメイトの父親は、困ったような顔をすると、クラスメイトの名前を言った。
同時に、自分は祖父ではなく父親だとも言った。

当時の総治郎にとっては、これは取るに足らないやりとりだったが、クラスメイトにはかなりショックなことらしかった。



そのあと、廊下でクラスメイトが父親に「もう帰って」「2度と来ないで」と詰め寄っているのを見かけた。

彼女は、自分の父親がほかの子の父親よりもはるかに歳上であることを気にしていたらしい。

このときの総治郎の言葉で、それにますます拍車がかかり、結果、彼女の父親は悲しそうな顔をして、とぼとぼと覇気のない足取りで帰っていった。
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