【完結】人妻オメガの密かな願望

若目

文字の大きさ
77 / 82

じゃれ合う2人

しおりを挟む
その後、卒業までに何度も参観日はあったが、彼女の両親がやってくることはなかった。
運動会や卒業式には来ていたけれど、娘に気を遣ってか、目立たないところに立っていた記憶がある。
ほかの保護者の群れから一歩引いて、遠巻きに娘を見やる彼女の両親は、どこか辛そうな顔をしていた。

──申し訳ないことをしてしまったな…

総治郎は、やりきれない罪悪感に襲われたのと一緒に、自分が将来そうなるかもしれないというかすかな不安にも駆られた。


「きっと、俺が参観日に来たら、きっと「成上さんのところのお父さん」じゃなくて、「成上さんのところのおじいちゃん」なんて言われるだろうな」
総治郎は自嘲した。
自分もいつか、あのクラスメイトの父親みたくなるのだろう。

そのときに自分は、子どもとどう向き合うべきか。
このあたりも、これからの課題になる。

「いまどきは40歳50歳過ぎてからの子どもとか当たり前なんじゃないですか?晩婚化が進んでるって聞くし」
直生が体勢をかえた。
今度は総治郎の胸に背をつけるようにして、体を寄せてきた。
自然と、直生の後頭部やうなじが見えるようになる。
熱気を帯びてピンクに染まったうなじには、総治郎がつけた咬み傷があった。

「うーん、どうだろう?」
総治郎がほんの少しだけ首を真下に傾けると、直生の濡れた髪が、総治郎のあごにかすかに触れた。

「別に、おじいちゃんみたく見られてもいいじゃないですか。将来的にはみんな「おじいちゃん」「おばあちゃん」って呼ばれるんだし」
直生が総治郎の腕に触れた。
なるほど、直生の言うことは一理ある。

そういえば、クラスメイトの女の子とは中学校も同じだったのだけど、そのときには父親とも普通に歩いていた。
彼女も成長して、気にならなくなったのだろうか。
それを踏まえると、だいたいの悩みごとはこうして時間が解決してくれるのかもしれない。
少なくともいまは、そう思うことにしよう。


「それもそうだな」
「そうですよ」
「そろそろあがろう。湯あたりするぞ」
「はあい」
2人が同時に立ち上がると、ざばんという激しい水音が、バスルームいっぱいに響いた。

少し前までは、こんな大きな音を耳に入れることもなかった。
このまま、ひとり静かに生きていくものと思っていたのに、いまとなってはかなりにぎやかだ。

──これからはもっとにぎやかになるんだろうな


「総治郎さん、背中をお拭きします。」
脱衣所に行くと、直生がバスタオルを出してくれた。
「ああ、わかった」
総治郎はクスッと笑いつつ、背中を向けた。
「それぐらい自分でできるよ」と断ろうかと思ったが、そんなことはたぶん直生もわかっているのだろう。
要は直生は、総治郎とスキンシップを取りたくてこんなことを言ってきたのだ。

丁寧に洗われたバスタオルの感触が、背中に伝わる。
直生はこういうことを誰かにやってもらっていたことがあるのだろうか、ものすごく手慣れている感じがある。

「終わりましたよ」
「ありがとう。ほら、次はきみの番だ」
総治郎はそばのラックから新しいバスタオルを取り出して、直生の体を拭いてやった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

黒の執愛~黒い弁護士に気を付けろ~

ひなた翠
BL
小野寺真弥31歳。 転職して三か月。恋人と同じ職場で中途採用の新人枠で働くことに……。 朝から晩まで必死に働く自分と、真逆に事務所のトップ2として悠々自適に仕事をこなす恋人の小林豊28歳。 生活のリズムも合わず……年下ワンコ攻め小林に毎晩のように求められてーー。 どうしたらいいのかと迷走する真弥をよそに、熱すぎる想いをぶつけてくる小林を拒めなくて……。 忙しい大人の甘いオフィスラブ。 フジョッシーさんの、オフィスラブのコンテスト参加作品です。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

処理中です...